第2018話 武器屋に行ってみよう。(実は試験小隊の面々の装備は一級品。)
ちなみに試験小隊とラック達は武器屋に来ていた。
本当は魔法具商店に行きたがったが、種族的に魔法を使えないとなっているこの地では普通の武器屋しかなかった。
「一応、ブルックとフォレットに雑貨屋の店先で所長達を見守らせているが・・・
王都ではそうもいかないかもなぁ。」
アンダーセンが言う。
「所長の意向もあってすぐ近くの武具屋に別行動で来ましたが・・・所長達、大丈夫なんだろうか。」
「所長達は輸入出来そうな物を探しているんだし、俺らがいたらのんびりとは探せないだろうしな・・・まぁ所長達がのんびりとはしていないだろうが。」
「専売局、財政局、研究所・・・集まるとヤバイ事を仕出かしそうな部局なんだが・・・」
「それ・・・所長のみが探検していても俺らは言ってそうなんだよな。」
試験小隊の面々と王都守備隊の2名が笑いながら言っている。
「さて・・・とりあえず、この地の武具がどういう物かの確認をしないとな。」
「ええ・・・でも、なーんか・・・さっきから大きい爪が目に入っているんですよね・・・
これ大き過ぎませんかね?」
ベイノンが壁に飾ってあるかぎ爪を指さす。
「大きいなぁ・・・人間の手は入りそうだが、手を入れる部分が大きいなぁ・・・手が厚くないか?」
「あぁ、確かに。
で、爪部分も重そうだな・・・殴り合いというよりも引っ搔くのか?
ん~・・・全体的に重そうだなぁ?」
皆で「なんだこれ?」と首を傾げる。
「いらっしゃいませ。
お客さん方は、ここの者ではないですね?」
店主が声をかけてくる。
「すみません、えーっと・・・アズパール王国の者なんです。
シモーナさんと一緒に魔王国の王都に向う予定なんです。」
アーリスがにこやかに言う。
「おー、シモーナか。
それにしても越境してくる人間は少ないからなぁ。
珍しい物なんかないとは思うが・・・」
「いや、この爪人間に使えるんですか?」
「ん?ああ!確かにそれは人間種用ではないですね。
それは私達獣人用ですよ。
狼形態の時に前足に付けるんです。」
「「「へぇ~・・・」」」
皆がまじまじと見る。
「まぁ・・・走り辛いんですけどね。
使っているのは一部の騎士組だけですよ。」
「ふーん・・・威力はあるんですよね?」
アンダーセンが聞いてくる。
「まぁ敵対しているアズパール王国の方に言うのも何ですが、剣で受け止められても体重をかけると・・・ね。」
「なるほどね・・・確かに上から来られると倒れてしまうし、受けてても爪の部分は食いこんできますね。」
「ちなみにその爪の部分、取り換えられるんですよ。」
「「「え!?」」」
皆が「どうやって取り換えるんだ~?」と興味津々で見ている。
「なかなかに興味津々のようですね。
こちらとしても新鮮な反応なので話したくなります・・・こうやるんですよ。」
店主がかぎ爪を手に持ち、爪部分を前に引っこ抜く。
「差し込み式ですか!」
「あ~・・・なるほど。
これなら交換もしやすいかぁ。」
皆が頷いている。
「ちなみに人間形態の時の武器というのは?」
「一般の騎士組ですと・・・こちらが多く買って頂けていますよ。」
と店主がショートソードを持ってくる。
「ん~・・・普通ですね。」
ラックがショートソードを見ながら言う。
「ははは、何が普通かというのはわかりませんが。
これが一般的な騎士組の剣になります。」
「ロングソードは使われないので?」
「ん~・・・あまり買っている方はいませんね。
それよりも狼形態で戦った方が威力はありますし。」
「確かに。
あれ・・・このショートソード・・・持ち手が少し太めですか?」
アーリスが聞いてくる。
「え?そうですか?
・・・いや、こちらが一般的な物ですよ。
他の商品も同じだと思います。」
店主が他の剣を見て言ってくる。
「なら種族的な所の違いですかね。」
「そうだな。
店主さん、防具とかも置いていますか?」
アンダーセンが聞いて来る。
「人間形態ですか?狼形態ですか?」
「あー・・・一応、両方を見させて貰っても。」
「はい、わかりました。
今お持ちしますね。」
店主は嫌な顔をせずに奥に向かうのだった。
雑貨屋の店先。
「ん~・・・男性陣は武具屋に行っちゃいましたけど。
ブルック殿、暇ですね。」
「このぐらいが丁度良いわよ。
所長の邪魔もしなくて済むし、手伝わなくて済む。
武器を見に行ってもねぇ・・・他国で買うよりもエルヴィス伯爵領で買う方が安くて良いのがありそうだし。」
「そうなのですか?」
「私も含めて試験小隊の面々が装備一式替えたからね。」
「え・・・皆さん替えたんですか?
確か、ブルック殿も長年同じの使っていましたよね?
愛着あったのではないのですか?」
「愛着があるというか、高価な買い物をしたからずっと使っていたのよ。」
「でも、それ手放したんですよね。」
「うん、エルヴィス伯爵領の武具は凄く良くてね。
性能も良くて王都の価格の半値ぐらいよ。」
「はぁぁ!?なんですそれ!」
フォレットが驚愕の顔をさせる。
「試験小隊価格という感じもするけど・・・フォレット、ここだけの話、私達が贔屓にしている店は魔法刻印が施された剣やレザーアーマーが普通に売られているのよ。」
「ま・・・まま・・・魔法刻印・・・あの!?」
「そう、王都では武器屋や武具屋にあっても高価過ぎて手が出せないあれ。
ちなみに完成品もあるけど、こっちの要望を伝えれば似た感じに仕上げる、オーダーメイドもしてくれる。」
「な・・・何ですかその待遇!?
ブルック殿、そこ連れて行ってください!」
「良いけど・・・王都で言いふらさない事が条件かな・・・所長の協力工房だし。」
「キタミザト殿のですか?」
「そ。その腕で所長の装備一式の製作、保守をしているお店なのよ。
まぁ伯爵様や騎士団の一部も利用しているみたいだけど、他の人は昔ながらの贔屓店を使っているみたいでね。
その店はキタミザト家と研究所のご贔屓店という感じかな?」
「キタミザト殿が直ぐに依頼出来るように繁盛し過ぎないように調整しているという事ですか。」
「そ。だからあまり言いふらさないでね。」
「わかりました。」
フォレットが頷くのだった。
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