第2073話 その頃のいつもの面々は。1(今日も報告会。)
エルヴィス邸がある街の酒場。
いつもの酒場にいつものメンバーが居た。
「シリルさん、いらっしゃーい!」
モニカが満面の笑みをシリルに向ける。
「良かった良かった。
もう増えないのかと思っていたぞ。」
ベッドフォードがにこやかにしながら飲んでいる。
「ほほほ、また仲間が増えましたね。」
ローが陽気に飲んでいる。
「はぁ・・・まぁ、これでこの街がまた忙しくなるな。」
キャロルが諦めながら飲んでいる。
「ん~・・・今度は靴職人かぁ。
多種多様ですね。」
テイラーが考えながら飲んでいる。
「皆、最近は順調ですからねぇ。
厄介事は少なく、やる事は多い、実に結構な事です。」
ローチが言う。
「ははは、皆さん、紹介したように名前で呼んで結構だそうなので、今後ともシリルをよろしくお願いします。」
ラルフが言う。
「で・・・どういう事です?」
シリルがラルフに顔を向けてこの場の事を聞いてくる。
「ここに居る面々は皆、キタミザト様関係の仕事を一手に引き受けている工房・商店主ですよ。
そこにシリルも入る事になったという事です。
おめでとう。」
ラルフが言う。
「・・・ロー殿やキャロル殿が居ますが・・・」
シリルが別組織の大物が居ることに驚く。
「ええ、キタミザト様が声をかけた結果ですよ。」
ラルフが頷く。
「こんばんはー。」
「「「こんばんは。」」」
鈴音とブラッドリー達がやって来る。
「おや?今日はステノさんの所も来たね。」
「ほほほ、今日はいつも以上に賑やかになりそうですね。」
モニカとローが嬉しそうに言う。
「ははは、いつもスズネがお世話になっています。」
ブラッドリーが皆に会釈しながら席に着く。
「ブラッドリーさんが来たという事は仕事が一段落したと?」
キャロルが聞いてくる。
「ええ、エルヴィス伯爵様とブリアーニ王国向けの輸出品が組み上がりましてね。
出荷前試験を残すのみです。
今日は組み立てがさっき終わったので夕食を作るのも何なので食べに出てきました。」
「それはそれはお疲れ様でした。
懐中時計の方はどうですか?」
「おかげさまで、この間のキタミザト様に報告した通り、こちらに来た職人達が上達してくれて増産が出来るようになりました。」
「ほぉ、それは良かった。
納期待ちは短くなりそうですね。」
「まだまだ・・・かかりますね。
注文が後を絶たないので。」
ブラッドリー苦笑する。
「ほらほら、とりあえず、お酒頼まなきゃ楽しめないですよ。
赤ですか?白ですか?」
モニカが聞いてくる。
「では、白から。」
「はい、わかりました。
スズネちゃんは?」
「赤で~。
えーっと、皆さんは・・・ボトルで入れて勝手にやりますかね。
あと、野菜の炒め物とピザを取り分けながらで。」
鈴音がボイド達を見ながら言う。
「はいはい、わかったわよ~。
店員さーん。」
モニカが店員を呼ぶのだった。
・・
・
料理とワインを楽しみながら皆がワイワイ話をしている。
「はぁ・・・キタミザト様が居ないと平和だわ。」
モニカがゆっくりとワインを飲む。
「モニカさん、帰って来たら大忙しなんですか?」
鈴音が素直に聞いてくる。
「・・・スズネちゃん、怖い事言わないで。
忙しいのはラルフさんの所とローチさんの所よ。
私の所はもうすぐ終わり、通常営業に戻るわ。
とはいっても家具が落ち着いたから手が空いた人員を鉛筆や黒板作りに当てて皆を暇にさせないようにするんだけどね。」
「モニカさんはとりあえず休憩に入るんですね。」
「そうねぇ・・・そうだね。
はぁ・・・なーんか、キタミザト様が外遊に行かれると帰って来た時に仕事が増えるのよね。」
「それ・・・モニカさんだけですよね?」
「・・・そうなのよね。
ローさんの所はもう年間の生産数が決まっているから安定しているし、ベッドフォードさんの所は作れば作るだけ売れるけど、仕入れの方の量はエルヴィス家が調整しているから毎日精一杯作れば良い。
キャロルさんの所は皆の下支えみたいな事をしていて、今はローチさんとラルフさんの所に納める物を作っているし、ステノ技研への職人の斡旋もしているわね。
ローチさんはキタミザト様関係ではこれからという感じだけど、外遊してきたら増える形ではなくて、これから作り出す所だし、ラルフさんは今年の冬までの売り物を作っている最中。
ま、今回靴も作ると言っているからこれから色々と自分達で作り出すんだろうね。
ステノ技研さん達は元々キタミザト様の小物を作っているみたいだけど、懐中時計がメインでしょう?
キャロルさんと打ち合わせしながら人員の拡張をすれば良いし、聞いた感じ新しい物は作るけどあまり量産品は作らないみたいだからキタミザト様の外遊後に仕事が増えるという感じでもなさそうだよね。
ま、突発的に作らないといけないというのも大変だろうけど。」
モニカが考えながら言う。
「・・・モニカさんの所、文房具だから色々と売り込みしやすいんでしょうね。」
「かもね。
でも・・・王都からの発注量は異常よ。
また昨日も来たのよ。」
「あれ?前にも来ていましたよね。」
「人事局からはね。
あれも何とか捌いているけど、昨日は第1騎士団と専売局からよ。
鉛筆は500セットの10000本、消しゴム200セットの1000個。」
「へぇ~・・・王都凄いですね。」
「はぁ・・・結局、フル稼働なのよね・・・
また人を増やそうかしら・・・でも一時的な注文かもしれないし・・・ん~・・・」
「・・・そういえばジーナさんから手紙とか貰ってないのですか?」
「・・・うん、来たわよ。
やっぱりジーナちゃんもキタミザト様の部下なのはわかったかな。」
「ん?」
「まだまだ認知度が足りないと思うので王都で販売促進していきます・・・て、書いてあった。」
「それが忙しさの原因ですよね。」
「まさかとは思うけど・・・キタミザト様達はうちへの鉛筆の注文が少ないと思っているのかしら?」
「・・・ん~・・・武雄さんからは特に言われた事ないですね。
今度聞いておきますか?」
「ん~・・・やっぱり遠慮する。
聞くと何か変な所を突っつく気がしてならないから。」
モニカが考え抜いて答えを聞かない事を選択するのだった。
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