第2105話 236日目 ゴドウィン伯爵家の決断。(出向に向けての打ち合わせ。)
ゴドウィン伯爵邸の客間。
「ふむ・・・」
ジェシーがアリスからの手紙を読んでから窓の外をボーっと見る。
「ジェシー、アリスは何と?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。
「はい、どうぞ。」
ジェシーは何も言わずに手紙をゴドウィン伯爵に渡す。
「どれどれ・・・お・・・あー・・・んー・・・」
最初嬉しそうな顔をさせたが、すぐに考え込んでしまう。
「まさか本当にエルダームーンスライムを貸し出してくれるとはね・・・
これは難しいわよね。」
「どう捉えるか・・・だな。
敵対貴族がというなら脅しになるんだが・・・アリスからだと今後の友好と使用の制限をしたいという事なんだろうな。」
「そうね、アリス的には私達に筒抜けになる情報があるという事とスライムの使用についての制限を設けたい事を容認する事が貸し出しの条件としたいという感じね・・・んー・・・アリスの立場ならそうするしかないのは確かだし、言ってきたという事はアリス達も私達の方にそれ以外に使用する気はないと言ってきているのだけど・・・
アナタ、スライムの貸し出し条件の文章で変な所あるわよね?」
「・・・ここか、『スライムの利用方法は関の補修、補強や領内の魔物の分布確認や監視に限る』だな。
他に利用方法があると言っているような物なんだが。」
「アリスは・・・違うわね、お爺さまとタケオさんは何かをしているという事よ。
それも敢えてこっちに作らせないようにさせるように仕向けるほどにね。」
「膨大な利益があるという事だな。
それもタケオだけでなく親父殿にも。」
「そうね。
そして、もし私達がそれをした場合、すぐに貸し出されるエルダームーンスライムから報告され、すぐに撤収がされるというわけよ。
まぁ、領内にスライムは残して情報は持って行くんだろうけどね。」
「ふむ・・・そうなると俺らよりもこの領内の情報を持つという事か。
親父とタケオなら悪用はしないだろうが、次の次の代辺りに問題になりそうだな。」
「それをいうならスライムを入れる時点で問題になっちゃうのかもしれないけど。
現状で私達に知られずに出来ちゃうのが怖い所よね。
こんなに恐ろしい事をするのなら普通は黙っていた方が良いんだし。
敢えて言ってきたというのは私達が親戚関係だからというだけね。」
「どちらにしてもエルヴィス家が優位になってしまうな。
ま、どうせ調べられるのなら同じ情報は俺達も持っていた方が良いと思うがな。」
「そうね・・・タケオさんなら私達に知られずにやっていても不思議はないし、お爺さまも施政者としてしっかりしているからその辺の情報の大切さは重々承知しているからする事に躊躇いはしないでしょうね。
逆の立場でアナタがこんな便利な物を親戚だからと言って使わないなんて言ったら怒るわよ。」
「まぁ、そうだな。
施政者として魔王国との国境の守備を預かる者として親戚だろうと同じ魔王国を相手にしている領内の関や魔物の情報は知っておかないといけないな。」
「・・・はぁ・・・主導権がお爺さまになってしまうのは些か嫁いだ嫁としては複雑なのだけど、今回は致し方ないわよね。」
「あと出来るのはこちらの情報を提供するのだからエルヴィス伯爵領の関の情報と魔物の分布情報の提示ぐらいだろう。
同じ情報を貰う条件を加味させて貰って微細な変化があった場合、相互に動ける体制を構築していくとするしかない。」
「それとスライムを使って条件以外の仕事をさせたい時は事前にタケオさんに相談と許可を得る事を約束する程度ね。」
「そうだな。
一体、親父殿とタケオは何を始めたんだろうな?」
「さてね・・・奇抜なんだろうね。
ま、現状ではゴドウィン家では新しい事をしなくても領内は安定しているからね。
無理に事業をする必要はないわ。
それに・・・」
ジェシーがそこまで言って考え始める。
「それに?」
「うん、たぶん、こっちから一々言わなくてもその内生産が追い付かなくて私達の所に支店を出したいと行って来そうな気がするのよね。
スライムを扱っているのはエルヴィス家とゴドウィン家のみなんだから、国内全域に販路を拡大するのなら多分手が足らなくなると思うのよ。」
「なるほどな、事業内容と各工房とかへの契約内容は今、タケオ達が実施しながら精査している最中だからな。
完成した物を貰うのだからその辺の進め方や工房の選び方まで教えて貰えるのなら楽だな。」
「うん、なら返信はさっきの通りの事を条件に加味をしてくれるのならとしておこうかな?」
「そうだな。
それと前に言われた領内の魔物の分布状況の確認と魔王国側の関の維持管理をすれば、スライムの生息地域の確保を領内にする事と残飯2樽の供与は確約しよう。
場所はどうするかな・・・」
「屋敷裏にする?
ちょっと狭いかもしれないけど私達の目があるから森林に入ってくる者達は普通なら居ないし、侵入してきたらすぐにわかって教えてくれるだろうし。」
「ふむ、防犯と保護を同時に出来るのか。
いや、親父殿達の意見も聞いた方が良いだろう。
それと来るエルダームーンスライムの意向も聞いて用地の選定をしよう。」
「うん、そうね。
ならその旨の手紙を返信しておくわ。」
ジェシーが頷くのだった。
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