第2068話 全てはアズパール王国の為に。(敵戦力を出来るだけ少なくさせたいと思うのは我が儘でしょうか。)
「はい、ご存じの通りウィリプ連合国は奴隷制度を採用している国家群です。
カトランダ帝国ではそもそも奴隷制を採用していませんでしたが、一部認め始めています。
アズパール王国は奴隷制度は期限限定で認めますが、その後は解放する事が条件です。
まぁ我が国の上層部は奴隷を所持している者への締め付けを少しずつ行うような気配を出してはいます。
ま、ここは良いでしょう。
ウィリプ連合国は時を同じにしてアズパール王国に侵攻をします。
その際の先鋒・・・この場合は先鋒なのか??
まぁ、先陣を切って我が国の兵士に当たってくるのは奴隷です。」
武雄が言う。
「だろうな。」
「「そうですね。」」
ダニエラ達が頷く。
「そして供給元はデムーロ国、そのデムーロ国を魔王国は攻めるという。
なら、一石を投じ、ウィリプ連合国に届けられる奴隷の種類を減らすように誘導するというのは不思議な行動ではないと思いますけど?
それに好き好んで自国の者達が苦境に遭う事を望むような捻くれた性格はしておりませんのでね。
なので、私の中で面白く、ウィリプ連合国への輸送品目が少なく出来、そして戦力にあまりならない物を運んでもらえるように先の提案をしました。
それと同時に魔王国がデムーロ国の代わりに奴隷の輸送を全部やるというのを阻止したかったのも確かな所ですね。」
「ふむ・・・なるほどな。
なぜ、魔王国が奴隷の輸送をするのを阻止したかったんだ?」
「1つは言っている事とやっている事の不一致をわかっていてやるからです。
それに昨日の話ではないですけど、やる理由が隣国との摩擦を生み出さない為。
嫌々やるというのは見ていて痛々しいです。
なら、敗戦の民の不平不満も食人達への対応も全てデムーロ国に任せて、魔王国はあくまで確認作業のみをしていれば良いと思っただけです。
この体制を構築出来れば、増々ウィリプ連合国へ運ばれる魔物の種類は減るでしょうからね。」
「・・・そうだな。」
ヴァレーリが頷く。
「これだけやればアズパール王国に籍を置く貴族としての仕事は全うしたと言っても良いぐらい仕事をしましたよ。」
「十分すぎる仕事だったな。
で、キタミザト殿、個人の意見として自身の提案を振り返ってみてどう思った?」
「・・・そうですね・・・
侵攻作戦は面白い所を提案出来たと思いますし、割譲案も割と受け入れて貰える内容を提示出来たと思います。
どちらも上手く推移すれば味方兵士の死傷数が減らせるだろうと思います。
戦争の結果は、カールラさんにでも聞きに行きましょうかね。
また、輸送される奴隷の種類低減はアズパール王国の者としては是非とも実施してくれるとありがたい内容ですね。
うちの家令をしているような知恵が回る者とは戦いたくありませんし、メイド見習いをさせているような子供達を戦地に立たせたいとは思いませんからね。
出来れば、アズパール王国の兵士が対応しやすいオークとかオーガとかにしてくれると精神衛生上まだ楽ですね。」
「・・・キタミザト殿、子供達を戦場のさらに先頭に立たせると思うか?」
ヴァレーリが難しい顔をさせながら腕を組んで聞いてくる。
「・・・奴隷になったエルフの一家を買い入れて、家族の目の前で娘を強姦するのが楽しいと思う者が上層部に居る国家ですが?
しないとでも?」
武雄の言葉に室内の皆の動きがピタッと止まる。
擬音にすればビシッと音が鳴り響いたはずだ。
「あ~、そうだったな。
その後、闘技場で剣闘士をさせられて魔物相手にボコボコにされた所をキタミザト殿が買ったんだったな。」
「ええ、父親は両膝の靭帯が伸びており、このまま戦闘をした場合は断裂していただろうし、母親は内臓が問題でボロボロで血尿も頻発。
長男は左上腕の骨にヒビと軽い肉離れで腕の不随、長女が腰椎損傷による下半身の不随と無痛覚、左肩の神経の損傷による腕の不随。
最後に次女が左太腿の軽い肉離れと左手首の骨にヒビ。
そして長女と次女には性的暴行によると思われる女性性器損傷、裂肛の痕跡も確認しています。
私が買った時には本当にボロボロで・・・ん?」
武雄が周囲の険悪な雰囲気を感じて見回す。
ブリアーニは苦虫を嚙み潰したような顔をさせながら聞いている。
「あ~・・・そういえばカールラの所の話は一部にしか言ってなかったか。
おい!お前達!殺気を抑えろ!
キタミザト殿がしたわけではないんだ!むしろその一家を保護した側だ。」
ヴァレーリが部下達を窘める。
「「「大変、失礼しました。」」」
皆が頭を下げる。
「はぁ・・・まったく・・・
ちなみにキタミザト殿、その話、アズパール王にしたのか?」
「はい、しました。
王都で陛下、王家、各局長、各局幹部、騎士団幹部・・・国の中枢にいる人材達の前で報告しましたね。
それでウィリプ連合国が我が国に対し宣戦布告する可能性が大とも報告したら。」
「その後の展開が楽しそうだなぁ。」
「全会一致で対ウィリプ連合国との開戦必定となって、ただいまアズパール王国は『絶対にウィリプ連合国には負けん!』とやる気満々で対応を検討中です。
なので、王城から私には『当分の間、対魔王国の方に注力は出来ないから魔王国を刺激しないようにするなら好きにして良いよ』とお墨付きを貰っています。」
武雄が楽しそうに言う。
「それで、魔王国に遊びに来るキタミザト殿もどうかと思うがな?」
ヴァレーリが呆れるのだった。
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