第2064話 敵の情報網は潰すべき。(首都から敵を誘い出そう。)
武雄がしたい事を説明した。
「・・・キタミザト殿、貴殿が敵に居なくて良かった。」
ヴァレーリがしみじみと腕を組みながら頷いていた。
他の幹部達も頷いている。
「出来る出来ないはなしで・・・と言ったから提案してみたのですけど。
実際に私は領地持ちではなく、数十名の部下しか持たない研究所の所長ですから大規模に兵を動かす、このような作戦の実施は不可能ですけどね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「はぁ・・・アズパール王はキタミザト殿に領地を与えたいと言っていなかったか?」
「言われましたけど、断りました。
領地運営なんて大変そうだから、研究とかしていたいと言ったら即日に近い形で研究所を与えられて、子爵位も与えられ越境して離反しちゃダメと言われました。」
「だろうな・・・アズパール王も危機感がしっかりとしていると見える。
それにしても・・・デムーロ国の兵士を関に集めると同時に首都に繋がる橋を2つとも落としてしまうと考えるとはな・・・。
これでは前線の詳細が入ってこないだろう。
関が攻められたとの情報が無いまま、数日後に我らが首都の城門前に現れるか・・・なるほど、良い案だ。」
ヴァレーリが唸る。
「それにキタミザト殿の川の上流に大量の水を溜めて一気に流すという・・・えーっと、人工湖の決壊というのは中々に奇抜であり、町から離れている地での作業ですので先行しての秘匿作業もしやすいと思われます。
それに壊れる事が前々からわかっているのなら、仮設の橋の準備をして進軍が出来るのも利点です。
現地で一から作るよりも早く復旧出来、工程に組み込めます。」
幹部が言ってくる。
「まぁ・・・実際は川を堰き止めるというのは難しいですけどね。
流れている水に堰を作るというのはたぶん出来ませんよ。」
武雄が言う。
「ふむ・・・それほどまでに水というのは強いという事か。」
ヴァレーリが頷く。
「単純に水は重しみたいなものですからね。
溜まれば溜まるほど、押さえている板等に負荷がかかるんです。
なので、やり方としては支流を横に作り、大きな溜池を用意し水を溜める。
それを数個用意して同時に流すという所でしょうかね。
山というのは斜面がありますからその斜面を利用し、溜める量が増やせますが、押さえている物は水量に比例して分厚く、頑丈にしないといけません。
その辺の工事費用がどうなるかですね。
あとは破壊力を増す方法は丸太を一緒に流す事ですかね。
そうすればそれなりの速度で衝突してくれますから悪くても半壊には持ち込めます。
あとは橋が石なのか木材なのかによって水量が変わると言う所ですかね。」
武雄が言う。
「ふむ・・・面白い意見だな。
これも一考に値するか。」
ヴァレーリが頷くのだった。
「さて・・・これで主戦力の侵攻方法は出しましたね。」
「キタミザト殿、まだやるの?」
ブリアーニが聞いてくる。
「まだまだ兵士達に危険が及んでいますよ。
・・・首都の2000名をどうするか・・・あ・・・魔王国側の関に1個軍をお願いしますか。
ダニエラさん、5軍の中で一番足が遅いのは?」
「そうだなぁ・・・あ、上司としては全てが早いぞと言ってやるのが務めだろう。」
ヴァレーリが言う。
「・・・そんな建前はいりませんよ。
それに私が聞いたとて大した情報の漏洩にはなりませんよ。
どの軍でもアズパール王国側にとっては脅威なんですから。」
「つまらんなぁ・・・そうだなぁ・・・。
第1軍は我のお供も兼ねるから押し込む力は強い、第2軍は巡回や地方領の戦闘に派遣されるので攻撃力はそもそもあるが騎馬での移動は迅速に行うな。
第3軍は主に橋の修繕や他軍の設営で力を発揮する戦闘というよりも前線での後方任務だ、第4軍はワイバーンを使い上空の機動戦と個々の兵士が潜入を得意とするが、全体的に最速の移動をする。
第5軍は大火力の魔法具を使用する魔法師軍団だが、他の王軍からすればちょっと遅いか。
キタミザト殿ならどれを持って行く?」
ヴァレーリが逆に武雄に聞いてくる。
「・・・第1、第2、第3軍は先程の主力ルートを進んでもらいましょう。
第5軍には開戦4日前にボナ子爵領側の関の前で2000名を展開してください。
他の大隊は少し相手から見えない所で待機をして貰います。」
武雄が考えながら言う。
「開戦4日前か・・・ブリアーニ王国側の関にくる補充兵3000が到着する頃だな。
関での情報はどんな国でも領主や首都に1日で伝わるだろう。
となると、首都では大慌てになりそうだな。
第1軍指揮官、どう思う?」
ヴァレーリがフレッディに聞く。
「そうですね・・・焦るでしょうね。
迎撃をする為にブリアーニ王国側に向かわせ今頃対峙しているのです。
対峙している最中での転進は味方の士気に関わります。
キタミザト殿の目論見通り、首都から500名もしくは1000名の派遣がある物と思います。」
「いや、これが罠だと思い、急報に際して兵士を派遣しないという指示をするのなら、万が一、我らを退けても国内での信用は下がると考えるのが普通と思われる。
となると少なくとも1000名、こちらで少しでも勝ちを付けたいと思うなら1500名の派遣になると予想します。」
他の幹部が言ってくる。
「・・・ものの見事にキタミザト殿の予想通りに敵は動いてくれそうな気配はあるな。
これで首都には500名か1000名が残っている。
第5軍には相手の意識を引き付けるだけ引き付けさせるか。
ちょうど長距離の魔法でおちょくれるしな。
首都に戻らないといけないと思わせない程度には攻撃をするのに丁度良い。
その間に主力が首都に近寄っていけば良いだけだしな。」
ヴァレーリが言う。
「・・・ちなみにダニエラさん、ワイバーンて何人乗れるんですか?」
武雄が聞いてくるのだった。
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