第2016話 とりあえず街に着きました。(目新しい物はあまりないようです。)
魔王国 ファロン子爵領 ファロン子爵邸がある街の銀の月商店前。
「キタミザト様、着きました。」
シモーナが荷台の武雄達に声をかける。
「着きましたか。」
武雄達が荷台から降りてくる。
護衛の面々も下馬して周りを見ている。
「うん、普通ですね。」
「キタミザト様、何を言っているので?」
「素直な感想です。」
「建物なんかもアズパール王国と大して変わりませんよ。
何を期待したんですか?」
「いや・・・もっと違った様式のドロンとした魔界風?」
「何を言っているかまったくわかりませんが。
キタミザト様の想像で魔王国がかなりの風変りだと思われているのはわかります。」
「まぁ・・・常識的に考えてシモーナさん達が人間と変わらぬ風貌で過ごしているんですから生活様式も同じで家も似ているだろうとはわかっていますけど・・・」
「けど?」
シモーナが聞き返す。
「魔王国と言うのですからもっと禍々しい、尖がっている屋敷があっても良いかなぁと。」
「・・・一つ聞きたいんですけど、その屋敷は保守的に修繕が可能なんですか?
そしてその屋敷はそんな風貌で何か利点があるんですか?
無意味な費用が掛かるのならしませんよ?」
「・・・割と見た目しかないかなぁ。
建設費用的には若干抑えられそうだけど、その後の屋根の修繕とか外壁清掃とか・・・高そうだし。」
「では、しませんね。」
シモーナが言い切る。
「・・・うん、そういう城があったら面白いですよね。」
「まぁ見る分には。
領内にあったら怒りますけどね。
ですが、どの領地も手堅いのでその手の面白城はないですよ。
まぁ・・・あるとすれば王都の王城が今も建設中という事ぐらいです。」
「王城が?」
「ええ、いつ行っても王城は何かしら建設していますよ。
私にとっては何をしているのかまったくわかりませんが。」
「尖がってました?」
「いや・・・そういう感じには見えませんでしたね。」
「・・・ふーん。」
武雄が興味を失う。
「いや、明らかに興味を失わないでください。
あ、それとキタミザト様達は宿に案内しますからね。
領主への挨拶も不要となっていますから明日の出立までのんびりと過ごしてください。」
「買い物は出来ますか?」
「ええ、構いません。
と、その前に私の旦那と子供達に挨拶させますね。」
「はい、わかりました。」
武雄が言うとシモーナが店内に入っていくのだった。
・・
・
案内された宿を出て武雄達は雑貨屋に来ていた。
「・・・ふーむ・・・」
武雄が片っ端から棚を見ている。
「キタミザト殿、どうですか?」
ラングフォードが聞いてくる。
「扱っている物自体に変わり映えはしないですが・・・敷物とかで微細な差異はあるようですね。
色使いの違いでしょうかね。
織り方としては大差がないですね。」
「こっちの食器も若干、意匠が違いますね。
何かを意図しているのでしょうか・・・値段的には一般用みたいです。」
「一般的な価格帯での差異があるという事は文化的な何かですね。
種族的に好まれる色、形が反映されていると考えられますが・・・」
「輸入は難しいと?」
「正直言って微細な差異では売れないでしょう。
大きく何かが違うから珍しさに手を取ってくれるのが輸入商品というものです。
価格帯も一般用となるなら高付加価値になる事は難しいでしょうし、色や意匠が少々違う程度なら安い方を買う可能性の方が高い。
となると大量輸送は出来ないから輸送料は割高になり販売価格が上がる・・・
売れないと思える商品を買い込む者はいませんよ。」
「大きな差が必要なのですね。」
「少なくとも店先で売る為にはですよ。
個人で楽しむ分には割高でも良いんでしょうけども・・・ん~・・・カタログ通販的な物をしようかなぁ?」
武雄が考えながら言う。
「通販ですか?」
「ええ、通販的な何かですよ。
例えば、キタミザト家で取り扱う品々を吟味しておき、我が家独自の通販カタログに載せて、国内の一定層に渡す。
カタログ内にはもちろん発注書を添えてですね。
注文を受け次第、シモーナさんに発注する感じです。
・・・まぁ・・・無理か。」
武雄が構想を言って直ぐに諦める。
「無理なのですか?」
「発注者側である私達は楽ですけどね。
・・・物を集めて発送するシモーナさんやレバントさんは在庫の管理が大変そうなんですよね。
個人購入になると1個ずつしか買わないでしょうからね。
欲しい物を2個ずつ程度の在庫を持っておいて、注文が来れば在庫から出してくるのが、基本的な形でしょうね。
そして注文されてからすぐに発送する事が売りになるのでしょうが、在庫を切らせれば遠くの領地の一品だった場合、取り寄せるのに結構な時間がかかりそうですからね。
なので在庫は2個や数個といった単位で管理しないといけないのです。」
武雄が言う。
「となると・・・在庫を持つという事はいつ売れるかわからない物をおくという事になる。
カタログをとなると載せる数も多くなるでしょうから、さらにその分の在庫を持たないといけないのですね。
保管場所が大変そうですね。」
ラングフォードが言う。
「ん~・・・とりあえず、シモーナさんと話してみるかな。
もしかしたら良い方法が他にもあるかもしれませんからね。
と、デナムさんが来ませんね。」
「何か良い物が見つかったのでしょうか。」
武雄とラングフォードがデナム達の居る方に向かうのだった。
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