第2020話 226日目 シモーナと武雄で打ち合わせ。(梅・・・じゃない杏かぁ。)
魔王国 ファロン子爵領 ファロン子爵邸がある街の銀の月商店内
目ぼしい物も見終わり、夕食まで自由解散になったので武雄はシモーナの所に遊びに来ていた。
お供はビエラとミアのみである。
「キタミザト様、どうでしたか?」
「うん・・・輸出に繋がるかはちょっと検討が必要ですが・・・
まぁ、それは王都で物を見てからにします。」
武雄が茶請けに出された物を凝視しながら言う。
「輸出に繋がるのはないと思って・・・ん?あったのですか?」
「希望は薄いですがね・・・というかですね。
これ何ですか?」
「レバントおばさんからの頂き物で王都で流行る兆しがある物らしいです。
ハチミツ漬けを水で割ったんですよ。
甘くて美味しいですよ。」
「へぇ~ハチミツですか。
この漬かっている実はなんですか?」
「あ、これですか?」
「なんでも魔王国の東側の他国から持ち込まれたアプリコットという物らしいですよ。
レバントおばさんが私の所でも流行る可能性が高いから今から栽培してみたらと言ってきているんです。」
「アプリコット・・・ねぇ。」
武雄が考えるその横で。
「あ~♪」
「主!甘いし酸っぱいです!でも美味しいです!」
ビエラとミアが遠慮せずに飲んでいる。
「気に入りましたか。
ん~・・・どうしようかなぁ・・・キタミザト殿が興味を示すのなら栽培してみる価値はあるんだろうけど・・・」
シモーナが悩む。
「シモーナさんが栽培を?」
「私の意見も大事ですが、農地開拓の申請をして、事務組で話し合わないと何とも言えないですね。
商売にするならそれなりの本数を育てないといけないと思うんですよ。
どのくらいの実をつけてくれるかの確認をしないといけないですし・・・その後、漬けて管理かぁ・・・
レバントおばさんを通じて加工品を購入した方が安くあがりそうですよね。」
シモーナが言う。
「レバントさんがシモーナさんに作れと言ってきたという事は国内で栽培していないのではないですかね?」
「はい、東側の他国からの輸入となるのでしょうね。
他国から買い付けするにしても数軒の商店が中に入るでしょうからね。
私が栽培して納めた方が安いと思ったのでしょうけど・・・ん~・・・」
「頼めば種か、苗木か、木で来るんでしょうけど・・・栽培方法がわかる資料も貰えるんですかね?」
武雄が首を傾げる。
「そこは確認しないといけませんね。
キタミザト殿は実が出来たら買ってくれますか?」
シモーナが聞いてくる。
「どちらかというとシモーナさんと一緒に種か、苗木か、木を購入して栽培してみたいですね。」
「輸入されませんか?」
「どんな食材かわからないのに大量には買えませんよ。
まずは個人的に作ってみて、どうやって食べられるか確認しないといけないんですから。」
と武雄はいうが「杏なら梅と同系でしょ?梅干しならぬ杏干しが出来るかも」と思っている。
「ん~・・・なら少量輸入してみましょうか。
種や苗木ならまだかさばらないですけど・・・木は・・・」
「そこはしょうがないですよ。
その時はその時で。
とりあえず、アプリコットがどういう形態で送られて来るかですね。」
「よし、なら王都でレバントおばさんに聞かないといけませんね。」
「ちなみにですが・・・」
「はい。」
「これ・・・少し酸味がありますよね。」
「美味しいですよね。」
「ウォルトウィスキーに漬けると味が付くと思いませんか?」
「ふむ・・・酸っぱいお酒ですか?」
シモーナが首を傾げる。
「どちらかと言えば、このアプリコットのハチミツ漬けに水割りのウォルトウィスキーを入れるような感じですよ。
ハチミツにアプリコットの酸味を出させるかウォルトウィスキーに出させるかの違いですが・・・
今日はあと、寝るだけですから作ってみましょうか?」
「え?・・・ですが、ウォルトウィスキーが・・・1本しかなくて」
シモーナが心配そうな顔をさせる。
「シモーナさんの事です、家に1本くらい取っておいて残りは王都に売ったんでしょう?
大事な家のは使いませんよ。
大丈夫です、私が持って来ましたから・・・あ、シモーナさん、交換しておきます?
家に残しているのも来客用でしょう?」
「あ・・・はい・・・すみませんが交換のほどをお願いします。」
シモーナが少し頭をさげてから言ってくる。
「いえいえ、良いですよ。
あ、そうだ。
私もシモーナさんに渡さないといけないものがあったんですよ。」
「私にですか?」
「ええ、ウスターソースと中濃ソース持って来ましたよ。
と言っても、樽では大きすぎるので小さいのに小分けにして移し替えてきました。
まだ注文書はきていませんでしたが、先行して持ってきたんです。
受け取り等の処理をして貰えますか?」
「はい。喜んで。
すぐに発注書を書きます。
キタミザト様、少々お待ちくださいね。」
「そこまで急がなくて結構ですよ。
とりあえず、まずはアプリコットです。」
武雄がすぐに動こうとするシモーナを止めるのだった。
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