第2050話 鈴音の悩み。4(ラルフの仕立て屋でスニーカーの打ち合わせ。)
ラルフの仕立て屋にて。
「なるほど。」
鈴音とアリスがシリルの店で書いたラフ画をラルフの所のデザイナーが見て頷いている。
「こっちのがローカット、こっちがハイカットのイラストです。
性能的にはどちらも一緒です。
足首まであるかないかの違いです。」
鈴音が説明する。
「布で・・・これはしっかりとした布が良いでしょうね。
ですが、足首部分は動くので柔らかさも必要ですね。」
「む・・・難しいでしょうか?」
鈴音が恐る恐る聞いてくる。
「いや、簡単ですよ。
布の厚みを変えてしまえば良いんです。
足の甲から踝の下あたりまでは厚手もしくは2枚にして変形を抑え、足首部分は薄手か1枚にすれば良いんです。
足を入れる布の縁は回し縫いで強度を高めた方が良いでしょうね。」
デザイナーが簡単に言う。
「そうですか。」
「ええ、足首辺りは問題ないですが、問題は足の側面やソールラバーとの縫合方法ですね。
足に直接縫い目が当たりますからどうやれば足へ接触が柔らかく出来るかが勝負でしょう。」
「側面と底面ですか?」
アリスが聞いてくる。
「ええ、ちょっと失礼します。」
そう言ってデザイナーが靴を脱ぎ、靴下も脱いで裸足になる。
「足というのは難しいのです。
地面に着いた時と着かない時、この時、足の幅は変わってしまうのです。
革靴は実は慣れというのがあるので最初はピッタリとした物を履いていく内に、内側から押していき、革が少し伸び、広がるという物です。
なので革靴の縫い目は全て足に当たらないように作られています。
ですが、今回のスズネ殿やアリス様が書かれた物は布のパーツを縫い合わせます。
布はほぼ伸び縮みしませんから・・・
足が地面に着いた時は常に布を押しており、常に圧がかかるので少し余裕がある物がいいでしょうし、縫い目が当たる部分を少なくしないといけません。」
「なるほど。」
アリスが頷く。
「そこで・・・例えば、甲の方と先程説明頂いたインナーソールの下に縫い目を寄せてみるのはどうでしょうか?」
「それは実施した方が良いですね。」
鈴音が言う。
「わかりました。
ならそれで一度デザインをしてみます。
全体像は崩さないようにして何とかしていきたいと思います。」
「「よろしくお願いします。」」
鈴音とアリスが頭を下げるのだった。
一方、コノハとテトはというと。
「へぇ~、これが生理用品の第1号の試作品かぁ。
見た目は良い感じだね。」
テトが試作品を手に取って見ている。
「中々に出来ているねー。」
コノハが嬉しそうに言ってくる。
「形は流石にスズネがご意見番に入っていると使っていた物と似てくるのかな?」
「そこは致し方ないかなぁ。
やっぱり使用者が居るとそのイメージに沿ってしまうからね。
でも、良い感じだと思うよ。」
「後は試験だねぇ。」
「どれだけ汚さないか・・・だね。」
「まぁ初っ端から汚さないのは無理だよね。
価格は?」
「さっき貰ったよ。
えーっと・・・モニターは利益なしの原価での試供をするって。
まぁお金かかるのはしょうがないけどね。」
「ラルフ店長も思い切ったね。
普通に売っても良いだろうに。」
「満足のいく結果が出てからだろうね。
それでも薄利多売にするというのが当初の考えだからあまり変わらない金額にはなるかもね。」
コノハとテトが話し合っていると。
「失礼します。
インナーソールの試作が出来上がりました。
ま、あくまでゴムは使用せずに不織布を重ねて周りを布で包んだ物ですが。」
ラルフがコノハに試作品を持ってくる。
「ねぇ、コノハ、この店って毎回人間を超越しているくらい超スピードで物を仕上げるんだけど。」
「ねー、頼もしい限りだわ。
で・・・ほぉ、意外と滑らか。
テトちゃん。」
「うん、意外とサラッとしているね。
あとは、これに底の部分を付けて、ここの店員達が試せば良いだけだね。」
コノハとテトが試作品のインナーソールの表面を撫でながら言う。
「ミシンのお陰で試作品を作るのに時間がかからなくなってきました。
職人達もすぐに縫ってしまうんですよ。」
ラルフが苦笑しながら言う。
「失礼する。」
「失礼しまーす。」
キャロルとモニカが店内に入ってくる。
「アリス様、ご機嫌麗しく。
スズネも毎日ご苦労だな。」
「アリス様、ご機嫌麗しく。
スズネちゃんもごきげんよう。」
「はい、ごきげんよう。
キャロルさん、モニカさん、お疲れ様です。」
「お二人ともお疲れ様です。
・・・キャロルさんを店員さんは呼びに行ったのでは?」
鈴音が2人聞く。
「私がサテラ製作所に行ってたんです。
たまたまその時にここの店員さんが来て、伝言を残していったので私もついでに来ました。」
モニカがそう言うが顔には「アリス様とスズネちゃんが居ると知ってれば来なかった」とありありと見て取れた。
「あ、来ましたか。
あれ??」
ラルフが2人が入って来たのを察知して2人に近寄ってくる。
「モニカはたまたま居たんだ。
打ち合わせ終わりにこっちに寄ったまでだよ。」
キャロルがラルフに言う。
「・・・ふむ、ちょうど良いか。」
「え!?何が!?」
ラルフの呟きにモニカがビビるのだった。
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