第2108話 あれ?違和感があるよ。(お仕事は順調です。)
街道沿いのちょっと開けた場所。
武雄達は小休止をしていた。
「・・・ふむ・・・」
アンダーセンが馬を降りて周囲を見回している。
「・・・あー?ミア!」
ビエラがアンダーセンの横で首を傾げている。
「はいはい、なんですか?」
ミアがビエラの下にやってくる。
「あー。」
「へぇ・・・アンダーセン様、ビエラがここで戦闘があったのかもと。
血の匂いがすると言ってますよ。」
ミアがアンダーセンに言う。
「ええ・・・私達には血の匂いはわかりませんが、何となく違和感があるのはわかります。
見事に何もなかったかの風を装っていますが・・・何かありましたね。」
アンダーセンがキョロキョロしながら言う。
「あ。」
ビエラが頷く。
「こりゃ、戦闘があったな。」
「そうですね。
それもついさっきみたいですね。」
ベイノンとアーリスもそう言いながらアンダーセンの下にやってくる。
「こりゃあ、大規模な戦闘じゃないのか?
100名かそれ以上は居たようだな。」
ラックも周りを見ながら言う。
ちなみにブルックやアーキン、バートとフォレットは各馬に水を与えている。
「所長に報告するかな。」
アンダーセンがそう呟くが。
「・・・聞こえてますよ。
こっちが待ち構えていたらダニエラさんが手配した護衛さん達に片付けられてしまいましたね。
私としては至って普通な感じの広場なんですけど、皆さんにはわかるのですね。」
武雄が皆の下にやってくる。
「まぁ、違和感がありますね。」
アンダーセンが言う。
「見た目と土の柔らかさが違います。」
「何もないただの空き地ならもっと雑草がありますよ。」
「上手く偽装してるが消しきれていない足跡がありますよ。
上手いのに消せないのは行動している人員が多く時間が少なかったからでしょう。」
元情報分隊のベイノンとアーリスやラックが言う。
「手際が良いんでしょうか?」
武雄が首を傾げる。
「その一言で終わらせるには勿体ないぐらい早く倒し、さっさと証拠隠滅し、近くまで来ていたであろう我々に気付かれずに撤収する。
完璧な仕事ですよ。」
ラックが呆れながら言う。
「そうなんですか。
完璧な仕事が出来るぐらいの部隊が展開したんですね・・・どれだけ監視していたんでしょうかね?」
武雄が軽く首を傾げて言う。
「魔王国としてそれだけキタミザト殿が重要だと思っているという事でしょう。」
ラックが言う。
「・・・はぁ・・・まぁ、良い印象を残せた事を誇りましょうかね。
好待遇な気がしますけどね。」
「どれだけ会談で重要な事を話したんですか・・・」
「・・・ラックさん・・・陛下への報告はしないとダメですよね?」
「はい、わかってて言っていますよね?
キタミザト殿の事です、陛下にのみ伝えないといけないような事を魔王国でも聞いてきたんでしょう?」
「ええ、聞きたいですか?」
武雄がラックに聞き返す。
「絶対に聞きたくありません。
私は任務に忠実なんですよ、余計な情報は必要ありません。
その報告は陛下に直接でどうぞ。」
「・・・私の周りの人達聞きたがりが居ないんですよね・・・
皆気にならないのかなぁ?」
武雄が首を傾げる。
「所長の持っている情報が機密過ぎるんですよ。
他者にリークしてもあまり他者に利益がなく、むしろその情報を使って何かをしようものなら国家存続の危機になりかねない情報なもんだから皆が聞きたがらないんですよ。
王都の事ですから所長に同行する者はそういった聞きたがりなんて配置する訳がないじゃないですか。
ちなみにエルヴィス伯爵は聞きたがりますか?」
「・・・報告はすれば聞いてくれますよ。
最終的には陛下に言いに行きなさいと言ってくれます。」
武雄が考えながら言う。
「それ、本当は概要だけ聞きたいんでしょうね。
まぁそんなわけで所長の情報は陛下に直接言ってくれればあとは陛下が考えて指示をしてくれますよ。
なので、誰彼構わず話してはいけないですからね?」
「そんな事はしませんよ。
ラックさんなら私の苦悩をわかってくれるかなぁと思っただけです。
ねぇねぇラックさん、聞きたいですか?」
「絶対に嫌です。
誘惑にすらならない事ですよ。
さて・・・ま、先行して魔王国の方々が厄介事を排除してくれたのに感謝しますか。
キタミザト殿、小休止したら関に向けて一気に移動しましょう。
今日の夕方までには着きたいですからね。」
「そうですね。
来た時に野営した場所に行きますか。
あ、今日の夕食何作ろうかな?」
「・・・一気に主夫になってますね。」
ラックが呆れるのだった。
------------------------
武雄達が居る広場からちょっと奥に行った森の中。
「大隊長殿、報告します。
第2中隊は戦闘を終了しました、現在は撤収を実行中です。
今回殲滅したリザードドラゴンについては王城に搬送中との事。
搬送後は王城にて待機実施を伝達しています。
第3中隊は第1中隊に合流し、監視の支援と部隊の休息を実施しています。
また、第4中隊は関までの索敵を開始しました。
第4中隊より部隊ならびに集団の発見の報はありません。
以上。」
「ご苦労。
第3中隊には多少遅れても良いからしっかりと部隊員の休息を取るようにと伝達してくれ。
第1中隊はこのままキタミザト殿ご一行の監視任務を続行。
周囲の索敵も忘れるな。」
「各中隊に伝達します。
失礼します。」
報告して来た兵士が去る。
「・・・統治能力が無いとされかねないから普通に考えれば領内で2回目の襲撃は無いんだが・・・さてはて・・・
次に狙うとしたら・・・関間か?
ん-・・・合流地点にいるワイバーンを持って来ている第5中隊に索敵をさせるべきか・・・」
大隊長が悩むのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




