第2015話 226日目 スミス報告したよ。(あ、エイミー、頑張れ。)
夕方のアズパール王国 王城 第3皇子一家の執務室にて。
「「「「ん~・・・」」」」
ウィリアム、アルマ、レイラ、エリカがスミスの説明を聞いて首を傾げていた。
「・・・」
スミスは現在、場の空気を察して床一点を見つめる事しか出来ない。
冷や汗をかいて背中はビッショリだ。
「・・・あの・・・アルマお姉様、レイラお姉様・・・スミスの説明はダメでしたか?」
スミスの隣に座るエイミーが見かねてアルマ達に聞く。
実はエイミーも背中に汗をかいて緊張していたりする。
「ダメというか・・・ん~・・・」
「スミスの説明内容は十分よ・・・スミスの考えた内容については・・・ね。
でも・・・ねぇ・・・」
レイラとアルマが悩んでいる。
「スミスの説明に納得がいっていないのですか?」
「スミスの説明には納得したよ。
スミスの通りに進めば・・・それで良いかもね。」
ウィリアムが言ってくる。
「え?」
エイミーがウィリアムを見る。
「スミスの説明は問題ない。
ただし、そこには肝心な事が見えていない感じなんだよ。」
「肝心な事?」
「うん・・・スミス・・・王立学院は大丈夫か?」
ウィリアムが聞いてくる。
「え・・・はい、毎日授業を受けています。
授業内容も問題なく理解できています。」
「そうか・・・そこだよ。」
「そこ?」
「・・・学業をしながら王都での王家の荷馬車の受け入れ、王都での御者の手配をする。
手順については先ほどの説明でわかった。
だが、受け入れと御者の手配を学業で毎日王立学院にいるスミスが出来るのかな?」
「それは出来」
「まぁ待ちなさい。
出来る出来ないと問うなら出来るというのが立案者の回答だから今言わなくても良い。
本来なら結果で示してくれと言って終わらせるんだけど・・・ねぇ・・・
スミス、物事が全て順調に行けば、スミスの言う通りの手順で良いだろう。
だが、1つ物事が狂うと全部が狂う・・・その時、本当に毎日王立学院に居るスミスが対応出来るかな?」
「それは・・・」
「今回の件、確かにスミスの見立て通りの手順で行けば問題はない。
だが、当事者達にとって初めての事だらけだ。
スミスの判断、確認する内容は少なければ少ない方が良いと僕は思う。
スミス、実家に負担をかけたくないとか実家に良い所を見せたいという欲求があるのは僕も理解してあげられる。
事実、スミスが生きてきた今までの人生で最大の金額と物量を扱うんだ。
これをなせば家内での跡継ぎとしての面目は立たせられる・・・と意気込んでいるのもわかる。
だが、スミス、一番は失敗しない事が重要なんだよ。
エルヴィス伯爵は今回の件を取り仕切る事を望んでいるのであって、どういう手段を取るかを気にはしていないと思うんだ。
全てを王都でする事を望んでも居ないし、実家を頼る事を忌避している訳ではない。
で、あるならスミスが確認する内容を少なくする方法を取っても誰も何も言わないと思うんだ。」
「・・・そうでしょうか?」
「あくまで僕の想像でしかないよ。
だが、義理の祖父だがそう言った事を気にかける方ではないと僕は評しているよ。
さて・・・スミス、今一度、各案の行程の確認をお願いする。
王都に居るスミス達の仕事内容を確認する事が主な事かな?」
「僕達の仕事内容ですか?」
「うん、
初めての事だらけで確認しなければいけない事は多岐に渡るだろうね。
学業をしながらだし、相当無理をするだろう。
そしてスミスが無理をするならそれ以上にジーナも無理をする。
2人して倒れたら・・・誰がその後を継ぐんだい?
それこそ跡継ぎ云々の事に繋がりかねないよ。
だから、まずはスミスはこの件を上手に終わらせる。
その為には自分達がする内容はしっかりと確認し、判断する内容を少なくする事が重要なんだ。
少なければ少ないほど良い。
もちろん予算内である事が条件だけどね。」
「わかりました。
もう一度、全ての案を見直しをして、どれが一番僕達の負担が少ないかを確認します。」
スミスが言う。
「うん、確認が出来たらもう一度説明してくれるかな?」
「はい、わかりました。」
スミスが頷く。
「まぁ・・・スミス、口煩く言っているのは私達もわかっているからね。
今回は初めてだし、広範囲の考えが施政者には必要だという事を教えたいのよ。
そこはイライラせずに資料と検討をしてね。
これも学習なのよ。」
「うん・・・今回は初回だしね。
次回があっても私達が入れないかもしれないからね。
今しか教える時がないのよ。
心では色々と不満があるだろうけど、我慢してね。」
アルマとレイラが言ってくる。
「はぁ・・・大変なのはわかります。
これだ!と思って提案しているのを私達が否定に近い事をしていますからね。
精神的に不安定になるかもしれません。
色々と想像をする事が大切というのは口では言えるんですけど、実際にしてみないと想像が出来ないんですよ。
今苦労すれば後々に活かせますから、歯を食いしばってやり遂げてください。」
エリカが言う。
「スミス・・・頑張れ。」
エイミーが言う。
「じゃあ、次はエイミーちゃんか。」
「え゛!?この流れで!?」
エイミーがレイラの言葉に驚く。
「エイミーはスミスと違って放任で良いんじゃない?
失敗しないでしょう?」
「僕としてはスミスと違ってエイミーは安心して任せられるけど父上からの仕事だしね。
聞かないといけないね。
それにこういったの何回目だったかな?・・・エイミー、大丈夫だよね?」
アルマとウィリアムがエイミーに言う。
「あの・・・私に過大な評価をされているようですけど・・・」
エイミーが言う。
「ふふ・・・エイミーちゃんはスミスと違って経験者だからね。
私達もスミスの時よりも厳しくみないといけないと覚悟しているのよ・・・陛下から容赦なく徹底的に見て、指摘して良いと言われているし。」
「陛下・・・何をしてくれているんですか・・・」
エイミーが項垂れる。
「ちなみに同様な内容は総監局にも行っているんだよね・・・パットは大変そうだぁ。」
レイラが言う。
「ま、エイミーは実績もあるから私達程度の確認で良いのよ。
気負わずに説明して良いわ。」
アルマが言う。
「・・・殿下方、エイミー殿下はスミス様の付き添いで参っておいでです。」
「殿下方、申し訳ございませんが、いくら我が主でも依頼もされていない事を相談および進捗報告は出来かねます。
申し訳ございません。」
ジーナとドネリーが軽く頭を下げて言ってくる。
「あ・・・まだ正式にスミスから依頼が来ていないからエイミーに実施予定内容を聞く訳には行かないのね。」
「「「あぁ、そうだった。」」」
アルマの指摘に第3皇子一家の面々が頷く。
「では、早々にスミスは全ての案の見直しと実施したい案の説明をお願いする。
そこで納得出来れば、次の段階であるパットとエイミーへの依頼に繋がるだろうね。」
「わかりました。」
スミスがウィリアムに返事をするのだった。
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