第2019話 お土産買ったの?(魔王国王城に来訪者予定が来た。)
雑貨屋から武雄達が出てきたところで。
「ブルックさんとフォレットさんが楽しそうに話していましたが?」
武雄が試験小隊とラック達を待ちながらブルックとフォレットに聞く。
「あ・・・聞こえちゃいましたか。」
ブルックがバツが悪そうな顔をさせる。
「いえ、何を言っていたかはわかりませんが、声が弾んでいたなぁと思いましてね。
で、何を?」
「(ステノ技研の)剣の自慢を。」
「あーそれですか。
私も宰相と陛下に自慢したら『王都では大々的に売りに出すな』と言われてしまいましたよ。」
「ですよねー。」
ブルックが頷く。
「宰相的には王都の工房群を刺激したくないからみたいです。
そのうちカタログを作って王都の宰相達に送る事を条件にお咎めなしの自由を頂いています。
あ、王都守備隊と騎士団にそのカタログは回されるようですよ?」
「え?・・・ん~・・・待っていても私の元に来るのはいつになるのかぁ・・・気になるし・・・
キタミザト殿、帰国時に買いに行こうかと思って、ブルック殿にお願いしていたんです。
戻ったら見に行きますからね!」
「うん、特に止めたりはしませんが・・・買い過ぎないようにね。」
と武雄は言うものの「フォレットさん、ステノ技研知っているよね?あ、テイラー店長は知らないか」と思っていたりする。
「それで、所長は実りはありましたか?」
ブルックが聞いてくる。
「まあまあですかね~。
少々の買い物とデナムさん達と今後の話をした程度ですよ。
ちなみにデナムさんとラングフォードさんは個人的な買い物中です。」
「キタミザト殿、次はどこに行きますか?」
フォレットが聞いてくる。
「穀物やワインを扱っている店ですね。
ここの方に良い店を紹介して貰いました。」
「なら、皆が戻ってから行きましょう。」
フォレットが言うと武雄達も頷くのだった。
・・
・
雑貨屋の前で皆が集合したのだが。
「で?何買ったのですか?」
武雄が目の前に置かれた少し大きめの布袋を見る。
「キタミザト家の家令殿にお土産です。」
「・・・ん?・・・武器屋に行ったのではないのですか?」
「ええ、武具屋に行ったのですけどね。
見つけたんです。」
「・・・何を?」
「見ればわかります。」
「・・・」
武雄が促されて袋の中を見る。
「これは・・・かぎ爪というやつですか?
それに・・・この形状だと成獣状態ですか?」
「ええ、家令殿なら使えるでしょうしね。」
「・・・いやいや、私の中では家令は文官の類なんですけど。
むしろ欲しがるのはコラやモモだと思いますが・・・そっちにお土産は?」
「「あ!忘れてた!」」
「まぁ・・・とりあえず預かっておきますね。
研究所に戻ったら渡しますからお土産で渡してあげてください。」
武雄がそう言ってかぎ爪をしまい始める。
「所長、次はどこに行きますか?」
「穀物やワインですね。
まぁワインはこの地の者達はお酒が弱くてあまり嗜まないと言っていましたから数は多くはないでしょう。
だからこそ、美味しくて高い物があるかもしれません。
見落としが無いように。
それと穀物問屋の方は軽くで結構、何も買うつもりはありませんからね。」
「「「「はい。」」」」
皆が頷く。
「じゃ、出~発。」
武雄達が移動し始めるのだった。
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魔王国 ヴァレーリの執務室。
「・・・ん?」
書類を読んでいたヴァレーリが首を傾げる。
「どうしましたか?」
タローマティがヴァレーリに聞く。
「いや・・・明日、来訪予定があったのか?」
「あぁ、それ急遽決まったようですよ?
先方から連絡が入ったようです。」
「そうか・・・我も出ないとマズいか・・・」
「当たり前です。
ドラゴンロードと妖精王ご夫妻ですよ?」
「いきなり来るのはいつもの事か。
ところで、なーんでドラゴンと妖精は仲が良いんだろうな?」
「知りませんよ。
それはご自身で聞けば良いのではないですか?」
「ふむ・・・最強と最弱が仲が良いとかわからんものだな。」
「だからこそ・・・じゃないですか?」
「・・・わからんな。」
「わかっている癖に。
それにそれこそ打算ではなく気兼ねなく物が言い合える仲という事なのではないですかね?」
タローマティが呆れながら言ってくる。
「妖精は良いとして、ドラゴン共はもう少し国に尽くさんものかね。」
「最強種は我が儘ですよね。
ダニエラも我が儘ですし。
案外、最強と呼ばれる者は自由気ままなのかもしれませんね。」
タローマティがヴァレーリを見ながら言う。
「何だ?その目は。」
「別に。」
「・・・ふむ・・・で、何しに来るんだ?」
「ご挨拶だそうです。」
「中途半端な時期にくるな。」
「なんでしょうね・・・ダニエラの退任はまだ先ですし。」
「着任の時にも来てないぞ。
フラッと来て挨拶して帰った気がする。」
「それが日常なんでしょうね。」
「まったく、最強種は面倒だな。」
「本当にね~。」
タローマティがヴァレーリを見ながら言う。
「・・・言いたい事があるなら聞いてやる。」
「別に。」
「第1軍の訓練にでも参加してくるか。」
「もうすぐ終業ですよ。」
「・・・明日の朝一にでもして来るかな。」
「はぁ・・・ほどほどに。」
タローマティがため息を吐くのだった。
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