第2031話 4者会談。4(デムーロ国との戦争について。)
「デムーロ国を攻めて、奴隷は廃止するのか?」
「我が国では昔から継続的に奴隷は禁止していますよ。
それは知っているでしょう?
まぁ他国から依頼されているウィリプ連合国への輸送まで無下には扱えませんがね。」
「ふむ・・・難しい所だな。
デムーロ国と同じようにはいかないか?」
「いきませんね。
我が国に何かしている訳ではなく、向こうで取れた物をウィリプ連合国へ輸出しているだけですから。
それに今回の派兵も長年貯めた予備費を全部使ってです。
予算上もすぐには対応出来ません。」
「ふむ・・・難しいか。」
グローリアとヴァレーリが話している。
「えーっと・・・どういう事なんですか?」
武雄がチーロにコソッと聞く。
「魔王国の東側にも国があるのですが、奴隷国家で食人達なんです。
その国はデムーロ国を通じてウィリプ連合国から人間を買い、自国からは魔物を奴隷として輸出しているんです。
ヴァレーリ殿も含め魔王国のトップは国力を持って自国民に手を出させないよう牽制していた所なんですが、今回のように自国民や同盟国に被害が出るなら苛烈な対応を取ると見せつけるのでしょう。
ヴァレーリ殿は戦争嫌いなんですけどね・・・苦渋の決断をされたのではと。」
「そうなんですか。」
武雄が頷く。
「我が国は自国に脅威をもたらしたデムーロ国を併合する。
これは決定事項です。
で?グローリア殿、どうされます?」
ヴァレーリがグローリアに聞く。
「ふむ・・・事ここに至っては魔王国の方針に異議は唱えない。
また、将来を託すべき子供達が狙われたというのであれば、尚の事反対意見は我が同胞達からも出ないだろう。」
「で?」
グローリアがそこで止めようとするのでヴァレーリが続きを促す。
「・・・わかった。
我らも魔王国の一員だ。
魔王国に手を出せば我らドラゴンも加勢するという姿勢を取らないと魔王国にとっても都合が悪いだろう。
なら・・・我らのうち15名を参陣させよう。」
「ありがたい。
だが、ドラゴンだからと自由にされると国家としての体裁が崩れる。
我の指示の下で開戦時の初撃を華々しくして頂くと共にその後は物資の輸送をお願いする運びになるだろうが、よろしいか?」
「見せ場が用意されているのか・・・わかった、指示には従うよう参陣する者には伝えるし、ヴァレーリ殿のいう事を聞く者達を派遣しよう。
まぁ国王を討ち取るのはヴァレーリ殿が相応しいだろう。」
「参戦感謝する。
という訳で、キタミザト殿、我らは王都を留守にするが留守宅を狙われたくないんだがな。」
「その前の余興で我が国は手一杯ですよ。
王都まで来れるわけないでしょう・・・それに我が国の陛下は魔王国側の領土に関心はありません。
魔王国とは現状維持が望みですのでね。」
武雄が言う。
「そうか。」
ヴァレーリが頷く。
「ヴァレーリ殿、デムーロ国の国王を排するのはわかったが、その後は誰に後を任せるのだ?」
「パーニを当たらせます、そしてパーニの所にファロンを入れる予定です。
ブリアーニ王国の所には王軍 第6軍を新設し配置、パーニとファロンの後援をさせる運びになるでしょう。
ブリアーニ王国はファロン子爵領に異動して貰うことになっています。
つまりは領地移動を実施する事にしました。」
「ほぉ、エルフ達をか。
その言い分だと内々の承諾は取れているようだな。」
「ええ、エルフ達も住み慣れた土地を離れる不安はあるようですが、人攫いと蟲の襲撃で良い土地があればと思っていたようです。
反対意見は少ないと聞いています。」
「ふむ・・・随分と思い切ったな。
それにしても先ほどヴァレーリ殿がキタミザト殿に言っていた2人への何かしら仕置きというのはそう言う事か。
まぁ一見すれば新しい領地に移り住み、海に面しての海産物や奴隷商のとりまとめによる収入増加。
南には下ったもののパーニ領のすべての資産を譲り受けるという2人ともに良い待遇にも思えるが?
・・・ヴァレーリ殿はそうは思っていないという事か。」
「新たに占領し、併合した土地で地域の運営をしないといけないのは相当に苦労がかかるはず。
反発もあるだろうが、武力行使はせずに対話にて治めるのが治政という物。
それはパーニ領に入るファロンも。
2人して余計な事を考えずに領地運営をさせようと思って配置だ。
まぁ次の代までは苦労するだろう。」
ヴァレーリが言う。
「今のファロン子爵領にブリアーニ王国が来るのですか?」
武雄が聞く。
「ああ、女王には内示を出しているし、我も向こうの国民の一部とも話した。
概ね良好に受け入れられている。
まぁそれほどまでに人攫いと蟲が厄介なのだろう。
あ、キタミザト殿、案ずるな。
米の輸出分は是が非でも確保すると言っていた。」
「そうですか・・・一安心です。」
武雄がホッとするのだった。
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