第2059話 誰も成りたがらない国王という職務。(古地図くれるって。)
魔王国の廊下。
大広間を見学した武雄達が次なる見学場所に向かって歩いていた。
「いや~・・大広間は凄かっただろう?」
ヴァレーリが先導しながら言う。
「ええ、ですが、『王が座る椅子に座ってみたら』というのは誘惑としては怖いですね。
座りはしませんでしたが、関係ない人が見ていたら大事でしたよ。」
武雄が苦笑しながら言う。
「ほんと、座らなくて正解です。」
ブリアーニも呆れながら言う。
「カールラも座っても良かったんだぞ?
誰も見ていないんだ、構いはしないだろう。」
「そんな誘惑には惑わされません。
そんな事をしたと発覚したら我が国が滅んでしまいますよ。
あの席は唯一無二の魔王国の王しか座れないんですから。」
「見晴らし良いんだよなぁ。
味わってほしかったのに。
各指揮官も領主達も誰も座りたがらないんだよなぁ。」
「「当たり前です。」」
武雄とブリアーニが言う。
「・・・その席への敬意は必要だと思うが、『あの席に座るとこう見えるんだぁ。うん、なろう国王に!』とかの目標を与えたいと思うんだよなぁ。
やる気があるならその者に後を託せば良いだけだから後継者で悩まなくて済むし。
敬意だけでは後継者は生まれないだろう。」
ヴァレーリが言う。
「ダニエラ、そんな簡単に行かないんじゃない?」
「・・・あの席に座ったという経験は大事だと思う。
再びここに座るという具体的な目標になるんだからな。」
「それは子供の時の話じゃない?
ある程度の地位にある者なら野心があるなら上を目指すと思うわよ?」
「・・・キタミザト殿、どう思う?」
ヴァレーリが武雄に聞いてくる。
「さぁ?・・・国王や領主に関心が無い私としては傍観者を気取らせて貰いますが・・・
子供達だって皆が皆あの席に着いたら国王になりたいと思う訳ではありません。
具体的な目標でも野心でも国王の地位に就きたいと思う者と思わない者がいるのは当然ですね。
成りたい者に就かせるのは良いですが、資質があるかどうかはまた別です。
軍団を率いたから、領主をしていたからといって国王の職責が担えるかというのとは違うと思います。」
武雄が答える。
「まぁ・・・そうだな、我はどれもやった事ないしな。」
「先王は見る目があったのでしょうか?」
武雄が聞く。
「ないと思うぞ?
御前試合の副賞に王位を付けて我がたまたま勝ち残ったんだ。
狙ってやったとは思えないな。」
「そういえばソルミさん達が王都で会った際に言っていましたが、ダニエラさんは歴代最高の国王と呼ばれているらしいですね。」
「え?・・・そうか、ふーん・・・今度、特別休暇と少しだが報奨を与えてやろう。」
ヴァレーリが嬉しそうに頷く。
「ほんと、ダニエラは慕われているわよね。」
「・・・その慕われている王が訓練場に遊びに行くと皆が絶望した顔をしやがるがな。」
「ダニエラ、やりすぎなのよ。」
ブリアーニが呆れながら言う。
「・・・はぁ・・・と、着いたな。」
ヴァレーリが「特定第2倉庫」と書かれている扉の前に止まる。
「「倉庫?」」
武雄とブリアーニが首を傾げる。
「ああ、ここは曰く物の・・・違った、使い道もなく、大した値打ちもない宝物庫だ。
さっき、我らが大広間で遊んでいた時にタローマティを各所に行かせて確認を取ってある。
ここで子供達向けの土産を探そう。
探すついでに簡単に軽く整理してくれる事が条件だそうだ。」
「あ~♪」
「何があるんですかね?」
ビエラと肩に乗るミアがワクワク感を出している。
「じゃ、突入するか。
タローマティ、開けろ。」
「はいはい。」
そう言って実体化したタローマティが鍵を取り出して開錠し室内に入るのだった。
・・
・
「ん~・・・不揃いのナイフばかりだなぁ。」
とりあえず、ナイフを探して、机の上に置いていっているのだが、全部が全部形が違っていた。
「宝物庫に同じ形ばかりあってもおかしいと思いますけどね?」
「ふーむ・・・カールラ、どうした?
なんだか巻物を見ているみたいだが?
て、小さいな!」
ヴァレーリがブリアーニの下にやってくる。
「ん?随分古い地図があってね。
これ600年くらい前じゃない?コラットル王国が載ってるし、アズパール帝国になってるわ。
町や村の配置が今と違うし、こんな時代もあったわね。」
ブリアーニがA3用紙程度の大きさの地図を見ながら懐かしそうに見ている。
「随分古いのが出て来たな。
あ・・・なんか落書きもされているな、これは宝物庫には置けんかぁ・・・
まぁ今になっては使う事は無いから問題ないか。あ、そういえば歴代の大きいのは確か宝物庫にあったなぁ。
領地、領主等が変わる際に一新して何枚か宝物庫に残すんだよな。
残りのはこっちに置かれるんだろうな。」
ヴァレーリが言う。
「・・・それ貰えませんか?」
武雄が2人を見ながら言ってくる。
「こんな古いのが?
アズパール王国の宝物庫にもあると思うぞ?」
「それはアズパール王国が中心に書かれた地図ならばですよ。
ここにあるのは魔王国もしくはその前身である共同戦線時代の物でしょう?
それに小さいのであればコレクションとして楽しめそうですよね。
確かヴィクターに聞きましたが、魔王国建国は550年くらい前なのですよね?
そのくらいの時の同じ大きさの地図は無いですかね?
そういうの見比べると面白いですから。」
「ふむ・・・ならキタミザト殿の土産は古地図だな。」
ヴァレーリが頷くのだった。
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