第19話 進退。 とりあえず生きてはいけそうです。
エルヴィス爺さんは困っていた。
「さて、大まかにお互いの身の上を聞いたのじゃが・・・
さっぱりわからんの。」
「まったくですね。」
武雄は相づちを打つ。
「・・・タケオ様、他人事みたいに・・・」
とアリスは呆れ模様。
「タケオはどうしたいのじゃ?」
「そうですね・・・現状としては、なぜここに来たのかわかりません。
帰れる方法も知らない。自分が何をなさないといけないかもわからない。
でも私自身は生きているという事は、何かしらで生計を立てないといけないのですよね・・・」
「そうじゃの。」
「困りましたね。私は体力自慢でもないし、戦略が冴えているわけでもない。
・・・あと3日くらいが私の寿命ですかね?」
「え!?諦めるのですか!?」
スミスは驚く。
「・・・いや、さっき自分自身で言って現状を認識しましたが・・・結構役立たずでしょ?」
「うむ・・・しかしじゃ、わしの命の恩人を無下には出来まい。
という事でしばらくうちで預かろうと思うがの?どうじゃ?」
「私には異論はありません。」
「僕も異論はありません。」
「うむ。ではしばらくの間、タケオはうちで過ごせ。ちなみにあとでわしを救ってくれた報奨金をだそう。」
「わかりました。」
と武雄は答えた。
「とりあえずの結果は出ましたので、お爺さま、そろそろ僕は部屋に戻ります。
勉強がありますので。」
「うむ、構わぬ。励みなさい。」
「はい。」
とスミスは退出する。
それを見届ける4人。
「で?どうなんです?」
「何がじゃ?」
「好待遇過ぎます。人助けで3食昼寝付きですよ。
誰だって疑いたくもなります。
明日は死体になっているなんて洒落にもなりません。」
「うむ。アリスはどう思う?」
「お爺さまを救って頂いた。
それだけでも数日は滞在される理由としてはよろしいでしょうが・・・
お爺さまはタケオ様の雇用をお望みなのでしょう?」
「うむ。わしはのタケオ、お主の知識を分けて欲しいのじゃ。」
「知識と言っても具体的な物はありませんよ?
結果や出来上がりを知っていて、行程や材料を知らないのです。」
「結果がわかっているだけでも価値があると思うぞ?
行程がわからないのであれば、他の者達に聞けば良いしの。
皆で知恵を出し合えば良いのじゃ。
例えばお主、馬車は初めて見たと言うておったろ?」
「初めて見たとは言った覚えはありませんが、実物は確かに初めて目にしましたね。」
「では、お主の所では移動手段は何を使っておったのじゃ?」
「・・・ちなみに王都まで馬で何日かかりますか?」
「日中のみの移動として6日かの?」
「そのぐらいですね。」
フレデリックが相づちを打つ。
「ん~大体500kmくらいと想定すると東京-大阪間くらいか・・・
そうですね、朝出ればその日の夕方には着きますね。
急ぐならば、鐘が1回鳴ったと同時に出発して、次の鐘が鳴る前に到着できる手段もありました。」
「「「は?」」」
3人は驚愕する。
「タケオのいた所は魔法はなかったのじゃろ?」
「ありませんでしたね。」
「なんじゃその速さは。」
「純粋な技術のみで進化した世界です。
あ、そう言えば良い言葉がありますよ。
『進み過ぎた技術は魔法と大して変わらない』らしいですよ。」
「うぅむ、その知識をわしの為に使えぬかの?」
「というかですね、使える知識があるのかの判断が付きませんね。」
「相談に乗ってくれるだけでも良いがの。
その都度、思ったことを言ってくれて構わぬ。」
「・・・良い事だけしか言わないとは約束できませんよ?」
「うむ、そんなもの期待しておらんわ。むしろ悪いことを言ってほしいのじゃ。」
「わかりました。
エルヴィスさんの補佐兼相談役になりましょう。
ですが、基本的に行動は自由で構いませんか?
呼んでいただければ話に加わりますが、実際にいろいろと見て感じた事を
お伝えした方が新しい視点として良いと思いますので。」
「うむ、構わぬ。必要な時は呼ぶことにする。」
こうして武雄は相談役になった。
フレデリックが部屋から一旦、退出していった。
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