第2074話 その頃のいつもの面々は。2(新種のソースとは何だ。)
「キタミザト様のコンテナ搭載馬車は完成したんだ。」
ベッドフォードがローチに言ってくる。
「ええ、今はエルヴィス家より幌馬車の注文が大量に入っているのでコンテナ搭載馬車の製作は一旦停止ですね。
それと港湾関係の方は今、文官方とやり取りをしていて試験機をどう作るかの確認をしています。」
「盛況だなぁ。」
「ええ、一気に来ましたからね。
やりがいがありますよ、納期的にですが。」
ベッドフォードの言葉にローチが苦笑しながら言う。
「まぁ納期に余裕はないというのはいつもの事だ。
そういえば今日は若い2人は来てないなぁ。」
ベッドフォードが聞いてくる。
「今日は2人でデートですよ。
たまには美味しい物を食べてきなと送り出しています。
仕事ばかりではいけませんからね。」
「まったくだ、若いのなら仕事も一生懸命、遊びも一生懸命にならないとな。
そういえば、ここ最近の流行りと言えば、鶏の唐揚げだな。」
「昼間見ましたけど、ピザに鶏のから揚げの切り身を乗せている所がありましたね。
新しい物同士を足していましたよ。」
ラルフが言う。
「え?そんなのが出たのか?
俺は衣というのか?皮にトウガラシが入っている辛い唐揚げを見つけたぞ。」
「どこですかそれ?
私は向こうの1つ通りを入って南に行った所ですけど。」
「俺は裏門から2つ目の店だぞ。」
「そんな所にも。
今度行ってみますね。」
「ほほほ、街中に鶏とピザが浸透しておるようで。
こういった流行りは支持される物は残り、他は淘汰させるのが常。
となれば淘汰される物は今の内に食べないと食べられないという事です。
ちなみにシリル、流行りの鶏とかは食べていますか?」
「はい!うちですか!?
そうですね・・・あ、うちの下っ端が流行りに乗って食べ歩いていると言っていましたが、どこも美味しくて困ると言っていました。
私からすれば毎日良く唐揚げを食べていられると呆れてしまいました。」
シリルはローに声をかけられて緊張しながら答える。
「ほほほ、それも若さゆえですよ。
私なんかは週に1度が精々ですね。」
「ローさんは日頃は何を?」
「ほほほ、売れ残りのワインとパンを噛っていますよ。
あ、流行りと言えば、気になる事があるのですけどね。」
「「「なになに?」」」
皆がローに注目する。
「ふむ、何にでも合うソースが出ているそうです。
もちろん、ウスターソースではありません。」
「「「??」」」
皆が首を傾げる、鈴音は「あ~・・・どうしよー、それってマヨネーズのような気がする?」と思いつつも違う可能性があるので皆と同様に知らない素振りをする。
「ふむ、その様子では皆も知らないのですね。」
「ローの爺さんでも知らない事があるんだな。」
「ほほほ、この街に関しては知らない事の方が少ないのですけどね。
というわけで、新種のソースらしいですよ。」
「「「らしい?」」」
「うむ、常連の者が来店した際の話なんですけどね。
どーも、その新種のソースが買えた事で舞い上がっていたみたいで私の店に来て、まくし立てて話していたのですが、一通り話すと我に返って『私が言ったというのは内密に』とか言ってきましてね。
急に怖気づいてしまったのが気になったのでどこで買ったのか、どんな物なのかを聞いたんですけど・・・口を割らずにそそくさと帰ってしまったのです。
皆なら知っているだろうかと聞いてみたんですけどね、ほほほ。」
ローが言う。
「ん~・・・それはどんな物なんでしょうね?」
ラルフが考えながら言う。
「そうね・・・スズネちゃん、知っている?」
「え?」
モニカに聞かれて鈴音が困ってしまう。
「知っている」と言うのは簡単だが、違っていた場合、知らないソースを知る機会を逃してしまう。
かといって「知らない」と言うのは、マヨネーズだと発覚した時に嫌味を言われる事は確定。
「黙秘」というのは「知っている」と同異議なので不採用。
さて・・・
「あ~・・・その・・・え~・・・」
鈴音が若干下を見ながら急速に酒が入った頭を回転させる。
「スズネちゃん、知っているわね?」
「ええ・・・そうですね・・・該当しそうなのは知っています・・・が、私の口からは言えないというか・・・違っていた場合、私の情報が正と認識されてしまい、そのソースを手に入れられなくなってしまいます。
その常連さんが何を買ったのか私にはわからないので不用意に答えられない・・・です。」
鈴音が考えながら言い訳をする。
「私達に言えないの??」
モニカがにこやかに言ってくる。
「あ~・・・うん、状況がわからないので黙秘します。
もしかして店側から何かその常連さんに言ったのかもしれません。
何か店側に事情がある可能性もあるので、私は何も言いません。」
鈴音が言い切る。
「ん~・・・スズネちゃんは言わないか。
まぁ、良いか。
私達で勝手に予想をして、各々勝手にその店に行けば良いだけだし。」
「ま、そうだな。
それでローの爺さん、その常連は他にどんな事を言っていたんだ?」
「新しいソースと言うのが面白そうですね。
キタミザト様のウスターソースと比べたい所です。」
「ほぉ、面白そうですね。」
「新しいという所がそそりますね。」
皆が面白がってローに聞く。
鈴音は「あー、皆普通ならやめるのにお酒のお陰でブレーキがないわ」と思いながら黙秘を続ける。
まぁ、店側が何か言ったはずはないと鈴音は直感で思っている。
もしマヨネーズであるのなら、そもそもの提供元がエルヴィス家、発案者は武雄さん、となれば「秘密にしてね」という事は言いださない者達。
となると、買い手の話になる。
つまりはマヨネーズであるのなら、その常連さんやその仲間が買いたいが為、他のライバルが増えないように秘密にしようという魂胆なのだろうと思っていたりもするが黙って皆の推理に聞き耳を立てるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




