第2040話 230日目 二重取りになっていそうですよ。(皮と木とネギ。)
魔王国の王都の宿にて。
「ん~・・・」
武雄はベッドから起きて、窓を開けて椅子に座るとコップにアクアで水を入れ、一口飲んだ後、キセルを取り出す。
「国は違えど、朝焼けは綺麗ですね。
・・・ふぅ・・・」
武雄が朝の一服をする。
遠目に小さいドラゴンが王城に向け飛んでいくのが見える。
「あれがワイバーンかな?・・・小型飛行機みたいな感じなのかな?」
「タケオ、どちらかと言えばヘリでは?」
チビパナが肩に現れて言ってくる。
「ん~・・・あれがヘリだとドラゴンは何になるんですかね?」
「攻撃型輸送機でティルトローターになってる感じです。
ヘリ同様に垂直離着陸能力を持ちながら、それを上回る高い航続性や速度能力があり、ついでに装甲は厚く頑丈で強力なミサイルが積んであります。」
「ティルトローター・・・ねぇ。
ホバリングも出来て高速移動が可能・・・ですか。
確かに、ビエラ達は高速で移動しますし、リツなんかは遠くに居てもクゥの鳴き声で近寄ってきますよね。
・・・高性能過ぎでしょう。」
「それが最強種です。」
「・・・ドラゴンロードにも会いましたけど、温和で良かったですね。」
「温和?・・・まぁお土産くれましたしね。
温和にしておきましょう。」
「ね、ちょっとした小金持ちになっちゃったかもしれませんね。」
「小金持ちではなく、大金持ちの部類ですね。
それでドラゴンの皮をどうするんです?」
「・・・どうした物かな・・・キタミザト家とエルヴィス家の主要人員用の胸当て程度は貰うとして、他は放出というのが良いでしょうね。
それで毎月のビエラへの小遣いとエルヴィス家への支払いをしていくというのが基本で、あとはリツの定住する地域の土地の購入と囲いなんかも必要でしょうね。
あ、引っ越してきたリツからも皮の提供をお願いしないと。」
「・・・タケオ、あっちこっちから費用を貰うのですね。」
「当然でしょ。
アズパール王国からは私の手当てと管理費、ドラゴンロードからはリツの引っ越し費用、ビエラとリツ、クゥからは生活費・・・各々貰います。」
「実際には少し重複してそうですね。」
「それはそれ。
まさか貰えるとは思ってなかったのですから・・・吹っ掛けたら気前よく一括でくれましたね。
有効に使わせて貰いましょう。」
「まぁ貰ってしまったのですから・・・そうですね。
で、タケオ、あの大量の皮をどう活かしますか?」
「先ほども言った通り、エルヴィス家とキタミザト家の主要な人員分、後はまぁゴドウィン伯爵とジェシーさんに卸したら後は市場に流します。」
「それが無難でしょう。」
「問題は・・・どこが一番食いつくか・・・ですかね。
ウィリプ連合国に対して使うのが一番と思うので・・・外交局辺りに耳打ちしたい所ではありますが・・・」
武雄がそう言ってキセルに葉を詰めて火を点ける。
「ふぅ・・・王家を素通りしたら後々が怖いでしょうね。」
「性能が性能ですからね。
誰もが欲しがる材質なのではないでしょうか。」
「という事は高値で売り買いがされるという事ですよね。
王都で話したウィリプ連合国から金貨を頂く戦略に使えると思うのですけどね。」
「そうすると敵国の将兵の防刃性能が良い物が出来てしまいますよ。
そこをどう説明するかによると思います。」
「奴隷に高価な防具を渡すかというのは首を傾げる事項ではありますが・・・
皆が皆、奴隷を磨り潰すまで使うのが普通と考える訳ではないという事を考えると、確かに戦争に使われると厄介ですかね。」
「ええ、外交局と話す前にレイラ達に相談が良いと思いますよ。
タケオがそう言う話をすると言えば、レイラ達が気を利かせて、重要人物が来るでしょうし。」
「陛下や宰相に直接言う訳でなく、立ち聞きさせるという事ですか。
あくまで私とウィリアム殿下方が相談する場にたまたま居合わせただけという形を取っておけば噂程度の話として検討が出来ますかね。」
「レイラはしてくれると思いますよ。」
「そうですね。
嬉々としてやってくれるでしょうね。」
武雄が頷く。
「そう言えば。
タケオ、ステノ技研から頼まれた槍の柄の部分の木材とベルテ一家から頼まれたブリアーニ王国のネギかその種の入手しなくて良いのですか?」
チビパナが言ってくる。
「あ・・・忘れてた。
槍の柄は何本だっけ・・・1小隊分20本と言われた気がする。
ネギの種は入手出来るかの確認か。
どちらもシモーナさんとレバントさんに相談で良いかな。」
武雄が灰を落としたキセルを軽く振りながら言ってくる。
「あとブリアーニ王国と魔王国のパイプの葉の輸入が出来るかの確認ですね。」
「そこはデナムさんとハガードさんの管轄ですよ。
あったとして、アズパール王国に輸入するなら私が対応しますけど、一旦、王都で検討してから私宛に発注しないといけないですしね。」
「まぁそうですね。
なら他に頼まないといけない商品はないですね。」
「ん~・・・たぶんないと思いますけど・・・思い出せないだけで何か請け負っていそうです。
皆が起きる前に一度、思い出せる範囲で箇条書きにしておきますかね。」
武雄がそう言いながら少し焦るのだった。
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