第2032話 訓練場では。(走って戦って。)
魔王国 王城内 第3訓練場。
「走れ!走れ!」
指導役の兵士が走っている兵士達に激励を飛ばしている。
「「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」」」
走っている兵士達が必死に足を動かしている。
試験小隊の面々は顔には出さないが、内心引き気味に見ていた。
なぜなら・・・
「第3小隊走り込み終了!装備変更後!模擬戦に移動!」
「「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」」」
今走っている前の組が走り終わり、息を整えながら兵士達が訓練用のフルプレートを脱ぎ、机の上にきちんと並べると乱雑に箱に入っていた木剣を抜き、訓練場の真ん中に集合する。
「第3小隊集合!これより個別での模擬戦を開始する!
1回100秒間で4回相手を変える事。
適当に広がれ。
・・・よし、始めろ!」
「「「うおおお!!」」」
兵士達が打ち合い始める。
「・・・フルプレートで走ってから模擬戦ですか。
これが普通なんですか?」
アンダーセンが隣に居るソルミに聞く。
「はい、普通です。
第2軍は遠征を主眼に置いていて近接戦闘が主な役割ですので、体力が必要なんです。
実際の戦闘ではフルプレートだけでなく、相手や場所によってレザーアーマー等装備が変わりますが、フルプレートを着込んで動き回れるだけの体力は付けないと万が一にも後れをとりますので、着込んで走らせています。
流石に走った後にフルプレートを着込んだまま模擬戦をする事は安全面を考慮してありませんが、本番ではしなくてはいけない時があると皆が知っているので弱音は吐かずに訓練に励んでいます。」
「これは・・・辛いですね。」
「・・・まぁ、楽ではないですね。
アズパール王国ではどんな事を?」
「フルプレートを着て走り込みはしませんが、行軍と模擬戦はしますね。
私が居た部隊は小さい所帯でしたが、ほぼ全員が魔法師で構成されていて魔法の効率運用の訓練もしていました。」
「ほぉ、魔法師部隊ですか。
それは羨ましい。」
「魔王国の王軍は違うので?」
「どちらかと言えば魔法師は少ないですね。
とある領主の所は魔法師が大勢居て研究も盛んではありますが・・・王軍を見ると頑丈と体力自慢ばかりです。」
「そうなのですか。」
「ええ、発動できない者が多いのでね。」
「・・・そうですか。」
アンダーセンがなるほど、と頷く。
「お~・・・走ってま・・・フルプレートですよね?あれ。」
「ははは、あれでも軽めの方なんだぞ。
キツイのをする時はさらに両手剣を背中、両手には楯を持たせて走ったりもしているんだ。」
「わぁ、可哀想ですね。」
「いやいや、キタミザト殿、戦場ではそれぐらい出来なければ、1日中動く事など出来はしないですよ。」
武雄とヴァレーリがやってくる。
「所長、お疲れ様です。
会談は終わったのですか?」
「今は中断して小休止ですね。
ミアとビエラは家族とお話しして貰っています。
私とダニエラさんは皆さんの様子を見に来ました。
あ、ブルックさんは魔王国の書記の方と話をしていましたよ。
お互いに色々聞きたいみたいだったので許可しました。」
「そうでしたか。」
アンダーセンが頷く。
「ダニエラ様、観閲、ありがとうございます。」
ソルミがヴァレーリに言う。
「ああ、キタミザト殿の配下に良い所を見せれているかの確認だよ。
我・・・私の観閲ではありませんよ。
それで、今日は軽めなんですね。」
「通常訓練です。
ダニエラ様が来られる時はいつも・・・いつも!特別訓練になりますからね。」
ソルミが力強く言ってくる。
「ダニエラさん、何しているんですか?」
「いやいやいや、何もしていないですよ?
模擬戦に参加させて頂いているだけです。」
ヴァレーリが武雄に向かって言う。
「アリスより強いのに・・・兵士方打ちのめされているんじゃないですか?」
武雄の言葉にソルミが力強く頷いている。
「力が衰えてないかの確認は必要です。」
「兵士方の?」
「ええ。
私が衰えたのなら私個人の問題ですが、兵士達が衰えたら国力の問題ですからね。
ついでに言えば、私は史上最強のヴァンパイアらしいので、おいそれと衰えませんけどね。
なので、小隊なり中隊なりがしっかりと精強を維持しているのかの確認に来ている訳ですよ。」
「はぁ・・・まぁそれで息抜き出来れば良いんでしょうかね。」
「酒と模擬戦は気分転換に丁度良いのですよ。」
ヴァレーリが胸を張って主張してくる。
「兵士達が強靭になるわけですね・・・で、気になったのですけどあっちの木々の間に木の板で出来た少し高めの壁があったのですが?」
武雄がソルミに聞く。
「あれは全身の筋力強化及び維持用の設備ですね。
だいたい300mくらいに渡って、少し高めの板を乗り越えたり、上下に2本しか通っていない所の綱渡りとか1本通しの丸太の上を走るとか・・・全身の筋力を使わないといけない器具が多数配置されています。
走り込みと剣技だけでは筋肉の発達に偏りが出てしまうのです。
なので、全身の筋力をくまなく鍛えられる方法を模索した結果なのです。
ついでに少人数で協力して進めていく事を覚えられるのです。」
ソルミが言う。
「へぇ~・・・」
武雄が感心して聞いていた。
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