第2039話 シモーナとレバントの打ち合わせ。(王都にウスターソースが持ち込まれた。)
レバントの店。
シモーナとレバントが向かい合わせに座って打ち合わせをしていた。
「・・・おばさん、アプリコットの値段、結構するんですね?」
シモーナがレバントが出してきた見積もりを見ながら言う。
「シモーナさん、それが私の方の利益なしの値段なのよ~。
一応、それ、値切った価格よ、他国からの輸入だからね。
そのぐらいするんじゃない?
それに苗木と書いてあるし、鉢で来るのかも。」
「そうですね・・・ん~・・・5個ずつの注文ですか・・・予定よりも1個多いのですが・・・」
「それね。
それも一応、1個ずつもしくは2個ずつ買えるようにして欲しいと言ったのだけど、頑なに5個ずつ売るって引かなくてね。
特典としては5個なら直ぐに・・・正確に言えば次の日までには用意出来るそうよ。」
「それって・・・つまりは5個余っているんですよね。
売れないかもしれない商品を大量に買ったのでしょうか。」
「実は買っても苗木を買うのは少ないと思うのが普通だと思うわね。
もう少し値切ってみる?」
「ん~・・・端数切れますかね。
出来ないかもしれないですけど、予定より多く買わなくちゃいけないんです。
多少は言うべきでしょう。
端数が切れたら即決して買ってください。」
「わかったわ。
明日の朝一で行ってくるわね。」
「配分はキタミザト様と話し合います。
それと今後については、うちやエルヴィス伯爵領の土壌に合っているかの確認をしてから追加で苗木を買う事になると思います。
たぶん、3、4年はかかると思いますね。」
「3、4年で実が生れば良いんだけどね。
こればっかりは私もわからないわね。」
レバントが腕を組んで考えながら言う。
「で、アプリコットのハチミツ漬けに流行の兆しって本当ですか?」
「商隊の話では、王都の東側の領内において街中の通りに面した酒場やレストランで3軒に1軒はメニューに載っている程度には認知されているって。
この甘さと酸っぱさでワインの前と帰り際に飲むらしいわ。」
「へぇ~、そうなんですね。
キタミザト様はウォルトウィスキーで割ってましたけどね。」
「え?甘いわよ?」
「美味しかったですよ。」
「シモーナさん、お酒弱かったんじゃ・・・」
「正確には、水割りのウォルトウィスキーにハチミツ漬けのアプリコットを取り出してグラスに入れたんですよ。
薄ーくして飲みました。
それとハチミツに漬けるんじゃなくてウォルトウィスキーに漬けてみると言っていましたよ。
酸っぱいお酒ですね。」
「酸っぱいウォルトウィスキー・・・美味しいのかしら。」
「私からしたらワインも酸っぱいんですよね。」
シモーナが言う。
「シモーナさん、アプリコットの酸っぱいとワインの独特の酸味は一緒じゃないわよ。」
「飲めない者からしたら一緒ですよ。
まぁキタミザト様のお陰で私達の方からはハチミツ漬けではなくて、ウォルトウィスキー漬けを納入出来るかもしれません。」
「それ良いわね!
是非して頂戴!
うふふ、魔王国内でウォルトウィスキーの販売だけじゃなくて、その亜種であるアプリコット漬けも手に入るなんて・・・これは良い商売になりそうね。」
レバントが言ってくる。
「まぁ、アプリコットが私達の所に根付くかという事はありますけどね。」
「何としても上手く収穫出来るようにしてね!」
「努力はしますよ。
あ、それとキタミザト様からウスターソースが2.5樽分、中濃ソースが0.5樽分来ました。」
「・・・あれ?4樽では?」
「1樽は私がファロン子爵領で売りますからね。
残り3樽分を王都に卸しますよ。」
「うぅ・・・仕方ないかぁ・・・」
レバントがガッカリしながら言う。
「あ、ちなみにおばさん、1樽当たり小樽が525個分ですよ。」
「え?そんなに?」
「はい。
で、小樽は300ml入りますけど・・・ちなみにエルヴィス伯爵領では小樽の販売価格は銅貨18枚、50mlの継ぎ足しは銅貨2枚でしたが、輸送費用を考えると私達の所では小樽の販売価格は銅貨30枚、50mlの継ぎ足しは銅貨4枚でする事にしました。」
シモーナが言ってくる。
「輸送費用かぁ・・・となると王都ではさらに高くしないとダメね。
シモーナさんの取り分も含めて見積もりと納入書と請求書持ってきた?」
「はい、一通り。
こちらです。」
シモーナがレバントの前に各書類を置く。
「どれどれ・・・ふーん・・・輸送費用が意外とかかるわね。」
「そこは致し方ないですよ。
私の方の販売価格も実際の所、エルヴィス伯爵領での販売価格に輸送料を足した感じで、利益は銅貨数枚しかありません。
キタミザト様の話では多くを売って利益を確保する事業だそうで。
品質第一で製造し、常に多く買われるようにお客様の信用を勝ち取って行かないと継続出来ないので、生産者には常に品質を言っていると話してくれました。」
「なるほどね。
薄利多売という事ね。
なら、私もそうした方が良いわね。
まぁ基本的にはダニエラちゃんとカールラさんに1樽ずつ販売かなぁ。
残りのウスターソースと中濃ソースは私の店で出す事にするわ。
どの店に出そうかなぁ~。」
「当面はこの比率で持って来ますからね。」
「わかっているわよ~。」
「はぁ・・・あの美味しさがまた味わえるんですよね。」
「そうね~、でも、流行ってしまって問い合わせが来ても現状増やせないから慎重に出さないといけないか。」
「そこが悩み処ですね。」
レバントの言葉にシモーナが頷くのだった。
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