第2056話 魔王国のヴァンパイアの実態。(お小遣い予算は第1軍指揮補佐官が握っている。)
「魔王国内には多種多様な者達が住んでいるのだが、ヴァンパイアは希少な類だな。
な、フレッディ。」
「そうですね。
数にすれば・・・真祖は10名程度、吸血されて吸血鬼化した者は100名程度でしょう。
それと真祖のヴァンパイアになるのは人間種が一番なりやすいですね。
作る者達から言わせると一番弄りやすいのだそうです。」
「まぁ、キタミザト殿ならわかっていると思うが、この国には人間種は住んでいない。
それでも売られ、強制的に改造を受けた者の中で適才がある者がなるんだが・・・この世の地獄を味わった。」
「想像を絶する物ですね。」
武雄が言う。
「あぁ、だが同時に何かを悟るんだよ。
・・・と、その辺の事は話すような事ではないな。
ちなみに我らを改造したのはこの国のヴァンパイアではない。
で、我が国ではヴァンパイアはバラバラに住んでいるんだ。
あっちこっちの村や町に居たり、森の中とかにも住んでいるんだが、基本的に領地や国家といった考えはないんだ。
どちらかといえば研究者だな。
自身の欲求のまま何かしている。
吸血されて吸血鬼化した者は吸血した真祖もしくはヴァンパイアの近くに住んでいる。
まぁ村っぽい物を作っているのだろう。」
「・・・血を飲むのでは?」
「吸血行動の事だな。
欲求自体はあるが、血の代替品を定期的に取っていれば欲しくなる事はない。
パイプや酒と同じで必要不可欠という訳ではないな。」
「自我をなくして誰かを襲うというのは?」
「・・・キタミザト殿、それは本か何かの受け売りだな。
過剰に恐怖を煽っていると言わざるを得ない。
ヴァンパイアは血に飢えていて、我慢の限界を超えると理性を無くし人々を襲うというのは話の中だけだ。」
「事実は違うと?」
「あぁ、全然違う。
単に集中力が無くなり、食欲不振、喉の渇きと頭痛がする。
あとは個別に何か出るようだが・・・指揮官補佐はどうだ?」
ヴァレーリがアンナローロに聞く。
「私はあとは異常に発熱と発汗しますね。
指揮官殿は?」
「私は発汗等はしませんが、手先の震えですね。」
フレッディが答える。
「といった具合だな。
まぁ体調不良になるんだ。
なので定期的に血の代用品を摂取しておけば問題ない。」
「そういう物なのですね。」
「ああ、そういう物だ。
なので特にヴァンパイアが住んでいても大した問題にはならんし、問題が発生すれば対処している。」
「へぇ~。」
「そして、このアンナローロは一番若いヴァンパイアだ。
まぁヴァンパイアになってしまったのは我の所為でもあるんだが・・・」
「陛下の所為ではございません。
あれらが頭がおかしいのです。」
アンナローロがヴァレーリに言う。
「ふむ、実はですね、アンナローロはダニエラ様を模して造られたのです。」
フレッディが言ってくる。
「はぁ・・・模して?」
「我は史上最強のヴァンパイアとして改造されて成功してしまったんだ。
まぁ我の製作者は殺してやったが。
その成功を目の当たりにした他のヴァンパイアが同じことをした。
で、出来たのが。」
「出来損ないの私です。」
アンナローロが堂々と言う。
「・・・うん、胸糞悪いですね。」
「まぁ気持ちの良い話ではないな。
で、アンナローロは成果が乏しいとの事で生み出したヴァンパイアに放逐されたんだ。」
「放逐?
あの~・・・王軍の幹部ですよね?」
「あぁ、アンナローロは指揮官補佐という役職だが、軍の補給、荷駄、設営といった事務的な事をしているんだ。
まぁ非戦闘系だな。」
ヴァレーリが言う。
「私戦闘はからきしで・・・頑丈だけが取り柄なんです。
それで魔王国軍に入って支援部隊に入ったらトントントーンと出世しました。」
アンナローロが言う。
「・・・アンナローロ殿は39歳と言われましたけど・・・
軍には何年?」
「えーっと・・・指揮官殿、私20年ですよね?」
「もうそんなになるのですね。」
「・・・お幾つの時にヴァンパイアに?」
「16歳ですね。
放逐されて、色々と転々としていたら魔王国で兵士の採用試験があったので受けたら入れたんですけど。
3年目で兵士から荷駄の方に異動でした。」
アンナローロが言う。
「新人研修終了してほぼすぐだな。」
ヴァレーリが言う。
「・・・ヴァンパイアって強いんですよね?」
武雄が聞いてくる。
「あぁ、普通はそこらの兵士より強いぞ。
アンナローロは逆に希少性が高い。
だが、軍に入って持ち前の器量で支援部隊の仕切が上手いのがわかってな。
どんどん昇進した。」
「ちなみにからきしと言っていますけど、現状でアンナローロもそれなりに戦闘で使えるんですけどね?」
「なに?その報告は知らなかったな。
アンナローロ、これが終わったら訓練場に行くぞ!
我とちょっと模擬戦をしようか!」
「私はまだ肉塊になりたくありません。
ですので、全力で拒否します。」
アンナローロがジト目で言ってくる。
「くっ・・・そこまで強くはせん。
ちょっとだけだよ。」
「陛下の戦闘でのちょっとは信用おけませんからね。
拒否します。
それでもと言うのならお小遣い予算の増加案はなか」
「悪かった!指揮官補佐、我が悪かった!
お小遣い増やしてぇ~。」
「まぁ、見ての通り、各軍の指揮官補佐達は強いのですよ。」
フレッディが武雄に言う。
「まぁ、今何事もなく生活が出来ているようで何よりですね。」
「はい、私は魔王国に来て良かったです。」
アンナローロが頷くのだった。
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