第2100話 解放された。(さて・・・皆も戻って来たね。)
武雄はビエラを連れて王城を退去していた。
「ビエラ、ダニエラさん達に何を貰って来たんですか?」
「あー。」
ビエラが持っていた小さい袋からお菓子を出して「これー」と武雄に見せる。
「ん?・・・これって落雁ですかね?
粉を固めた感じがしますし。」
「あー?」
ビエラが首を傾げながら聞いてくる。
「ん~・・・ビエラ、1個貰えます?」
「あー。」
ビエラが武雄に1個渡す。
「ふむ・・・ん?・・・んー・・・
落雁とはちょっと違いますかね・・・んー・・・ちょっと固い・・・味も悪いなぁ・・・」
「あ?」
「戻ったら一度作ってみますかね。
作り方は誰かに聞きますかね。」
「あー♪」
ビエラが満足そうに頷く。
「さて・・・レバントさんの店に戻ってさっきの鉛筆の話をしますかね。
ビエラ、皆のお菓子も買って帰りましょうか。
何かあるかな?」
「はい!おかち!」
武雄とビエラが店巡りをしながら戻るのだった。
・・
・
レバントの店。
武雄とビエラが戻ると買い物に行っている試験小隊と王都の面々、シモーナは戻っておらず、レバントが出迎えてくれた。
なので、とりあえず、レバントに王城での鉛筆の話をしたのだが。
「んー・・・結局はやっぱり大量発注になったんですね。」
レバントは武雄達が買ってきたお菓子と自身が出したお菓子を食べながら言う。
「ま、こちらの事情も汲んで頂いて鉛筆については定期的に入れる事になりました。
増産については後日、こちらで打ち合わせしてからの報告になります。」
「了解しました。
なら、当分は王城のみに1500本を卸すという事ですね。
あ、そうだ。
キタミザト殿が王城に行っている間に第1軍の方が来て、魔王国の陛下が代替わりした後もウスターソースとウォルトウィスキーは現状と同じ量を納品する事が決まりました。」
「わかりました。
なら、当面は固定という感じですね。
輸出間隔については現状では今のままで行きますので、何かあればシモーナさん経由でやり取りしましょう。」
「はい、こちらもそれでお願いします。
と・・・なら、シモーナさんが来る前に鉛筆の契約書とシモーナさん用に発注書を作っちゃいますね。
キタミザト様はお待ちになっててください。
私はあっちで書類作っていますから。」
レバントが立ち上がる。
「わかりました。
ん~・・・なら、私もさっきの事をまとめておきますかね。」
武雄がリュックを漁りながら言うのだった。
・・
・
「あ、所長、戻っていらしたのですね。」
アンダーセン達が店に入ってくる。
「おかえり、こっちは無事に鉛筆が輸出品目になりましたよ。」
武雄が笑顔で出迎える。
「それは良かったですね。
仕事がないと稼げませんし。」
「所長の協力工房が衰退するのは見ていて嫌ですからね。
まずは仕事が用意出来て良かったです。」
試験小隊の面々が頷く。
「・・・そろそろモニカさんにぶん殴られる気がします。」
武雄が斜め下に目線を下げながら言う。
「・・・まぁ、1発は覚悟した方が良いでしょうね。」
「・・・確かに考え付いて作らせたのは所長ですけど、客の問い合わせに対応しただけですし、多くは殴られないかと。」
「・・・毎回思うのですが、所長発案の物の客からの発注数おかしいですよね?
桁の0が1つ多いと思うんですよ。」
「売り込む先が金持ちばかりだからじゃないですか?」
部下達から散々な事を言われ始める。
「こんなに売れるとは思っていませんよ。
まずはお試しで数十くらいからかと思って指示はしているんですけどね。」
「それは所長の見通しが悪いせいですね。」
武雄の言葉にベイノンが言ってくる。
「え~・・・トレンチコートだって鉛筆、黒板だって金持ちに十数売れれば良いかなぁと思って王都の金持ちに持ち掛けたんですよ?
実際に売り込んだのは妻の姉妹のご家族のみだし。
個人で楽しむだろうと思っていたら、それが騎士団やらにも好評となるとは思いませんでしょう?」
「王家を王都の金持ち呼ばわり出来るのは所長だけでしょうよ。
で?最初の第3皇子一家はどうだったんですか?」
オールストンが聞いてくる。
「『え?そんなに買うの?これでラルフさんに良い顔が出来るなぁ』ですよ。
まさか第1騎士団や王都守備隊が買って、王立研究所の2つも揃えるとは誰が考えますか?」
「まぁ・・・そうでしょうけど・・・
今の忙しさは?」
「というより、最初の王家以外ほとんど私は手を出していませんから、皆さんの努力の結果でしょう?・・・と思っていたらこの間ちょっと怒られました。」
武雄が飄々と言ってくる。
「うん、でしょうね。
あの方々は所長の要請には応える集団ですが、盲目的に仕事をしている方々ではありませんからね。
愚痴の4つや5つは出ると思います。」
ブレアが呆れながら言う。
「仕事が来ている事をアピールしてくるんですよ。
なので、私からは発注が来たら勝手に断らない事にして各工房に伺いを立てているんですけどね。」
武雄が答える。
「うん、所長、変な事をしないでくださいね?
本当に殴られますよ?」
ブルックが心配しながら言ってくる。
「いや、だから、忙しそうだから今回のように発注依頼があった場合は各工房に伺いを立てて納期調整をしているんですよ。
今回なんて断ってくるだろうと思っていたのに月々1500本の納入をさせると言ってきたんですよ?
どう思います?」
「ギリギリでやりくりしているんじゃないですか?
所長の伺いですから無下には出来ないと。」
アーキンが言う。
「うん、私もそう思います。
でも・・・無理しなくて良いのにね。」
「「「「それは出来ないでしょう。」」」」
部下達が言うのだった。
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