第2077話 王都組は何か収穫はあったのか。1(それSUSだよね?)
「で、デナムさんとラングフォードさんはどうでしたか?」
武雄が王都組に顔を向ける。
「ん~・・・結論から言うと武器や防具で扱っている鋼材は鉄と革がほとんどでしたね。
素材的に変わり映えはしませんでした。」
「価格についてはアズパール王国の王都より安く、品揃えという点では多く取り扱っています。
ですが、試験小隊の方が言っていました兵士達が戦争等で使う一般的な武具と防具については特に注意すべき点はありませんでした。
輸出入については価格差はありますが、輸送費を考慮すると実施しても国内での生産品との価格競争で利益は出ない、むしろマイナスになるのではないかと思います。」
デナムとラングフォードが武雄に言ってくる。
「ふむ・・・武器の輸出入は趣味程度での個別発注に留めるべきという事ですね。」
「はい、どうしても欲しいと言われたらレバント殿を経由して探し、注文をする事に留めるべきです。」
ラングフォードが言う。
「となると・・・こちらの工房で製作可能な武具等の外形が載った簡単な冊子を作って頂いて、私達の方で管理し、依頼があればその中から選んで見積もり依頼というのが事業としてはやり易そうですね。」
「多分、その程度が良いと思います。」
「了解しました。
で、デナムさん達は鋼材を調べて、主に使われている素材は確認してきたと言っていましたが、他には聞き取りをしましたか?」
武雄がデナムに聞く。
「ええ、しましたが・・・ん~・・・
こちらでも鉄の合金製作を実施しているようで成功品の方は概要だけでほとんどが失敗作の話をされました。
失敗作の方は簡単な配合も言っていました。
マークが記録を取っています。」
「まぁ成功しているのは製品として買ってくれという事でしょうからね。
失敗作なら流出しても問題ないと思ったのでしょう。
で・・・デナム局長、局として成功品の概要を聞いての輸出入に繋がるかの判断は?」
「現状ではしない方向でお願いします。
武器にする鋼材の成功品の概要と価格は聞きましたが、加工の難しさからくる価格の高値と防具にしてからの販売という点が反対する最大の理由です。
確かにウィリプ連合国、カトランダ帝国側との戦闘では使えそうではありますが、対魔王国となると今回教えられた鋼材を使った製品は1級品ではあるでしょうが、私達は敵国です。
魔王国には我々が購入するよりも良い性能の特級品が納入されるでしょう。
対ウィリプ連合国とカトランダ帝国には現状のアズパール王国製の物で十分かと考えます。
ですので、ラングフォード殿が言っている通り、個別の輸入対応で行ってください。」
「わかりました。
武具についてはレバントさん達と協議し、個別発注の方向で行きます。
カタログが出来たら王都には送りますので、その際に確認を。」
「「わかりました。」」
デナムとラングフォードが頷く。
「失敗作は何でしたか?」
武雄がデナムに聞く。
「はい、『硬度のみ追及したら硬い鉄合金は出来たのだが、一定以上の衝撃を与えると割れるという武器としては使えない鉄合金が出来てしまった』と。」
デナムの言葉に武雄が真剣な顔で聞いている。
「また、『硬度が増したせいなのか、銀のような光沢のある塊になってしまった、鉄のように叩いて延ばすというのが力加減が大変なので最初の溶けている段階で成型しないといけない。
余程の熟知した者達でないと叩けない材料になってしまった』と。」
デナムが言う。
「・・・デナムさん、その配合を今持ってますか?」
「はい、こちらです。
デナムが武雄にメモを渡す。
「ありがとうございます。」
武雄が持ち上げて内容を見る、武雄の肩にチビパナが実体化して一緒に中身を確認する。
「・・・どう思います?
これ・・・特性的にステンレス鋼ですよね?」
「特性的には合ってそうです。
配合がどうなっているのか・・・この鉱物が原因でしょうね。」
武雄とチビパナが眉間に皺を寄せながら見ている。
「キタミザト殿?」
「いえ、この紅鋼とはなんですか?」
武雄がデナムに聞く。
「真っ赤な材質です。
観賞用でドワーフ王国から少数を輸入していますよ。
まさか鉄と観賞用の紅鋼と木炭を一緒にするとは思いませんでした。」
「・・・この鋼材で厚さ1㎜の鉄板は出来ますか?
2m×1mくらいで良いのですが?」
「え?・・・キタミザト殿、この鋼材を使うのですか?」
「ええ、作れそうですか?」
武雄がデナムの問いを肯定する。
「何を作るのですか?」
「使えるのかの確認をしたいので・・・50枚くらいで。」
「多いですね!?」
「キタミザト殿、何を作るんです?」
ラングフォードが聞いてくる。
「いえ、実際は耐食性がどうかですけど・・・キッチン周りや窓や扉に試したいですね。」
「「「耐食性?」」」
デナムとハガード、ラングフォードが聞いてくる。
「ええ、狙っている鋼材になるのなら、水分に強い鉄のはずなんですけどね。
その試験をさせて欲しいですね。」
「ふむ・・・キタミザト殿、その知識はどこから?」
ラングフォードが聞いてくる。
「あー、私の精霊と会議して出て来たんですよ。」
武雄が堂々と言うのだった。
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