第2097話 小太刀を見せました。(あまり特殊なのは売れないよ?)
「どう・・・と言われても・・・ん~・・・
あ、カールラ、実はな、キタミザト殿の剣を預からせて貰って、うちの鍛冶屋に見て貰ったのだがな。」
「ダニエラ、そんなことしていたの?」
ヴァレーリの行動にブリアーニが呆れながら言う。
「いや、昨日はレシピ貰っただろう?
で、今日もとなるとちょっとこっちが貰い過ぎな気がしてな。
今更、金貨というのもなぁ・・・で、うちのタローマティが『だったら武器を見せて貰いましょう』と言い出してな。
こんだけ奇抜なんだ携帯している武器もおかしいと思って借りたんだよ。
もちろん、鍛冶屋に見せることはキタミザト殿から了承を得ている。」
「ふーん・・・でも、キタミザト殿はその間丸腰だったんでしょう?
いくら何でも剣を渡して丸腰になれと言われたら躊躇するものよ。
キタミザト殿、良く武器を渡しましたね。」
ブリアーニが武雄を心配しながら言ってくる。
「敵意から言われてないですし、今回はお互いに何か思っている訳ではありませんしね。
それに渡さなければ、ビエラの着陸をさせないという感じもなかったですし。」
「護衛を1名付けて置いた。
これで事足りる。」
「あそこのメイド?」
「あぁ、メイドの姿をした第1軍の者だよ。」
「そう・・・まぁ良いわ。」
ヴァレーリとブリアーニが話している横で武雄は「まぁ・・・予備もあるし、いざとなれば装備すれば良いだけだしね」と思っていたりする。
「でだ、キタミザト殿、この小太刀は理念が違うのだな?」
「まぁ、斬る事が目的ですね。」
ヴァレーリの質問に武雄が答える。
「?・・・斬るのは当たり前じゃない?」
ブリアーニが言う。
「いや、カールラ、この小太刀はな、『斬る事にかなり注力している』んだよ。
我らの使う物より切れ味が良いが、フルプレートとか固い物に当たれば刃が欠ける可能性は高い。
うちの鍛冶屋はそう判断した。
それにな、キタミザト殿 。
旅や戦争ではすぐ買い替えられる物が良いとされているんだぞ?
特殊性は無くなるが、汎用性があると替えがすぐ見つかってあまり違和感がなく扱える。
特殊なのは1本持って、予備に汎用性の高い武器を携帯するのがお勧めだ。」
ヴァレーリが心配しながら言ってくる。
「そうかもしれませんが・・・普通に組織のトップが旅や戦争時に武器を振うってどうなんでしょうか?」
武雄が自身の事を棚に上げて言う。
「・・・」
ヴァレーリが何も言わずに少し含み笑いをしながら聞いている。
「組織のトップが戦闘をする時は戦局もしくは政局上大事な戦闘か、相手との力量が決定的な大差がある場合だけでしょう。
それ以外は部下に任せれば良いのですよ。
私の組織は普通の組織なので私が率先して戦わないといけないような状況にはあまりならないと思います。
なので、戦闘が少ない私は小太刀で十分です。」
「だって、ダニエラ。
キタミザト殿にも一般論は通用しないようよ?」
「・・・ま、あくまで一般論だ。
キタミザト殿も特殊な武器を携帯するんだから、一般論を知る事は大事だろう。
ある程度、上位に行けば論外となる考え方だが、皆が皆、特殊な武器を持つのはあまり勧められないという事を知っておいて欲しいという事だよ。
キタミザト殿がその辺をもし知らなかったらいろんな人にいろんな物を売りつけそうだからな。」
ヴァレーリが呆れながら言う。
「その為に私の部下は王都守備隊出身者を置いているんですけどね。」
「ほぉ、それはまともな意見が・・・出そうにないな。」
ヴァレーリが頷きかけたが首を捻る。
「ええ、皆には自身に合うものを買うようにと言っていますよ。」
「遅かったか・・・
ま、キタミザト殿、自身の部隊には自由にさせて、他の部隊には口を出さないで一般論を言っておけば良いだろう。
あまり特殊な物を勧めては、相手の貴族や組織長に思わぬ誤解をされかねないからな。」
「わかりました。
頭の片隅に入れておきます。」
武雄が頷くのだった。
「カールラの所の弓は特殊だったよな?」
「私達は住み処が住み処だからね~。
ちなみに全部魔法刻印済みよ。
まあ、といっても森で戦う事を想定しての対応だから戦場ではあまり威力は出ないかなぁ?」
「なんでそんな魔法具を揃えて蟲に勝てないんだ?」
「勝てないんだからしょうがないじゃない。
単純に戦力が足らないのかもね~。」
「ふむ・・・なんで勝てないんだろうなぁ。」
「魔王国から派遣された部隊は助かっているわよ。
押し返してくれているわ。
やっぱり物理的に攻撃力が足らなかったんじゃない?」
「森の中でか?
ふむ・・・我らが行くまでにもう少し調査と実践をさせておくか。」
ブリアーニの言葉にヴァレーリが頷く。
と、兵士が近寄ってくる。
「陛下方失礼いたします!」
「構わんぞ。」
「報告します!アズパール王国側警戒小隊よりホワイトドラゴンが予定通りアズパール王国より越境して来たとの報告が来ました。
王城に向け誘導を開始するとの事です。
以上です。」
「うむ、わかった。
下がれ。」
「失礼します。」
兵士が下がっていく。
「予定通りビエラが帰って来たな。
さて・・・第1軍から無茶な量の鉛筆という文具の依頼にどう対応するのか。
キタミザト殿、手腕を見させて貰おうか。」
ヴァレーリが武雄に言う。
「どう対応と言われても・・・現状で製作工房側に余裕が無ければお断りか数か月後からの分割納入ですよ。
強制的に作らせるわけないのですから。
その部分の報告をしますから後は第1軍で考えて貰えれば結構です。」
武雄が普通に返すのだった。
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