第2060話 なかなか見つからない。(ハルバードとレシピ。)
「ナイフに、小物入れに・・・これはカーテンか?いや厚手のテーブルクロスというのもあり得るか。」
ヴァレーリが机の上に集められた土産物候補を見て言う。
「ダニエラ、やっぱりこれ金の糸が入っているわね。」
ブリアーニがヴァレーリがカーテンかテーブルクロスと言った布をジーっと見ながら言ってくる。
「そうなのか?」
「紋様の縦のこのラインでね。
裏側も見たけど金の糸を使っている箇所はあるわね。」
ブリアーニが布を持ち上げながら言う。
「金の糸の刺繍をしたカーテンに覆われた部屋か。
捨てるまでにはいかなかったから倉庫に入れて使わずにという所か。」
ヴァレーリが呆れる。
「今の技術ならもっと豪華に出来るでしょうから初期の頃の作品なのかも。
その当時の魔王国王は好きだったから買ったのかもね。」
「使わないのならないのと同じだ。
まぁこのぐらいの刺繍なら街中でも同じ物は手に入るか。」
「そうね。」
2人が「これは土産にはならないか」と思うのだった。
「さて、ビエラとミアは何かあったか?」
ヴァレーリがビエラ達に声をかける。
「あ~?」
「ダニエラ様、これは斧なんですか?」
ビエラとビエラの肩に乗るミアが立てかけられているハルバード(槍斧)を見ながら言ってくる。
「それは・・・ハルバードか。
槍でもあり、斧でもあり、鉄棒でもあるな。
要は近接戦闘においての苦手距離をなくす武器だ。」
ヴァレーリが2人に近寄りながら言ってくる。
「「へぇ~。」」
「うちの兵士達も使うぞ。
通常は柄の部分は頑丈な木で出来ているのだが・・・これは柄も金属だし、今使われている物より少し長いな。。
これだと相当の重量があるはずだがな。
どれ。」
とヴァレーリがヒョイと持ち上げる。
「重いな。
・・・ほぉ、バランス良く出来ていて少しの振りで持ってはいかれない。
良いハルバードのよう・・・だ?」
持ち上げたと同時に軽く振って感触を確かめてから立てかけてあった場所に戻した際にヴァレーリが何かに気が付く。
「あ~?」
「どうしたのですか?」
「・・・これ初代王の武器だな。
それにしては使用感があるが・・・戦場用か訓練用か?」
ヴァレーリが立てかけてあった壁に貼られていた紙を見ながら言う。
「あ~?」
「ふむ・・・流石に初代王の武器はあげられないな。
ビエラが使いたいならこの街の武器屋か武具屋で買えば良い。
この時代のより性能も良い物があるだろう。」
「あ~。」
ビエラが頷く。
「へぇ~初代のかぁ。
骨董品ね。」
ブリアーニもやって来る。
「ダニエラなら扱えるんじゃない?」
「まぁ、このぐらいなら何の問題もないが・・・ふむ・・・初代王のか。」
ブリアーニの言葉にヴァレーリが軽く考える素振りをする。
「ダニエラは御前試合では剣だった?」
「ん?ロングソードだな。
だが、あれは試合だからだ。
戦争ともなればロングソードを背に、腰にショートソード、右手にハルバードだろうな。」
「わぁ、重装備。」
「多対戦闘中に一々、後方に戻るのも面倒だからな。
使えなくなったらさっさ手放して次の武器に持ち替えないと命が危ない。
それに3種類持っていれば、どんな敵が現れてもとりあえずそれなりの時をその場で耐えていられるだろう。」
「流石、御前試合の覇者ね。
武器は選ばずって所か。」
「剣と槍はなんとかなるが、弓は上手く出来なかったな。
我はあくまで近接戦闘が主なんだよ。
カールラは弓か?」
「そうね、ナイフとショートソードは使うけど・・・どちらかというと弓で木の上から狙っている方が上手いかも。
まぁ私達は森の中の戦闘を想定して訓練しているからかもね。」
「それはそれで頼りになるな。
昔からなのか?」
「そうね、ブリアーニ王国建国時からそんな感じよ。
ほら、今は蟲がいるけど、大昔はあの森が主戦場だったし。」
「そうだったな。」
ブリアーニの言葉にヴァレーリが頷く。
「キタミザト殿は何か見つかったか?」
今度は武雄の下にヴァレーリとブリアーニがやって来る。
「キタミザト殿は古書を見ているのね。」
ブリアーニが言ってくる。
「美味しそうなレシピがあればと・・・」
メガネをかけた武雄が本を見ながらそんな事を言ってくる。
「キタミザト殿、それは子供達の土産なのかな?」
「郷土の美味しい物を再現してあげようと思ってですね。」
「現物支給なのか。
だが、現状の王城があれだからなぁ。
大したものは無いと思えるのだが。」
「まぁ・・・美味しそうなのは発見できませんね・・・」
武雄はそう言いながらも本のページを捲っている。
「ん?サラダ?・・・香草みたいですね。
ダニエラさん、ここに書かれているのはわかりますか?」
「ん~?・・・んー・・・2個ぐらいしかわからないが、ここから南に行った際に書かれた2つの草は採った事があったな。
だが・・・薬草としての採取だと思ったぞ?
随分と青々としていて、食しても苦そうだという感じだったな。」
「一度食べてみないとわからないかもしれませんね。
王城の料理人に渡しておきますからその内ダニエラさんも食べられそうですね。」
「あぁ、あまり乗り気はしないが、出たら試そう。」
ヴァレーリが渋々といった顔をさせて頷くのだった。
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