第2087話 ハワース商会は見通しを考えないといけない時期に入ったようです。(特需だ特需だ。)
ハワース商会を後にしたアリス達は。
「ん~・・・思いのほか具体的な数字が出てきましたが・・・1500本かぁ。
タケオ様はどう思われるのでしょうか。」
「あ~?」
ビエラが頭の後ろで両手を組んで頭を軽く抱えて歩きながらアリスに言ってくる。
「アリス、ビエラの言う通りよ。
タケオには言われた通りに報告するべきね、月々1500本だと。
後の判断は魔王国がすれば良いんだし。」
チビコノハがアリスの肩に現れて言う。
「そう・・・ですね。
まぁ、こちらで考える事ではないですよね。
では、お菓子を買って帰りましょう。
この後、ジーナちゃんにタケオ様からの指示を送らないといけないですからね。
早めに決めましょうね。」
「はい!」
「きゅ。」
「ニャ。」
チビッ子達が返事をするのだった。
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アリス達が去ったハワース商会の応接室。
「はぁ・・・久しぶりにキタミザト様の無茶が来たね・・・」
モニカが冷めきったお茶に口を付けてため息を付く。
「そうは言うが利益は小さいが大口の注文はありがたいぞ。
確かに鉛筆や玩具の事業は利益はほとんど無いが、ある程度の本数が出荷できるのなら従業員を食って行かせられるんだ。
それに宿用のはこれからだが、家具の繁忙期は終わったようなものだ。
従業員を遊ばせておくのも勿体ないだろう?」
「ん~・・・わかっているんだけどさぁ・・・
さっきのお父さんの言った鉛筆1500本、消しゴム200個だって、今後を見込んで在庫を増やす為に鉛筆2000本、消しゴム250個ずつ生産をする予定だったのを切り崩しての話だよ?
余剰があるうちに在庫を多く持って、次の家具の繁忙期には少しずつ放出しながら人員をやりくりするという手はずだったのに・・・今からの余剰分は全部魔王国向けになっちゃうなぁ・・・
キャロルさんの所に本格的に頼もうかなぁ?」
「そうだな。
アリス様にもさっき言ったが一番時間のかかる所を倍増させるという手もある。
そこはキャロル殿と話し合ってモニカが決めれば良い。」
「そうだねぇ・・・雇った人達がやっと慣れ始めてきた所で追加で雇用かぁ・・・んー・・・」
モニカが悩む。
「あと、王都や貴族方からの注文で納品の際に月毎の定期的な購入をされるかの確認だな。
その受注量によって数年程度の見通しが立てられるだろう。
そうすれば事業計画は立てやすくはなるぞ。
実際、エルヴィス家からは今後5年間、毎月1000本の購入の契約は頂いているんだ。
他の所も毎月買ってくれるところがあるとは思うがな。」
モニカの父親が言ってくる。
「エルヴィス家を見ると武官方が購入に意欲がある感じよね。
まぁ、それも含めて一括で買って頂いているんだけど。
あとはジーナちゃんが王立学院で売り込んでくれているんだっけ。
人事局がまとめて買ってくれているけど・・・んー・・・あそこも毎月購入してくれるかな?」
「なんとも言えないなぁ。
兵士の方々が強く欲しがっているのは確かだが、文官方も欲しがっている方は多い。
それにラルフの所やベッドフォードの所も鉛筆は重宝していると聞いている。
こちらは納入数は少ないが押さえておかないといけない所だろうな。」
「んー・・・増産かぁ・・・」
モニカが唸る。
「まぁ、人員増強、設備増強は良いが、一時の需要を賄う為にしてしまうと後々、経営の重荷になるからな。
悔しいが家具の需要が伸びるような感じはしない。
まぁ・・・南町での新たな村や人工湖関連での家具の特需があるのはエルヴィス家から通達が来ているが、あれは本当に一時的な物だからな。」
「はぁ・・・それに合わせて鉛筆の生産を少し抑えて、家具の方に注力しようというのが今回の在庫確保の計画の主旨だったんだけど・・・どうしよう・・・
人員を増やして倍増させるか、効率を良くして少し増やすか・・・」
「まぁ、今回の魔王国の話云々はキタミザト様が戻ってからわかるだろう。
今は今後の見通しを各お客から持ち寄って貰って、どちらかを実施するしかない。」
「そうだね・・・はぁ・・・なら、次の各出荷の際に各お客様に聞き取りの手紙を同封しようかな。」
「そうだな。」
モニカとモニカの父親が頷く。
と。応接室の扉がノックされモニカの父親が返事をするとモニカの旦那が入ってくる。
「あ、ここに居ましたか。
モニカ、お義父さん、決まりましたよ!」
「「うん?」」
モニカとモニカの父親が首を傾げる。
「宿屋の建設計画で耐火板の採用が決まりました!
それも表通りと裏通りの両方の個室全部屋の間仕切りと厨房内の内装に採用です!
お義父さんが言っていた、合板を挟んだ耐火板の仕様が施工性が良いと評価されましたよ!
それに個室には壁紙が採用されました!
部屋のグレードによって壁紙を替えるそうです。
やっと実績が作り出せますね!」
モニカの旦那が嬉しそうに報告をするのだが。
「「・・・」」
モニカとモニカの父親は唖然と見返す事しかできないのだった。
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