第2024話 227日目 味噌の試作を計画しよう。(ニオ、君に決めた。)
ベルテ一家の屋敷の庭。
アリスと子供達、ベルテ一家がお茶をしていた。
「建てると決めると早い物ですね。」
アリスが土蔵の建設現場を見ながら言う。
今日は土台(基礎)を作っていた。
「まぁねぇ・・・そこは専門の職人達だからね。
手際良くやるわよ。」
コノハが言う。
「コノちゃん、味噌と溜まり醤油を先にする?お酒にする?」
ウカが聞いてくる。
「タケオには2つともするとは言っているけど・・・試作についてだよね。
私としてはお酒だけど、タケオ的には味噌と醤油だろうね。
うーちゃんとだーちゃんも味噌と醤油でしょう?
いなり寿司食べたいだろうしね?」
「「おいなりさーん♪」」
コノハが聞くとウカとダキニがテンションを上げる。
「でも米酢ないんだよね・・・
あれ、清酒作る過程で純米酢を入れて出来るんだけどさ。」
「コノちゃん、純米酢がないよ?」
ダキニが言ってくる。
「・・・よし、ワインビネガーを使おう。」
「「ダメ!」」
コノハの提案にウカとダキニが拒否する。
「新種の赤いおいなりさんが出来上がるわよ。」
「食紅を使ったのなら200歩譲ってありだけど!」
「ブドウの酸味が強すぎておいなりさんに合わないよ!」
「何事も挑戦よね!」
コノハが良い顔を2人に向ける。
「「違う違う!」」
「確かに、おいなりさんと言えば、普通の米か酢飯、ちらし寿司を入れるのがオーソドックスな作り方だけど・・・
ほら、赤飯は赤いじゃない?
あんな風にワインビネガーで作ってみたらどうかな?」
「いや、あれは小豆でしょうよ、それにしたって食紅代わりにワインビネガーはないわぁ。」
「そんな事言ったら握り寿司だって赤く出来ちゃうよ。
コノちゃん、普通のご飯を詰めるだけで良いんじゃない?
欲張っちゃダメだよ。」
「ふむ・・・諦めるか・・・
でも、今後の事を考えるとタケオと相談して何かお酢を作らないとなぁ。」
「穀物酢が理想だよね~。」
「日本人はみりんとお酢を大量に使うからね~。」
2人も頷く。
「まぁ、みりんもお酢も大元を辿ると同じ米と米麹だしね。
料理の相性が良いのは当たり前なのかもね。
ワインビネガーはなぁ・・・穀物酢に慣れていると個性が強すぎるんだよね~。
お試しで酢飯に使った事あるけど、10人中8人は美味しくないって言うしさぁ。」
「「わかってんじゃん。」」
「・・・お寿司にワインビネガーを私が本気で使うなんて言う訳ないじゃない。」
「いやいやいや、コノちゃん、目が本気だったよ!」
「私らが止めなかったら使っていたでしょう!」
「・・・なわけないじゃない。
冗談よ冗談。
ま、お酢の件は後日皆で協議だね。
とりあえずの目標はタケオの要望通り、味噌と醤油だね。
今の所、麹菌は6個入手しているわ。
そうだなぁ・・・3個使って試してみる?
1つくらいは当たりが引けると思うんだけど。」
「個数としてはそれで良いけど、次の仕込みまでの麹菌の保存はどうしようか・・・冷蔵庫ないでしょう?」
「一応、武雄が氷を使っての冷蔵庫の原案は作っていたよ。
でも・・・乾燥麹にして3、4か月毎に米麹作りかなぁ・・・」
「なかなかに大変な作業だね。」
ダキニが言う。
「あと大豆踏むのは、うーちゃんね。
まだ踏まないで作る方法が思いつかないんだ、だからよろしく~♪」
「うん、任せ・・・ヤダよ。」
ウカがジト目でコノハを見ながら言う。
「豊作の精霊なんだから良いじゃない?」
「熱々の大豆に足突っ込むとか何の苦行よ。
むしろ私よりコノちゃんが相応しいんじゃない?
子宝祈願で儲かるわよ。」
「味噌食べて子宝祈願とかないから。」
「そんな事言ったら味噌食べて豊作祈願はないわ。」
「どっちでも良いじゃん。」
ダキニがコノハとウカの言い合いを呆れながら見ている。
「そんな事言うなら大豆踏みはだーちゃんね!」
「絶対嫌!」
ダキニが拒否を表明する。
「もう、埒が明かないからニオに踏んでもらおうか。」
「「それだ!」」
ウカの提案にコノハとダキニが賛同する。
「ニオならちゃんと踏んでくれそうだしね。」
「体重もあるから良く潰れそうだね。」
「うんうん、ならニオにお願いしようか。」
3人はこの場に居ないニオに役割を押し付ける事を決意する。
「コノハ、えーっと、味噌というのは米だけを使うの?」
アリスが聞いてくる。
「違うわよ、大豆を使うのよ。
ニールの所から輸入ね。
タケオが事前に頼んでくれていたと思うんだけど・・・」
「あ、前に料理長が大量に大豆が来たような事を言っていましたね。
豆腐の為かと思っていましたけど、違ったのかもしれませんね。」
「大豆もある、麹もあるし、米もある・・・土蔵が完成したらこけら落としで味噌を試験的に作ろうか。」
「となると・・・精米が必要だね。
木臼でゆっくりと削るしかないかな。
コノちゃん、ステノ技研に頼めば良いんだっけ?」
「うん、そうだよ。」
「なら、今度、エンマと行ってこようかな。」
「うーちゃん、ついでにニオに大豆踏んで貰うように依頼してきなよ。」
「うん、そうだね。
ついでに言っておくよ。」
ウカが頷くのだった。
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