第2109話 237日目 魔王国側の関でマッタリ。(お使いご苦労様。)
魔王国側の関から少し離れた野営場所に居る武雄一行。
夕食を取って寝る前のティータイム。
「・・・何にも起きないですね、これいかに。」
武雄が焚き火を見ながら言う。
「何もない事が当たり前だと思うのは慢心なのは確かですけどね。
そう毎回毎回戦闘があったら大変ですよ。」
アンダーセンが言う。
「一応、周囲警戒はしていますし、ミア殿やビエラ殿が居るので近づいてくる者が居たら事前にわかるようにはしています。
ですが・・・まぁ、ドラゴンが居るので魔物は近づいてこないのが普通なんでしょうけど。
それでも1回は遭遇しても良いと思うんですよね。」
ブルックが言う。
「なぁ、ブルック、ビエラ殿が居て魔物と遭遇した事があるか?」
ベイノンが聞いてくる。
「・・・ないかな。」
ブルックが「意図的に呼び寄せる事はあっても不意の遭遇はないよね」と思い、頷きながら言う。
「狙うなら、両国が手出ししない関と関の間でしょうかね。」
「「「・・・」」」
武雄の呟きに皆が黙る。
「あ~?」
「そうですよ、私とビエラが居ますから近づいて来たらわかりますよ。」
ビエラとミアが言ってくる。
「そこは頼りにしていますよ。」
武雄が頷く。
「明日の関越え中はいつでも動けるようにした方が良さそうですね。」
アンダーセンが言う。
「ええ、お願いします。
・・・ちょっと用を足しに行って来ます。」
武雄が立ってリュックを持って皆から離れて森の縁に行くのだった。
・・
・
森の縁にて。
「・・・ここに住んでいるのですか?」
武雄がしゃがんでそこに居るスライムに問いかける。
すると緑スライムが左回りをする。
「受け答えしている時点で夕霧のですね。
でも・・・魔王国に行っても良いですけど、森を出て町や村に入っては危ないですからね。
出来れば森から出ないで見つからないように慎重に動きなさいね。」
武雄が言うと緑スライムが右回りをする。
「こっちに来たのは私への様子の確認ですか?」
武雄が言うと緑スライムが右回りをする。
「そうですか。
予定では明日、関を越えてアズパール王国に入って、2日後に東町に着きます。
その後、2日で屋敷に戻りますからそのように伝えてください。」
緑スライムが右回りをする。
「ちなみにここの関とアズパール王国側の関の間に魔物は居ましたか?」
緑スライムが右回りをする。
「・・・オーガ?」
緑スライムが左回りをする。
「んー・・・狼?」
緑スライムが左回りをする。
「ゴブリン?」
緑スライムが左回りをする。
「えー・・・何?・・・オーク?」
緑スライムが右回りをする。
「お、正解ですね。
10体以上ですか?」
緑スライムがゆっくりと右回りをする。
「え?・・・んー・・・10体なのかな?」
緑スライムが右回りをする。
「そうですか。
情報ありがとうございます、知らせに来てくれたのですね。
なら、お小遣いでちょっとお肉をあげますね。」
緑スライムがクルクルと右回りをする。
武雄がそれを見てリュックからいつか討伐した時のオーガの肉を取り出してスライムの前に置くとスライムが乗っかり吸収し始める。
「気を付けて帰りなさい。」
武雄がそう言うと緑スライムがクルクルと右回りをする。
と武雄が立ち上がり皆の下に戻って行くのだった。
・・
・
王都組と試験小隊の主だった面々が就寝した後は火の番をする武雄とブルック、アーキンのみが起きていた。
「・・・何もないね。」
武雄が再び焚き火を見ながら呟く。
「そう・・・ですが、さっきもお戻りが遅かったですが、何かありましたか?」
ブルックが聞いてくる。
「スライムが居ましたからお肉をあげていました。」
「・・・何かありましたか?」
武雄の回答にアーキンが真面目な顔をさせて聞いてくる。
「この先にオーク10体。」
「「・・・」」
ブルックとアーキンが黙って考える。
「まだ襲ってくるとは限りませんが、要注意を。
出来る限り非戦闘で関を越えたいのでね。」
「「はい。」」
2人が頷く。
「それにしてもここまでスライムが来ていたんですね。」
「関間の魔物の情報を持って来てくれたようですよ。
ついでに私達の帰宅の行程を教えておきました。」
「なら、このまま戻っても連絡がついていそうですね。
マイヤー殿は何しているんでしょうか。」
ブルックが言ってくる。
「マイヤーさんかぁ・・・そう言えば当初の予定では慣例の戦争の戦術起案をエルヴィス伯爵に提出するのが5月末の予定だったのですよね。
皆さんが戻るまでに素案を作ってくれているでしょうかね。」
「所長・・・今日は6月22日なのですけど・・・」
アーキンが恐る恐る言ってくる。
「そこはしょうがありません、私もマイヤーさんも諦めています。
それと戦場となるゴドウィン伯爵領の関はマイヤーさんは見ています。
所属による初期配置も聞いていると報告はされていますよ。
ですが・・・さて・・・どうしようか。」
武雄がそこで考え始める。
「・・・所長の知識が怖いです。
その辺の話を今回の会談で話してきたのですよね?」
「ええ、概要は聞いていますよ。
ですが、口外禁止なので今はまだ何も言えないんですよ。
陛下には伝えに行かないといけないと思いますけど、時間あるかなぁ・・・
まぁ、時期が来たら皆さんにはお知らせします。
戦術よりも拠点構築の案を出して貰うか・・・」
「「・・・」」
武雄の呟きにブルックとアーキンが「あ、これ大元から何か変わったんだ」と思うのだった。
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