第2113話 アズパール王と第1皇子一家との打ち合わせ。1(色々と決めて来たよ。)
第1皇子一家邸の客間。
第1皇子一家とアズパール王が居た。
「はぁ・・・クリフ、すまないが王都に向けて、ここに無事に着いたと連絡を出してくれ。
それとジーナにこの手紙を渡すようにとな。」
アズパール王が席に着くなり、小さい封筒をクリフの前に置く。
「・・・王都はわかりますが、ジーナにですか?」
「あぁ。
・・・まぁ、大したことではない。
アン経由でジーナから手紙が来たので返信をするだけだ。」
アズパール王が苦笑する。
「アンは私達に言わないでそんな事を・・・
まぁ、ジーナならたぶんタケオさん関係でしょうね。
アンが秘密にするのはそのぐらいでしょうし。」
セリーナが言ってくる。
「うむ、まぁ・・・タケオも頑張っているようだ。
タケオから報告をしたいからと日程の伺いだよ。
いつでも良いと回答しておこうとな。」
「そうですか。
ま、魔王国方面はタケオさんの報告待ちなんでしょうけど。
お義父さま、カトランダ帝国は如何でしたか?」
セリーナが聞いてくる。
「どうか・・・盛大な挙式だったぞ。
ニールも感心してた。」
「そうですか。
そのニールとは現地で落ち合ったんですよね?
帰りはこっちにもよらないというのは?」
「現地集合、現地解散だ。
それにスミスの件でリネット達が大変だろうからとさっさと帰って行った。
まぁ、安全面を考慮して分散して行ったのだが、どちらも帝都護衛軍が付いてくれたようでな。
問題なく帝都には着いたし出て来れた、その後の総長との謁見や挙式も基本、近くには帝都護衛軍の兵が居てくれたな。」
「そうでしたか。
カトランダ帝国の街並みはどうでしたか?」
ローナが聞いてくる。
「ふむ・・・我が国とそう代り映えはしないな。
町々の商店にも立ち寄らせてくれて、見て来たんだが。
文官が居れば何かわかったのだろうが、我では大きな違いはわからなかったな。
強いて言えば、ジャガイモの料理が多かったが・・・特に帝都の挙式で出されたのは手を変え品を変え、飽きさせぬように味付けも工夫されていた。
タケオが見たのなら喜んでいたかもしれないな。」
「それは・・・タケオさんが聞いたら行きたがったでしょうね。」
「まぁ、我が言葉で伝えようと思う。
上手く伝われば良いがな。」
アズパール王が言う。
「カトランダ帝国との打ち合わせはどうでしたか?」
クリフが聞いてくる。
「例の戦争でのカトランダ帝国側の大まかな変更はない。
我らと関間で対峙したのちにウィリプ連合国に侵攻する・・・この流れの変更はないとの事だ。
あとカトランダ帝国の関から一番近い町にある所での定期的協議実施には合意してくれた。
我が方の軍務局と外交局に当たらせる事になるだろうな。」
「「「「「・・・」」」」」
第1皇子一家が黙って聞いている。
「・・・クリフ。」
「はい。」
「今後の情勢によって変わるかもしれないが、現状において帝国としてはこの戦で我が国と休戦協定と不戦協定を締結したいという意向が示された。」
「父上は何と?」
「『実現すれば我が方としてもありがたい事ではあるが、ただすれば良いという問題でもない。
今後、話し合いを続けながら協定内容の精査をしてお互いに妥協し合えれば可能』と言っておいた。
長年敵対をしてきた間柄だ、我が方にも引けない事があるだろうし、向こうにも引けない事があるはずだ。
このままでは変化が無い、お互いに妥協点を見出す必要がある事を念頭に入れて協議をしなくてはいけないな。
まぁ、外交局の腕を見るとしよう。」
「そうですね。」
クリフが頷く。
「そして・・・調印はクリフお前がする事になるだろう。」
「私がですか?」
「正確にはカトランダ帝国の皇帝の座は今回の跡取りであるチコ・クレト・カトランダに引き継がれる。
その新皇帝の初仕事が。」
「我が国との不戦協定ですか。」
「あぁ、新時代の幕開けとし新たな敵であるウィリプ連合国に全力を注ぐとする・・・んだと。
こちらとしては歴史的な不戦協定を我と新皇帝とでされると些かこっちの印象がなぁ・・・
それに同時期になった者同士の方が新時代の幕開けの印象は強くなるだろう?
という事で、クリフの即位が早まりそうだと覚悟してくれ。」
「はぁ・・・まぁ、遅かれ早かれしなくてはいけない事ではありますが。
父上はどうしますか?」
「ニールの所で戦争の指揮に加わる事にする。
今回のウィリプ連合国との戦争においてクリフが前面に出る事は些か危険すぎる。
カトランダ帝国との協定サイン後は王都から指示を出すように。」
「それは私が軍の指揮をするのが不安・・・という訳ではありませんね?」
「あぁ、この戦はニールの指揮の下に終わらせなくてはいけない。
実際は国内で色々としなくてはいけないが、体面としては、『その程度の事』と国として見せないといけないと考えている。
ここは強く意思を持って平常心で行かないと・・・弱みを見せればまたやられる可能性があるからな。
いくら事前に協議はするとは言っても協定締結と発効、国民への周知、カトランダ帝国との交易。
まとめなければいけない事が多いし、その全てにクリフのサインが必要だ。
それにウィリプ連合国との戦争後の占領地へ運び込む物資の調達と調整、戦闘で捕虜にするであろう兵士達への処遇の準備とウィリプ連合国に捕虜にされるであろう我が方の兵士帰還に向けた交渉準備・・・検討と裁可をする事が山のようにある。
クリフは戦争なんてしている余裕はない。」
アズパール王が言う。
「はぁ・・・王都に行ったら下準備を始めないといけませんね。」
クリフがため息を付く。
「あぁ、文官の操り人形にされても困るが、強権過ぎて暴君となられるのも困る。
上手く、各文官と武官を使えるように努力してくれ。
満遍なく意見を聞き、1つの部局に利益や害が集中しないように差配をしなくてはな。
毎日、学ぶ事が大切だ。」
「わかりました。
覚悟して王都に乗り込む事にします。」
クリフが諦めながら頷くのだった。
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