第2089話 コショウの販売方法は特殊にならざるを得ない。(暴利にならないようにね。)
「コノハ、コショウというのはどういうものなの?」
アリスが聞いてくる。
「どういう・・・ん~・・・木の実を乾燥させた物でちょっと辛いかな。
擦って・・・擦ってで合っているのかな?
まぁ、細かくして、料理に和えると風味が良くなるのよ。
アズパール王国ではなさそうだから言わなかったけど、そうかぁ、魔王国のを見つけたのね。」
コノハが考えながら言う。
「そのコショウは美味しいのかの?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「単体では美味しくないわ。
でも、前に出たカルボナーラとかは美味しさが増すと思うわよ。
それに肉にも合うし、結構な量の料理に使えると思うわ。」
「ほぉ、となるとタケオは輸入したがるだろうの。」
「そうですね、コノハが使えると言うのならタケオ様もコショウを使えると思ってこちらに言ってきたのでしょう。
・・・コノハ、その木の実はどのくらいの大きさなの?」
「こんなもん。」
コノハがアリスの問いに親指と人差し指で直径の大きさを教える。
「小さいわね。
どうやって擦るの?」
「ん~・・・ミルってある?」
「ミル??」
アリスが首を傾げる。
「こう・・・筒状の筒内の外側にギザギザ、内側に実を固定させる物を用意して、こうやってコショウの実の表面を削って粉にするの。
・・・早く言えば石臼や木臼と同じよ。」
コノハが両手を使ってコショウミルの説明をするが。
「小さい石臼か木臼を用意すれば良いのですね?」
アリスが臼の方がわかり易かったようだ。
「・・・うん、そうね。
木臼でも出来るし、良いんだけど。
はぁ・・・今度、スズネに相談しようかな。」
コノハが諦めて言うのだった。
「とりあえず、調理には使えそうじゃの。
問題はタケオが黙って帰ってくる事が想像出来ないという事じゃの。」
「はい。
その物を他領やエルヴィス家に売るのでしょうけど・・・コノハ、美味しくはないけど、美味しいのよね?」
アリスがコノハに聞く。
「まぁ、変な問いだけど、そうね、多種多様な料理に使えるわ。
それこそアズパール王国にない調味料だからね。
キタミザト家で独占的に輸入をして、国内で売りまくっても問題はないんじゃない?
事実、タケオの居た所の昔の話ではコショウの重さで同じ重さの金と銀で取引されていたなんて噂が立つぐらい高価な物だった時代もあるしね。」
「・・・そんなに高価なんですか!?」
アリスが驚く。
「ん~・・・高価かぁ・・・タケオの居た所での高価な調味料だった時代は流通網が貧弱だったからなのよ。
流通が発達したら庶民でも買える値段まで下がるのだけどね。
まぁ、対魔王国の輸出入はキタミザト家が一番しているのは事実だから、今の内に独占的な市場を手に入れたら後々楽になるんじゃないかな?
ま、タケオがどう考えているかによって変わるけど、さっきの言ったコショウが高価だった時代の話って結構有名な話でね。
だから・・・ま、あまり高すぎる事はしないだろうけど、ここでキタミザト家の財政をある程度潤沢にする可能性はあるわ。」
「そんな調味料をタケオ様は見つけられたのですね。
でも、高値にして皆が買ってくれるのかな?」
「そうよ。
あとはどれだけ輸入出来るかはタケオの事だからレバントに調査させるだろうけど。
これはウスターソースとは違う売り方をするかもね。」
「というと・・・貴族や豪商相手じゃな?」
エルヴィス爺さんが言ってくる。
「ええ、言い方は悪いけど、そもそもウスターソースは国内で原材料が賄える為、低価格を打ち出して他者の追随をさせない政策を実施しているのよ。
ま、クリフを巻き込んでいるから問題ないようにしているし、低価格で庶民の幸福度を上げるという国民の為の政策として見られているわ。
でも、このコショウはちょっと違うの。
今の所、アズパール王国では作られておらず、敵国の魔王国で生産がされている。
ゴドウィン伯爵領でも輸入は出来るだろうけど、今の段階でコショウが知られていないとなるとタケオのような商流は持っていないとなるわ。
となると、コショウの輸入が出来るのはタケオだけ。
国内流通価格はタケオが決めるような物よ。
それに輸入量は限られている。
ウスターソースのように国民皆にと言うには圧倒的に量が足らない。
安く流通させてしまって流行った場合、タケオは安く放出しても末端価格が上昇するだけ。
さらにもっと輸入しろと圧力をかけられる可能性もあるわ。
なら、最初から価格をそれなりに上げて、これ以上の輸入が困難だと思わせておき、流通先を限定して販売する事が、キタミザト家の利益になるように仕向ける。
これは商売をする者にとって当然の選択だと思うわ。」
コノハが言う。
「ふむ・・・まぁ、今までなかったのじゃ、あまり恨まれるような価格で売らない限り問題はないじゃろう。
それにコノハ殿の話ではそれを使えば美味しくなる料理がかなりあると言う。
貴族が挙って買ってくれるじゃろう。」
「ん~・・・今の話、一応タケオ様にお知らせした方が良いでしょうか?
向こうにいる間に交渉が出来るでしょうし。」
アリスがエルヴィス爺さんに言ってくる。
「そうじゃの、アリスはコノハ殿と打ち合わせをしながら今の話をタケオに教えた方が良いじゃろう。
それに輸入後の分配の事も考えて輸入量と価格に注意するようにとも。
あとはタケオの好きにすればいいじゃろう。」
「わかりました。」
アリスが頷くのだった。
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