第2096話 232日目 ビエラ、離陸。(ワイバーンて操縦難しいんだね。)
朝9時ぐらいの試験小隊の訓練場。
「よしっと。
ビエラちゃん、きつくない?」
「グルゥ♪」
アリスが成獣状態のビエラの首元にシーツを結び、確認している。
「きゅ♪」
「ニャニャー♪」
クゥとタマが「いってらっしゃい」と少し離れた所から見送っている。
「きゅ~。」
「ニャ~?」
「グルゥ??」
「ちょっと待って。
クゥとタマが土産を待っているというのは良いんだけど、ビエラ!最優先はコショウの購入だからね!
ビエラも美味しいの食べたいでしょう?」
アリスの肩に居るチビコノハが言ってくる。
「グルゥ!」
ビエラが頷く。
「まぁ、無事に帰って来てくださいね。」
アリスはそう言ってビエラから離れる。
「グルルゥ。」
ビエラが飛び立つのだった。
「さて、帰りますか。」
アリスがビエラが飛び去った方を見ながら言う。
「あ、アリス、ちょっと待って欲しいっス。」
時雨が浦風(猫)を抱えてやって来る。
「おはよう、時雨ちゃん。」
「おはようっス。
アリス、ウラカゼの教育終わったっスよ。」
時雨が言う。
「しばらく見なかったけど教育してたのね。
ジェシーお姉様の所には行けそう?」
「大丈夫っスよ。
私がやってる地域監視とハツユキがした関の補強を出来るようにしてあるっス。
現場実習っスね。」
「ご苦労様。
でも・・・伝令が行っちゃったし、指示は仰げないからタケオ様が帰って来るまで待機かな?
ジェシーお姉様の方には目星が付きそうだという事で暗示はして、現状で受け入れられるか確認しておくわね。」
「わかったっス。
なら、タケオを待っている間にウラカゼに訓練場の補修をさせているっス。」
時雨が言うのだった。
「ええ、お願いしますね。」
アリスがにこやかに言う。
「はいっス。
また今夜っスよ~。」
浦風を抱えて時雨が森に入っていくのだった。
「・・・なぜ森に?
まぁ、良いか。
それよりも・・・ヴィクターと話してジェシーお姉様とのスライム体液の交渉内容精査しないとなぁ。
ジェシーお姉様が知っているのは広域の調査が出来る事と土を盛って強化できる事・・・だったはず。
キタミザト家が仕掛けている体液事業はジェシーお姉様が去った後にしてたよね。
どういう契約内容にすれば主要な禁止項目を加味した浦風の貸し出し契約になるのか・・・
あ、夕霧ちゃんにも一度その辺の事を聞いてみるか。
クゥちゃん、タマちゃん、屋敷に戻ってお茶にしましょうか。」
「きゅ♪」
「ニャ♪」
アリスがチビッ子とお供に屋敷に戻るのだった。
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魔王国 王城のワイバーン厩舎。
「へぇ・・・意外とかわ・・・すみません、やっぱり怖いですね。」
メイドに連れられてやって来た武雄がワイバーンを見ながら言う。
「ははは、アズパール王国ではいないでしょうから少し怖いかもしれませんね。」
第4軍の兵士がワイバーンを洗いながら言う。
「ワイバーンは1人1体なのですか?」
「いえ、ワイバーンは我が国では多く所有はしていますが、それでも交代制を取っていて2人で1体を運用しています。
ですが、相性という物もありますから、ワイバーンによっては1人しか乗せない気難しいのも居ます。」
「はぁ・・・馬みたいなものですか。」
「そうですね。
ただ馬よりちょっとプライドが高いですね。
拗ねると面倒ですよ。」
「生き物は難しいですね。」
「まぁ、そうですね。」
兵士が頷く。
「我が国で預かっているテーアさんは第4軍に居たと聞いていますけど、ワイバーンを操れるんですか?」
「・・・今、ここに居ないという事は操れませんね。
なので、第4軍の主任務の潜入と尾行の訓練を受けていたと思いますよ。」
「ウィリプ連合国に行ったという事はテーアさん、上位だったのですかね?」
「まぁ・・・一概には言えませんけども、基礎訓練が終わっただけでは行かせないと思います。」
「そうですかぁ・・・」
武雄はそれだけ言うのだった。
「キタミザト殿、陛下達の用意が出来ましたのでお越しください。」
メイドがやって来て武雄に伝えてくる。
「はぁ・・・わかりました。
結果も聞かないといけないですしね。
あ、お邪魔しました。」
武雄が立ち上がりメイドに連れられて行く。
「いえ、またお越しください。」
兵士が頷くのだった。
・・
・
魔王国王城の城門前の広場にある芝生にて。
「おー、キタミザト殿来たか。」
「ワイバーンどうでしたか?」
机と椅子を用意して優雅にお茶をしていたヴァレーリとブリアーニが武雄に声をかける。
「すみません。
また場所をお借りします。」
「このぐらい貸しても損はない。
昨日の焼きパスタは美味しかったなぁ。」
「野菜炒めにパスタを入れたと言われたらそれまでだけど・・・あの発想はなかったと皆が唸っていたわよ。
ま、似たようなのはあるのだけどね。
あそこまでの美味しさはなかったらしいわ。
改めてありがとうございますね。」
「いえいえ、喜んでくれたのなら教えた甲斐があります。
で、ダニエラさん、返してください。」
「ああ、小太刀だな。
どうぞ。」
ヴァレーリが武雄に小太刀を返す。
「・・・それで今日のビエラの着陸に協力して貰える見返りが私の剣の預かりでしたが。
どうでしたか?」
武雄が小太刀を装備しながら聞いてくるのだった。
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