第2006話 223日目 アズパール王が出立。(ジーナと雑談。)
アズパール王国 王城の玄関前。
「ふぁ~あ・・・やっと出立だなぁ。」
アズパール王が欠伸をしながら玄関の階段に座っていた。
「陛下、出立までもう少しのようです。」
ジーナがアズパール王に言う。
「そうか・・・なんでジーナが居るんだ?」
「アリス様から回答がありましたのでレイラ殿下方に報告して参りました。
ちなみに午前は王立学院を休んでおります。
午後は行きますが、皆様バタバタされておりましたので、お手伝いをしています。」
「・・・輸送の件では苦労をかけるな。
ジーナからすれば余計な仕事になってしまったな。」
「いえ、これも将来の王家やエルヴィス家にとって重要な経験になる事かと考えていますし、それにこれも仕事です。
問題はありません。」
「・・・表向きはそれで良いだろう。
依頼している我らが言う事ではないかもしれないが、ジーナはもう少しのんびりとした方が良いな。
ジーナを見かける時は仕事しかしてないからな。
仕事ばかりでは疲れが溜まってしまうぞ。」
「ご主人様に似たような事を言われました。
のんびりと過ごせと。」
「まぁジーナやヴィクター、子供達等々、雇っている者達は出が出だからな。
少しぐらいのんびりとしても良いと思う気持ちはわからんではない。
それにジーナは真面目だ、真面目な者は周りから休めとしっかり言わないと休みもしないからな。
ジーナ、休むのだ。」
「休息はとっておりますよ。
ですが、スミス様の用事をするのも私の仕事ですので、休息を長々とは取れないですね。」
「・・・多分タケオの言う休みとジーナが言う休息は中身が違うんだろうな。
まぁ仕事に没頭するのを否定はせんが、仕事ばかりというのも体に悪い物ではある。
かといってタケオのように趣味が仕事になってしまっている者も居るには居るがあれは例外だろうな。」
「はい、ご主人様のは異例かと。」
「ちなみにジーナは休日は何をしているんだ?」
「えーっと・・・ご主人様のように昼まで寝て、起きたら本でも読んで・・・でしょうか。」
ジーナがアズパール王に目線を合わせないで言ってくる。
「はぁ・・・これは休んでないな。
休日がこれでは休息もたかが知れている・・・ジーナしっかりと休む時は休みなさい。
スミスもそのぐらいされたところで問題はないだろう。
タケオに至っては休まない事で怒るかも知れんぞ?」
「仕事をして怒られるのは理不尽かと。」
「そう思うならしっかりと休む事だな。」
「ちなみに陛下は休日は何を?」
「そうだなぁ~・・・オルコットの目を盗んで飲しゅ」
「あ、オルコット宰相様、おはようございます。」
「んんっ!孫の為に玩具を選んでおる。」
アズパール王が回答を変える。
「ジーナ殿、おはようございます、陛下のお相手ありがとうございます。
まったく・・・執務室に居ないんだから・・・」
オルコットがジーナに挨拶してからアズパール王を呆れた顔で見る。
「・・・」
アズパール王がそっぽを向く。
「で、ジーナ殿、陛下と何をお話に?」
オルコットがジーナに聞く。
「はい、休日の過ごし方を。」
「?・・・そうですか。」
オルコットが一瞬考えてから頷く。
「・・・オルコット宰相様、私休んでいないように見えますか?」
ジーナが聞いてくる。
「いえ、そういう訳ではないのですが・・・私がジーナ殿を見かける際はほとんど仕事の時ですし、エルヴィス殿のお付きをしているとしっかりと休日を取れているのか疑問に思いまして。」
「だよな。
聞いた感じだが、ジーナは本格的に休んでおらんようだ。
隙があれば仕事している感じみたいだぞ。」
アズパール王がオルコットに言う。
「いえ、しっかりと休息は取っていますが。」
「だが、我らはそう見ている。
回りの者達からはジーナは休みなく何か仕事をしてると見られている可能性がある事を示しているのだよ。」
「まぁ・・・そうですね。
ジーナ殿、適度な休暇もしっかりとした仕事をする為に必要な事です。
それに部下や使用人にしっかりと休みを与えるのは雇い主の評価に繋がります。
今のままでは、キタミザト殿は部下に満足に休みを与えない施政者だと思われるかもしれませんよ?」
「え・・・ご主人様は何よりも休日を大切にしています。
研究所では週に1日の完全休日を導入し、研究室と試験小隊の面々が実践していますし、有給休暇も用意しています。
ご主人様がそう思われてしまうのは実際との隔離が酷いですね。」
「私達のようにキタミザト殿もジーナ殿も知っている人達からすればキタミザト殿はキタミザト殿、ジーナ殿はジーナ殿と分けて見ていますが、キタミザト殿に会った事ない者はジーナ殿を見て、キタミザト殿を見ます。
ジーナ殿が休みなく働く事でキタミザト殿は休みを蔑ろにする者と思われるかもしれませんし、口でキタミザト殿が休日を大切にしていると言っても、ジーナ殿が休まなければ部下を酷使し、自分はのんびりとする者と思われるかもしれません。」
オルコットがジーナに言う。
「それは・・・そうなのでしょうか?」
「噂とはそういう物です。
会ってみると噂とは真反対の方だったというのは良く聞く話です。」
「そうなのですね・・・スミス様と話をして休日の事を決めてみます。」
「はい、それがよろしいでしょう。
と・・・陛下、そろそろ出立の準備が整ってきましたね。」
「うん?・・・あぁそうだな、馬車に乗って待つかな。
オルコット、ジーナ、行ってくる。」
「お気をつけて。」
「いってらっしゃいませ。」
「うん、ジーナ、休暇を取るんだぞ?
帰って来たらどんな休日を過ごしたか聞くからな。」
「・・・休暇はのんびりするからこそ休暇だと思います。
ご主人様に倣い、本でも読んで過ごす事にします。」
「なんだ・・・聞く事を今言われると悲しいな。
まぁ良い、それが出来たのかの確認をするとしよう。
オルコット、後は頼むぞ。」
「はい、戻られたら執務机の書類の山がお待ちしている事でしょう。」
「はぁ・・・帰ってきたくなくなるなぁ。
では、土産話を期待しておれ。」
アズパール王が馬車に向かうのだった。
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