第2037話 さて、宿に戻りましょう。(陛下より厳しい納期の仕事が来ましたよ。)
武雄達は試験小隊の面々と合流し、王城を後にしていた。
「アンダーセンさん、どうでした?」
「多種族をまとめるのは大変そうですね。
訓練も厳しい物のようです、どこに基準を置くかは相当考えられているようです。
それに聞いた所、各軍は4000名以上が在籍しているようです。
我が国よりも細かく階級が分けられているようですね。」
「まぁ大所帯でしょうからね。
トップがいちいち細かい指示を出す必要がないようにしているんでしょう。
上は全体の行動を考え、下はその行動を実現するために現場で知恵を絞るのでしょう。」
「はぁ・・・この組織的な編成は我が国も導入する必要が出て来るのでしょうかね?」
「現状の人員と組織で上手く回っているのなら無理に変える必要はないでしょう。
ですが、今よりも大規模になった場合、参考にするべきなのかもしれませんね。
実際に魔王国ではこれで上手く行っているんですから。」
「なるほど。
では、戻ったら報告書ですね。」
「ええ、『アズパール王国と魔王国においての軍務編成の比較について』とかの題目で比較してみると自分達の組織の良し悪しもわかるでしょうね。
むしろ宿に戻ったら皆に書かせて、アンダーセンさんはそれを元にまとめたら良いのでは?」
「お、それは良いですね。
そうしましょう。」
アンダーセンが頷く。
周りの試験小隊の面々は嫌な顔をしている。
「あ!キタミザト様、居ました!」
「ん?」
武雄が声のした方を見るとシモーナが居た。
「いや~・・・会えてよかったです。
ラングフォード様達はもう宿に入られましたよ。」
「そうでしたか。
何軒行きましたか?」
「えーっと、青果屋と雑貨屋ですね。
今日はこのぐらいにしようという事で宿に向かいました。」
「初日ですからね。
疲れもあるでしょう。
なら我々も一旦宿に行きますか。」
「はい、お願いします。
それと夕食や雑貨屋は今の所、指定の所でお願いします。」
「指定ですか?」
「はい、レバントおばさんの顔見知りの所です。
私はおばさんの店で打ち合わせをしますので、今日は知らない所には行かないでください。
あと、ちょっとした買い付けなら宿の者に言えば、買いに行ってくれるようおばさんが依頼していますから使ってください。」
「わかりました。
なら、今日はこれまでですね。」
「はい、なら宿に案内します。」
シモーナが先導するのだった。
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第1軍指揮官執務室。
ラングフォード達の付き添いをしていた指揮官補佐が入ってくる。
「戻りました。
・・・陛下、いらっしゃったんですか。」
ソファに座るヴァレーリを見つけ声をかける。
「おう、ご苦労だったな。
どうだった?」
「青果屋と雑貨屋に行って色々と見ておいででした。
いくつか購入しておいででしたね。
レバント殿が店主と話をしていましたので、私達が出るような事はありませんでした。」
「そうか。
何か輸出入に繋がれば良いな。」
「はい。
で・・・第1軍の指揮官殿が項垂れていますが・・・」
指揮官補佐がヴァレーリに聞いてくる。
「あぁ、我らで話し合った事を伝えに来たんだ。
議事録も取っていたから一緒に報告したんだが・・・こうなった。
一応、非公式だからな。
各軍の幹部が見たらどこか奥底にしまっておいてくれ。」
「はぁ・・・そう言えば非公式でしたね。
宝物庫辺りにしまっておきます。
で・・・何かあったのですね。」
「簡単に言えば・・・ドラゴン達の参戦の約束を取り付けた。」
「え!?本当ですか!
凄いじゃないですか!
3・・・5体ぐらいですか?」
「15体だ!」
「おぉぉぉ!流石です!」
「うむ、思ったより引き出せたな。
だが、口約束ではあるが、初撃のみ行い、その後は輸送に専念して貰う事になっている。」
「ドラゴンが15体で・・・初撃・・・ですか?
・・・関を溶解させる気ですか?」
指揮官補佐が言ってくる。
「溶解とはおかしな言葉を使うなぁ。
いくらなんでもそこまでじゃないだろう・・・ただ単に爆発四散して更地になるだけだ。」
「いや・・・陛下もおかしなことを言っていますよ。
それに聞き忘れましたが、どの種のドラゴンが加勢してくれるのでしょうか?」
「さて・・・そこは決めなかったな。
どうせお願い出来るならレッドのみとかブラックのみとかを15体の方が良いな。」
「そうですね・・・バラバラよりも単一種の方が威力は増大するでしょうね。
ブラック以外でお願いします。」
「・・・え?ブラックで良いんじゃないか?
ブレス(炎)か魔法のフレアを集中的に叩き込めるし。」
「尾っぽに猛毒があるので輸送時に兵士が触ったら大変です。」
「そんな間抜けがいるのか?
というよりケアが出来る者が立ち会っていれば問題ないだろう。」
「まぁ・・・そうではありますけど・・・
はぁ・・・配置考え直しですね。」
「うん、それでお前らの上司が悩んでいるんだがな。」
「あ~、そうなんですか?
指揮官殿、どうしたんですか?」
「・・・ドラゴン達の参戦はありがたいが、今まで各軍と話し合っていた作戦が無に帰した・・・
一から考え直しだ。」
フレッディが顔を上げて言う。
「そうですか・・・でもまだ間に合いますよ。」
「あぁ、作戦はな。
だが・・・」
フレッディがヴァレーリを見る。
「キタミザト殿が2日くらいしか王都にいないんだ。
明日中に簡易想定を終わらせろ。
そうしたらキタミザト殿を呼んで感想を聞く。」
ヴァレーリが言い放つ。
「今日で・・・明日中ですか?」
「あぁ、キタミザト殿の意見が我は聞きたい。
じゃ、よろしくなぁ~。」
ヴァレーリが立ち上がり手を振って出て行く。
「指揮官殿・・・」
「・・・全指揮官と指揮官補佐を集めろ。
今日は夜通しで考える事になるだろう。」
「りょ・・・了解しました。」
指揮官補佐がぎこちなく頷くのだった。
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