第2091話 コショウで悪巧み。2(農業研究用の資金を用立てよう。)
「ん~・・・キタミザト様、その仕入れ値が問屋から1kg、銀貨2枚を超える要求があった場合は取引終了でいいんですね?」
「ええ、まぁ、取引終了ではなく停止でしょうね。
赤字になってやる事ではありませんからね。
その際は私とシモーナさんとレバントさんで集まって協議する事にしましょう。
どうして銀貨2枚以上になったのかの原因の究明とその対応策。
もし原因が納得できなく、私達で話し合っても対応策が見いだせなければ終了で他の事をしましょう。」
「わかりました。
なら、そのように契約が出来るのかの確認をしてきます。」
レバントが頷く。
「ええ、もしダメでもとりあえず20kgを買いますし、入手出来る量を売ってくれるのなら買わせて貰います。
まぁその際はアズパール王国内での普及はせずに私が楽しむだけの事ですよ。」
「わかりました。」
レバントが頷く。
「で、レバントさんとシモーナさんにも噛んで貰うので。
お二方にも月々40kg輸入出来るのなら1kg当たり銀貨1枚を成功報酬というか利益で取って結構です。」
「「え?」」
2人が驚きながら武雄を見る。
「え?・・・だって、かなり問屋に利益は渡しますけど制限も付けています。
ある意味、問屋が強欲なら契約上の11年間を待たずに1年程度で終わってしまう可能性もありますからね。」
「良いのですか?
キタミザト様の取り分が少なくなってしまうか、最終売値が高騰してしまいますが?」
「ええ、構いませんよ。
アズパール王国内ではそれなりに高値にしますから。
それにコショウは普及を目的にしていません、あくまでも高級調味料です。
私のコネクション作りに役立つかも・・・しれません。
あ、一応の表立っての理由としては、『生産者保護を目的として、高値で一定数を11年買う事により生産者が安定的な収入を得て生活基盤をしっかりとさせる事が出来るだろうと考えて』とでも言っておいてください。
それに月々銀貨40枚の利益が私達にはありますけど。
何かしらの要因でコショウの輸出入をきっぱりと止めるにしても銀貨40枚なら収入的には痛くはありますが、潰れるほどでもないでしょう。
このぐらいが良い分量なのです。
これより多くをとなるとコショウの売り上げに固執しかねません。
人間は欲がありますからね。
多くを仕入れて多くを売れるというのは商売として間違いではないのですけど・・・その分、万が一の際のリスクは高くなってしまいます。
私達は多くの商品を扱う事でどれかがダメになってもどれかが売れれば良いという商売をしています。
私の場合は、コショウの利益で米関係の研究費用にしたいのですよね。
ちょうど11年あればそこそこ売れるような物が出来上がるだろう年月ですし。」
「そうですね。
私もアプリコットの育成も始めますし、新しいジャガイモもあります。
金貨4枚分は仲買の分際で多くを貰い過ぎていますが、コショウの売り上げはこちらの育成に使わせて貰います。
もちろん、上手く行ったらレバントおば様だけでなく、キタミザト様にも輸出しますよ。」
シモーナが言う。
「そうね・・・私腹というよりも新しい事への投資としてキタミザト様から貰っていると考える方が妥当よね。
なら、私は今回キタミザト様関係で知り合ったブリアーニ王国のカールラさんやその商店、ブリーニ伯爵領の商店、カスト伯爵領のグラートさんや紹介してくれた商店、問屋や鍛冶屋と言った繋がりを維持出来るように使わせて貰うわ。
年に2回程、近況伺いで何か送れば最新の情報はくれそうだし、もしかしたらその中に今回のコショウのようにキタミザト様に買って貰える物があるかもしれないからね。」
レバントも頷く。
3人共、コショウの利益は今後の為に使う事を確認するのだった。
「ちなみにシモーナさんに聞いたドワーフの領地での新種の赤いジャガイモの話ですけど。」
「あれはまだ・・・回答が来ませんね。」
「問屋さんに頑張って貰うしかないのですけどね。
そのジャガイモからお酒を作ろうというのであれば糖度が高い、つまりは甘みが強いという事だと思うのです。
となると、もしかしたら普通のジャガイモのように種芋を植えれば増えるという育て方ではない、何かしらやり方があると思うのです。」
「なぜそう思うんですか?」
「え?スイーツ各種は虫対策を万全にしていますよ?
という事は虫達も甘い物を見たら食べに来ると考えて良いと考えると、あまいジャガイモを普通のジャガイモみたいに切って灰を付けて埋めたら格好の餌食だと思うのは私だけでしょうか?」
「なるほど・・・となるとその赤いジャガイモを売って貰う際に栽培方法も聞き出さないといけないのですか・・・
そもそも売ってくれるのですかね?」
レバントが首を傾げる。
「・・・ドワーフってお酒に強いと聞きますよ?
何本か渡してみますか。」
武雄が考えながら言う。
「あ、そうか、私達にはウォルトウィスキーがありましたね。
ダニエラちゃんに見つからないようにしないといけませんね。
あの子なぜかウォルトウィスキーやウスターソースの入荷の際に来るんですよ。
勘が良いんですよね。」
「・・・暇なんですね。
ま、そうは言っても大量には渡せません。
数本程度しか回せないのでそれを元に入手して貰えますか?」
「ん~・・・その後の発注圧力が面倒ではありますが・・・
キタミザト様、赤いジャガイモに将来性はあると思いますか?」
「それを確かめる為の購入なのでしょう?」
「あ~・・・そうでしたね。
なら、物々交換で入手するか。
ま、それは今向こうで頑張っている問屋が失敗した場合に提案してみる事にします。」
「ええ、お願いします。」
武雄が頷く。
「よし!なら、キタミザト様の同行の方々が帰ってくる前にさっきキタミザト様が言ったコショウの囲い込み用の契約素案を作ってしまいますかね。」
レバントが席を立つのだった。
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