第2008話 第3皇子一家に報告に行こう。2(スミスへの課題が決まる。)
ジーナがアリスからの手紙を第3皇子一家に報告する。
ちなみにパットは第3皇子一家での研修終了に付き、今度は総監局にて研修を受けています。
「王都で購入するのも王家から買うのもありで、エルヴィス家から持ち出しは50台までかぁ・・・」
レイラが腕を組んで考える。
「ジーナ、予算的にはどうなんだい?」
ウィリアムが聞いてくる。
「はい、第1皇子一家、第2皇子一家から荷馬車を全台数分買い、王都で新たに御者を頼む事と、エルヴィス伯爵領から幌馬車と御者を全台数を持って来て、積み替えてから持っていくという事を比較した場合、大して費用は変わらないと試算出来ました。
また、費用的には王家から幌馬車を買い上げて、エルヴィス家より御者を派遣して貰う方が少し高いですが、日程的に遅れはなく済むと考えています。
ただし、王都で幌馬車と御者を用立てて積み替えて持って行くというのは予算を圧迫するだけなのでこちらはエルヴィス家としては採用できません。
なので、安値である王家から幌馬車を買い、王都で御者を雇うか、王都までエルヴィス家の者を呼び積み替えるかが安値の2択だと考えています。」
「なるほどね。
スミスはどう思っているのかな?」
ウィリアムが聞く。
「スミス様は王家から幌馬車ごと買い上げ、御者を王都で雇う方がご実家に手間をかけさせないので良いのではと言っております。」
「・・・ジーナちゃんはどう思っているの?」
レイラが聞いてくる。
「私としては・・・王家の幌馬車ごと買い上げ、御者はエルヴィス家より派遣して貰う方が良いと考えています。」
「なるほどね。
同じお金を落とすにしても実家に落とすか。」
アルマが言ってくる。
「はい。
基本、今回の小麦の輸送にかかる費用は全部、この予算からになります。
王都からエルヴィス伯爵領までの輸送中の人件費も含まれます・・・どうせならエルヴィス家に入れれば良いのではと。」
ジーナが言う。
「まぁ・・・一領主としてはジーナの方が真っ当な考え方だとは思うんだけど・・・
スミスはエルヴィス家から委任されているからエルヴィス家を頼るのは自身の能力が無いと思われかねないと思っているのかな?」
ウィリアムがジーナに聞く。
「真意はわかりませんが、スミス様は実家に頼らずに手配するべきだと・・・費用も安く出来るだろうと。」
ジーナが難しそうな顔をさせる。
「・・・ジーナ殿、他にも御者をエルヴィス家から呼び寄せる方が良いと言える理由がありますよね?」
エリカが考えながら言う。
「それは・・・個人的な事です。」
「いーえ、違います。
それは個人的な事ではありません。
組織的な事です。」
エリカが言う。
「ん?エリカさん、ジーナの言っている王家のを買って御者をエルヴィス家からというのは他にも良い事があるの?」
アルマがエリカに聞く。
「はい。
価格だけなら先に上げた2つ、王家から幌馬車ごと買って、王都で御者を雇う、王都まで持って来て貰いエルヴィス家から幌馬車と御者を連れてくるが安いんですよね?
でも、ジーナ殿は王家から幌馬車を買って、御者はエルヴィス家に頼むのを選んだ。
これは値段は少し高いが人件費をエルヴィス家に払えるので内部的な消費に繋げられるからエルヴィス家にとって利益になるという事だと説明をしていましたけど、違う側面で見ると・・・エルヴィス家から御者を連れて来て、王家から来た幌馬車を受け取るだけで良いという事です。
つまり王都で御者を雇う契約を一々せずに御者は実家に予算を振ってやりくりさせれば良いだけの・・・王都に滞在する側の手間を省けるという事です。」
エリカが言う。
「ん~っと・・・つまりはジーナちゃんが推す、王家の幌馬車を買って御者をエルヴィス家からという案は他の案よりもジーナちゃんの仕事を減らせるという事ね?」
レイラが言う。
「はい、こちらなら王家からの幌馬車の泊める場所の確保と受け取り、エルヴィス家からの御者の宿の手配で済みます。
他の案では王都で御者を雇えば、ちゃんと来るのか、契約上問題は無いか等々考えないといけませんし、エルヴィス伯爵領から幌馬車をとなると幌馬車を泊めて置く広場が倍は必要になり、その手配も必要です。
ジーナ殿が推す手間とはかなりの違いがあると思えます。」
エリカが言う。
「なるほど・・・手間ね。」
「ジーナの手間は確かに僕達も抜けていたね。」
「そうね~、確かにジーナの仕事量を考えればジーナの推す方が良いわね。」
第3皇子一家が一気にジーナの主張になびく。
「いえ・・・あの・・・私の仕事量は別に・・・」
「いーえ、ジーナ殿、これは個人の仕事量が増えるという問題だけではありませんよ。
そもそもジーナ殿が推したという事は予算内で賄えるのでしょう。
金額に大差があるなら確かにこの案は控える必要があるのでしょうけど、少し高い程度なのですよね?
今回は王都側の仕事量を増やしてまで安さにこだわる必要はないと思います。
それにエルヴィス家に利益が還元されて、ジーナ殿の仕事量も過大にならない、特に今回は初めての手配なのです、実際に手配が始まってからどんな問題が発生するかわかりません。
今の内に手間数が減らせる物なら減らすべきだと私は思います。
なので、私はジーナ殿の案が一番良いと考えます。」
エリカが言う。
「なるほど・・・エリカさんとジーナの意見はもっともだね。
だが・・・心情的にスミスの考えもわからなくもない。」
ウィリアムが言う。
「ん~・・・スミスの判断を最優先に採用したいんだけど・・・ジーナちゃんとエリカさんの言い分もわかるわ。
一度、各案の良い点と悪い点の洗い出しをスミスにさせようか?」
レイラが言う。
「そうね・・・スミスに各案を提示させて、どの案にどういった利点と欠点があるのかの箇条書きをさせてみるのが良いわね。
その上でもう一度考えさせれば良いんじゃない?」
アルマが言う。
「なら、明後日・・・いや、3日後にスミス殿に来て頂いて、殿下方にご説明をして頂いてはどうでしょう。
その上で満足出来なければ、各輸送案の良い点と悪い点もしくは想定される仕事を書かせ総合的に判断してみるというのは。」
エリカが言う。
「うん、そうだね。
ジーナ、スミスに3日後の・・16時頃にここに来て各輸送案の説明をするようにと依頼を伝言してくれるかな?」
「畏まりました、ウィリアム殿下。
その際に口頭で良い点と悪い点の説明をするようにとお伝えします。」
ジーナが言う。
「・・・うん、そうだね・・・それで王都側つまりは自分達の仕事についての説明が抜けていた場合は箇条書きをさせようか。
ジーナ、あくまでスミスには口頭で良し悪しを説明するようにと伝えてくれ。」
「はい、3日後の16時にご訪問をするようお伝えします。」
ジーナが頷くのだった。
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