第2055話 実習中です。(やっぱり料理人は飲み込みが早い。)
魔王国王城内の厨房。
ヴァレーリとブリアーニからレシピ費用を貰い、実践する事になった。
厨房に着いたらエルフの料理人達が率先して武雄の指示を聞きながら各自具材を用意して行った。
「今、説明した通り、卵を先に入れてから炊いた米を入れるという方法と先にご飯に卵を入れ、混ぜてから炒めるという方法があります。
大まかな手順は先ほどの通りですが、実際に見てみないとわからない事もあるでしょう。」
「「「・・・」」」
魔王国、ブリアーニ王国の調理人が真剣に武雄の話を聞いている。
「では、実践したいと思います。
まず、油を入れますが、オークの油、ポクポク肉の油でも可能です。
今回は日常使われている油を使用します。」
武雄が用意された具材を使って調理を始めるのだった。
厨房の隅で大人しくしている4名はというと。
「ねぇ、ダニエラ。」
「ん?なんだ?」
「うちの料理人はわかるんだけど、魔王国の王城の料理人が真剣に聞いているのが不思議。
教えたのプリンだけでしょう?」
「・・・あぁ、そうだな。
まぁ・・・確かにキタミザト殿とは初見の者達ばかりだが・・・キタミザト殿が人間だからと馬鹿にする者はここにはおらんよ。
なにせ多種族の胃袋を預かっているんだぞ?
種族に偏見はない。」
「素晴らしい事で。
で?」
「ウォルトウィスキーとウスターソースも作り出したと言っておいた。
ついでに『次は何を教えようかなぁ』と我がレシピを見ながら皆に言ったのでな。
その影響じゃないか?」
「・・・ウォルトウィスキーとウスターソースってキタミザト殿が作ってないわよね?
見つけたとか言ってなかった?」
「言ってたな。
だが、我が国では作れんのだ、そして窓口はレバントおば様とシモーナさんを経由してのキタミザト殿のみ。
となれば、魔王国相手の希少な物の輸出はキタミザト殿が一手にするのならキタミザト殿が作ったようなものだ。」
「ん~・・・良いのかなぁ?」
「まぁキタミザト殿かその協力工房の者がこちらに来て支店でも出してくれれば良いんだが・・・
ま、当分は無理だろう。」
「それはそうだけど・・・
まぁ、良いか。」
「大して気にする事ではない。
で?良い匂いがするのだが・・・」
「するね。」
「「・・・」」
ヴァレーリとブリアーニが見つめ合う。
「あ~?」
「そうです、ビエラ、私達は試食を待つのみです。」
「「そうだね。」」
ミアの言葉に2人も大人しく待つのだった。
・・
・
「出来ました!キタミザト子爵!」
「こちらのカルボナーラも出来ました!」
厨房の料理人達が武雄に言ってくる。
「うん・・・美味しいですね。
では、1人分が上手に出来ましたから今出来た方が指導をしながら交代で1人分を作っていきましょう。」
武雄が出来たばかりの炒飯とカルボナーラを1口食べながら言う。
「「「「はい。」」」」
料理人達が今使った用具を洗う者、次の1人分の具材を用意する者、次に試作するので手順を確認する者等々動き出す。
「さて・・・」
武雄が試食を待っている6名を見る。
待っている間になぜか厨房の端っこにテーブルと椅子が用意され、6人で何やら雑談にふけっていたようだった。
「キタミザト殿、ご苦労様。
うちの者達は上手く出来るだろうか?」
「キタミザト殿、ありがとうございます。
たぶん、修練を積んでくれれば美味しい物が出来ますよね。」
ヴァレーリとブリアーニが労ってくる。
「はい、皆さん、ちゃんとメモを取って一言一句逃さないようにしていましたね。
あとは感覚の問題でもあるので作り込んでくれたら幸いです。」
武雄が2人に言うと「それもそうだな」と2人がホッとした顔をさせる。
「あ~?」
「主~、試食は出来ないのですか?」
ビエラとミアが試食を待ちわびている。
「大丈夫ですよ、これからたくさん来ますからね。
まずは今作ってくれた2名の分を1口食べましょう。」
「「はーい。」」
2人がフォークを持ち上げて待ち構える。
それを見ると今作られた炒飯とカルボナーラを皆の前に置く。
「それで・・・フレッディさん、来られたのですね。」
「はい、仕事が片付きましたから、私も混ぜて欲しいと思ったのです。
それと私の軍の指揮官補佐も同席します。」
フレッディが隣の女性に目線を送る。
「第1軍 指揮官補佐をしております!
ジャンナ・アンナローロと申します!
よろしくお願いします!」
アンナローロが立ち上がり、武雄に頭を下げる。
「ちなみになんだがな、フレッディもアンナローロも真祖のヴァンパイアだ。
よろしくしてくれ。」
ヴァレーリが言う。
「・・・ダニエラさん、聞いて良いですか?」
「キタミザト殿なら何でも答えてやるぞ?」
「真祖のヴァンパイアってそんなにポコスカポコスカ生まれるんですか?」
武雄の言葉に一瞬、同席者たちの時が止まる。
「ポコスカって・・・ははは♪
良いな、その言い方。」
ヴァレーリが笑う。
「はぁ・・・ヴァンパイアの真祖は素体を改造してなるんだよ。
成功例はあまり多くないがな。
ちなみにフレッディは256歳、我は95歳、アンナローロは39歳だ。
もっと言えばカールラは652歳だったな。
言動とかが歳に合わないよな?」
「心が若々しいのよ~。」
ブリアーニが気にしないように言うのだった。
「そういう事にしてやるか。
なら、ちょっとキタミザト殿に我らの事を言ってやるか。」
ヴァレーリが言うのだった。
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