第2052話 料理を待ってます。(チキンライスから何かを思いついたようです。)
魔王国のヴァレーリの執務室。
「おい、ちょっと待て。
なんで我の執務室なんだ?」
ヴァレーリがメイド達に聞く。
「陛下がキタミザト子爵様をお迎えに行っている間に第1軍指揮官殿にお聞きしたらこちらが良いだろうと指示を受けました。
ブリアーニ女王陛下とアズパール王国のキタミザト子爵様が同席するんだから秘密な話もあるだろうとお考えになった末のご指示です。」
「・・・そうか、考えた末なのか。」
「瞬き1回ほどですが。」
「うん、それは考えた末ではないな。
まぁ・・・良いか、散らかしたらお前たちの仕事が増えるぞ?」
「それが仕事ですので、好きなだけお汚しください。」
「そーかー・・・なら下がれ、お茶の用意もし終わっているんだろう?」
「はい、では陛下。
こちらにお湯と茶葉がありますので後はご自由にお願いしますね。
布巾は6枚用意しましたが、料理を運ぶ際にまた持って来ますから好きなだけお使いください。」
「・・・わかった。
ご苦労さん。」
「はい、では失礼いたします。
ブリアーニ女王陛下、キタミザト子爵様、うちの陛下をよろしくお願いします。」
「一言多い。」
「失礼します。」
メイド達が退出していく。
「はぁ・・・困ったものだ。」
「ダニエラ、いつもああいう扱いなの?」
「あ~。」
ため息を付くヴァレーリにブリアーニとビエラが呆れながら言ってくる。
「ビエラ、それは酷いぞ。
まぁ・・・平素はあんなもんだ。」
「そうかもね。
で・・・キタミザト殿が颯爽と立ち上がってお茶を淹れているんですが?」
「あー、キタミザト殿、我らも勝手に淹れるぞ?
こっちで招待したのに、やって貰うのもなぁ。」
「平気ですよ。
これでも精霊にお茶の淹れ方を学びましてね。
それなりのお茶は淹れられるようになっていますから。
それにこの中では私が一番下っ端ですし。」
武雄が意に介さずにお茶を淹れている。
「だが・・・って、もう淹れたのか。
すまんなぁ。」
「頂きます。」
ヴァレーリとブリアーニが言う。
「・・・こんな物でしょうね。
まぁメイドさん達には及びませんが、どうぞ。」
武雄がヴァレーリやブリアーニ、ビエラの前に用意されたティーカップにお茶を淹れて出し、ミアにリュックからミニチュアのティーカップを取り出し、お茶を淹れて出す。
そして武雄も自分のを淹れて席に着く。
「うん、なかなかに美味いな。」
「本当、キタミザト殿、お茶も淹れるのが上手なのですね。」
「まぁ、精霊に少し淹れ方を教えて貰いましたからね。
私も飲むなら少しは美味しい方が良いですし、学びました。
・・・うん、茶葉が良いと香りも味も良いですね。」
武雄が説明しながら飲んで頷く。
「お茶は温度が重要とか言ってたしな。
下手な奴は同じ茶葉を使ってもこの香りが出せないらしい。
その点、キタミザト殿はしっかりと出しているから大したものだ。
カールラ、淹れてみるか?」
「やめとく、恥をかく気はないもん。」
ブリアーニが早々に降参する。
「それはそうとキタミザト殿、レバントおば様の所でアプリコットを買うと言っていたな?」
「ええ、シモーナさんと共同で購入してとりあえず、栽培出来るかの確認をしますね。」
「うむ、まぁシモーナさんやレバントおば様はアプリコットのハチミツ漬けを作る気でいるようだが、キタミザト殿もハチミツ漬けを?」
「いーえ、そのつもりはありませんね。
ハチミツ漬けはシモーナさんから買おうかと思います。」
「??・・・何を作るんだ?」
「大した物ではありませんよ。」
「何を作るの?」
「秘密です。」
「「何を作るか怖いんだけど?」」
武雄が「梅干しは理解されないでしょう」と考え答えを言わないがヴァレーリとブリアーニが訝しがりながら問いかけてくる。
「料理研究ですよ。
まぁ、上手く出来たらお裾分けしても良いですよ。」
「「はーい。」」
武雄の言葉にヴァレーリとブリアーニが大人しく追及を止める。
「で、カールラ、料理をキタミザト殿に食べさせるとは聞いたし、許可を出して厨房も貸しているが、大丈夫なものなんだよな?」
「大丈夫、私も食べた物だから。
チキンライス教えて貰ったでしょう?
あれをトマトを入れないで何か出来ないか考えたのよ。」
「バターライスですか?ガーリックライスですか?海鮮物を入れてピラフですか?」
武雄が聞き返す。
「最初のバターライスしか意味がわかりません。」
ブリアーニが泣きそうな顔で答える。
「キタミザト殿、その3つは同じ感じなのか?」
ヴァレーリが聞いてくる。
「基本はバターライスです。
それにトマトと鶏肉を入れるのがチキンライス。
ニンニクのみじん切りを入れるのがガーリックライス。
小さいエビやイカ等の魚介を入れるのがピラフ。
まぁ入れると言っても先に炒めてそこに米を入れて炒めると言った感じですが、どれも似たような物です。」
「イカって南で食べられるヌメッとした奴だな?
確か、煮込むと固くなってそれなりに食べ応えはあったはず。」
ヴァレーリが言う。
「へぇ~、そんなのがあるんだ。」
ブリアーニは感心する。
「そうですね・・・ちなみにダニエラさん、皮と背骨に当たる軟骨は?」
「確か、皮は剥いていたし、背骨は・・・真っ二つにして包丁で取っていたかな?
まぁ、下手な職人だと内臓を傷つけて大変な事になるがな。」
「・・・引っ張り出せば良い物を。」
「引っ張るのか?あれを?
ブチって行かないか?」
「どんだけ強く引っ張るんですか・・・」
武雄が呆れるのだった。
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