第2005話 222日目 東町に到着。(ご厚意には甘えます。)
夕暮れのエルヴィス伯爵領 東町の城壁外の広場。
「つ・・・着いたのね・・・」
ラングフォードが馬を降り、疲労困憊でその場に座り込んでしまう。
「ベアトリス、お疲れさん。」
ラックがラングフォードを労う。
「所長、予定通り着きました。
とはいえ、30分程早かったようです。」
武雄の隣に居るアンダーセンが懐中時計を見ながら言う。
「うん、まぁ予定通りですね。
ミア、馬達の感想は?」
「皆、『疲れたー』って言っていますよ。
早く休ませましょう。」
ミアが武雄の胸ポケットから顔を出して言う。
「うん、さっさと夕食取って寝ましょう。
アンダーセンさん、試験小隊の点呼と現状の確認、全員にケアを。
ラックさん、王都組の点呼、現状確認と全員にケアを実施してください。
全員、下馬してください。
手綱も一旦放して問題ないです。」
「はっ!」
「了解!」
アンダーセンとラックが各々の人員に声をかけ集合させる。
「ビエラ、こっち。」
「はい!」
ビエラが武雄の下にやってくる。
「ミアもよろしくね。
ビエラ、馬達を集合させてください。」
「はい!
あ~、あ!」
ビエラが少し大声を出すと。
馬達が小走りでやって来て綺麗に横に並ぶ。
実はこれ、この旅が始まってすぐの休憩時からしていた馬ミーティングだった。
ビエラが馬達を呼びよせ、問題が無いかを武雄が聞き、ケアを全員にしていた。
最初は驚いていた王都組も数回やっているうちに慣れたようだった。
「はい、皆さんお疲れ様です。」
武雄が言うと馬達が小さく嘶く。
「主、『明るい内に着けましたねー』とか『今日はケアもあって体は楽だったけど疲れたなぁ』って言っていますよ。」
ミアが通訳する。
「今回、予定通り来れたのは私達人間種だけでなく、あなた達の努力があったからでしょう。
我々、皆が頑張った結果ですね。」
武雄が言うと馬達が小さく嘶く。
「また、ここまでの道のりではミアの部下であるサスケやその家族である狼達が事前に街道沿いの魔物を排除しています。
それもあって周囲の警戒に気を遣わずに来れた事も順調に来れた一因でもあるでしょう。
ですが、明日からはその狼達の補助はなくなります。
なので、今日よりも警戒をしながらの移動を実施する事になります。
移動速度自体は幌馬車に合わせますのでそこまで体力はつかわないでしょうが、過度の警戒や心配は必要ありません。
こちらには人間種で戦闘をする者達が100名以上います。
何かあれば事前にわかるでしょうから、何かあっても慌てずに私達の指示に従ってください。
わかりましたか?」
武雄が言うと馬達が嘶く。
「主、全員了承しましたよ。」
「では、私の訓辞は終わりですね。
全員にケアをしますよ。
今日はこのあとゆっくり休んでくださいね。
じゃあ、して行きますね。」
武雄が順々にケアをかけて行くのだった。
・・
・
「終了。
お疲れ様。」
武雄が言うと馬達が武雄に頭を擦り付けてくる。
「はいはい、お疲れさまでしたねー。」
武雄は各々の首を擦って労う。
「所長、試験小隊並びに王都の面々のケア実施しました。
全員、問題はありません。」
アンダーセンが代表して武雄に報告してくる。
「わかりました。
各自、馬の手綱を取って町に入りましょうか。」
「了解しました。」
アンダーセンが皆の元に戻って行く。
・・
・
「キタミザト様!お待ちしておりました!
私が今回の臨時輸送隊の隊長を務めさせていただいております。」
街に入ると兵士が数名武雄の前に並び出迎えていた。
「はい、ご苦労様です。
こちらの人員は事前に伝達されていますね?」
「はい、総監部より指示を頂いております。
宿も問題なく手配出来ております。」
「テントで良いのに。」
「はは、そういう訳にもいきません。
魔王国の関までですがご同行をよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
準備は?」
「はい、輸送物資の積み込みは完了しております。
明日、朝食後、兵士のテント等をしまったのちに出立となります。
キタミザト様用に幌馬車を1台用意しております。
ご自由にお使いください。」
輸送隊長が言う。
「心遣いありがとうございます。
・・・アンダーセンさん、幌馬車が追加です。」
「了解しました。
御者と荷台で休む者で・・・うちが9名、王都が6名だから・・・騎乗は6名で良いでしょうか。」
「そこは任せます。
私は御者の方は出来ないので馬と荷台で休憩の方で。」
「まぁ、所長とビエラ殿、ラングフォード殿、デナム局長、ハガード殿は御者はさせませんよ。
輸送隊長殿、後ほど打ち合わせを実施させてください。」
「了解しました。
まずは、宿にご案内します。
その後に明日以降の行程の確認を実施いたしましょう。」
「こちらからは私ともう1名が参加します。」
「はい。
では、宿にご案内します。」
輸送隊長が先導するのだった。
・・
・
アンダーセン達が輸送隊と打ち合わせをしている間に武雄は東町局長に挨拶に向かった。
帰り身支度をしていたので軽く話してから武雄は宿へと向かっていた。
「危ない危ない、局長に挨拶を忘れる所でした。」
「主、お菓子貰えました。
東町良い所ですねー。」
ミアが顔を出して言ってくる。
「「「「キタミザト様!」」」」
「うん?」
聞き覚えのある声で呼ばれたので声をかけられた方を見ると。
アニータとミルコ、ケイとパメラが買い食いしていた。
「おや?少し凛々しくなったかな?」
武雄は軽く子供達と雑談をするのだった。
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