第2086話 ビエラ到着。(ハワース商会に余剰があるか聞いてみよう。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
昼食後の昼寝タイム。
アリスはロングソファにゴロンと横になり、クゥ、タマもソファで丸くなって寝ていた。
「・・・きゅ?」
クゥが目を覚ましてキョロキョロと見回す。
と、控えめなノックが客間の扉にされる。
「きゅ。」
クゥが鳴くと夕霧が入ってくる。
「ん、アリスは寝ていますか。
クゥ、ビエラが帰還するようです。」
「本当?」
チビコノハが机の上に実体化して聞き返す。
「はい、先ほど、ホワイトドラゴンが屋敷の上空を旋回しました。
北に向かいましたから・・・あ、報告が来ましたね。
シグレからですね、ビエラが試験小隊の訓練場に到着したようです。
・・・迎えに行った方が良さそうですね。」
夕霧が客間に来たスライムを吸収して言ってくる。
「きゅ~?」
「ん?クゥ、行く?」
コノハがクゥに聞く。
「きゅきゅ♪」
「じゃあ、皆起こすか。
アリス、散歩行こー。」
コノハが人間大に大きくなりアリスを揺する。
「・・・むぅ?・・・コノハなんですか?」
アリスが寝ぼけながら体を起こす。
「ビエラがドラゴンで緊急帰宅よ。
試験小隊の訓練場に居るって。」
コノハが言う。
「・・・・・・ビエラちゃんが?」
「うん、先行して戻って来たらしいわ。
多分緊急だろうね。」
「・・・よし!散歩行きますか!
クゥちゃんはタマちゃんを起してくださいね。
顔を洗ったり、外行き用のバッグとか持って来ますから・・・10分後に玄関集合で。」
「きゅ♪」
アリスが立ち上がりクゥに説明するのだった。
・・
・
試験小隊の訓練場にて。
「はい、到着~!」
「きゅ~♪」
アリス達が小走りでやって来た。
「あ、アリス来たっスね。
あとはよろしくっス。」
「はい、ありがとう、シグレちゃん。」
「構わないっスよ。」
時雨がアリス達を見つけて軽く手を振りながら小屋に入り、森に戻って行く。
「グルルゥ。」
成獣状態のドラゴン(ビエラ)が喉元に巻かれたシーツを指さす。
「あー、これを取れと言うのですね。」
アリスがシーツを取り、メガネをかけて中に入っていた手紙を読みだす。
「ふむ・・・これは・・・ちょっと・・・まぁビエラちゃんを寄こしますかね。
ま、どちらかと言えば陛下が苦悩する感じでしょうかね。
私は取次と確認をすれば良いと。
あ、ビエラちゃんは今日はこっちにお泊りなんですね。
さて、ビエラちゃん、お腹は空きましたか?」
シーツを取られてすぐに人型になったビエラにアリスが聞いてくる。
「あ~?」
ビエラが軽く首を振ってくる。
「なら、この足でハワース商会に行きましょう。
帰りにお菓子も買って帰りましょうね。」
「はい♪」
「きゅ~♪」
「ニャ~♪」
アリスが行き先を決めるのだった。
・・
・
ハワース商会の応接室にて。
「「・・・」」
モニカとモニカの父親が項垂れていた。
「えーっと・・・タケオ様からは以上になります。」
アリスが「まぁ、こうなるよね」と思いながら説明を終える。
「・・・国内でもそれなりの受注はございますが・・・鉛筆40000本と消しゴム2000個ですか。」
モニカの父親が呟く。
「はい、キタミザト家として買い上げてからの魔王国の輸出という所です。
お支払いという所では今と変わりませんので、とりあえず、毎月どのくらい卸せられるかの確認です。
それによって魔王国での交渉が変わりますので・・・大まかで良いので教えて貰えますか?」
アリスが申し訳なさそうにして聞いてくる。
「そうですね・・・モニカ、余剰はどのくらいだ?」
「はぁ・・・そうですね・・・
丁度、家具の方の繁忙期が終わったから・・・んー・・・
王都と領内の方は月の生産発注数で合意が取れているから・・・今の所の生産量ではあと月1500本、消しゴムは月20セットが良い所だと思います。
それ以上の納品となると残業になってしまうと思いますので、急を要する以外では極力出来ませんし、するのなら特別料金を頂きたいと思います。」
「まぁ・・残業させてまでというのはありますよね。
予定をやりくりして貰って1500本かぁ・・・」
アリスが腕を組んで考える。
「ふむ・・・アリス様、まだ検討段階なのですが、サテラ製作所の方に効率良く鉛筆が出来るような装置の依頼をしています。」
モニカの父親が言ってくる。
「効率良くですか?」
「はい、今は1日一工程として、毎日やる事を替えていますが、ある程度、流れ作業が出来ないのかの確認と作業時間を短く出来ないかの検討をサテラ製作所に依頼しているのです。
こういった事は他者の目を通して見た方がわかりやすいのでお願いしているのです。」
「なるほど・・・でもすぐにという事ではないですよね?」
「はい、そうです。
それに注文が今後も伸びるのでしたら、効率よりもまずは作業工程の中で時間を取ってしまう、鉛筆をあの形に削る機械や貼り合わせる機械をもう1台ずつ作って単純に2倍の生産量を作り、人員を増やした方が現段階では良いのかもしれません。」
「ん~・・・注文の伸びですか・・・まだ販売したばかりですから安定して毎月の購入依頼というのは来てなさそうですよね。
今後わかってくると思いますけど、今の内に生産量を倍にするという判断は難しいでしょうかね。」
アリスが考えながら聞いてくる。
「はい、ですので、現状でキタミザト家に追加でお売り出来るのは毎月1500本で75箱、消しゴムは月100個の20セットになります。」
「わかりました。
タケオ様にはそう報告して、魔王国との交渉に臨んでもらおうと思います。」
アリスが頷く。
「はい、お願いします。
余談ですが、魔王国には40000本を月々分割して納入させて頂きますが、その後も月々定期的に購入頂ける用意があるのかという所もご確認いただければと思います。」
「わかりました。」
アリスが頷くのだった。
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