第2004話 222日目 武雄達が出立。(ジーナからの確認事項。)
エルヴィス伯爵邸の玄関。
「敬礼!直れ!」
アンダーセンの号令で武雄に試験小隊の面々が挙手の敬礼をする。
ちなみに武雄達研究所の面々は当初の予定通り、作業服や戦闘ベストを着ており、しっかりとリュックも背負っている。
「はい、おはようございます。
今日は1日で東町まで行きますけど、無理だけはせずに行きましょう。
多少遅れても何とかなるでしょうし、怪我をしても良い事にはならないでしょうからね。
以上です。」
「「「「はい。」」」」
武雄の訓辞に皆が返事をする。
「敬礼!直れ。
総員、騎乗!」
試験小隊の面々が騎乗を始める。
「では、行きますよ。」
ラック達に騎乗を促すとラック達も騎乗を始める。
「エルヴィス伯爵、アリス、行ってきます。」
「うむ、頼むの。」
「お気を付けて。」
エルヴィス爺さんとアリスが返事をし、屋敷の面々は頷いている。
「では・・・行きます・・・か。」
武雄が騎乗する。
「アンダーセンさん、忘れ物は?」
武雄の隣に来たアンダーセンに聞く。
「無いと思いますし、無かったら無かったですね。
どこかで代わりの物を買いましょう。」
「はい、それで行きましょう。
出立です。」
「出立!」
アンダーセンの号令で皆が玄関を後にするのだった。
・・
・
「ふむ・・・行ったの。」
「そうですね・・・まぁ残ったこっちもやる事はあるのですけどね。
コノハ。」
「はーい。
ま、生理用品の打ち合わせと土蔵の建設具合の確認だね。
あとはタケオが居ないけど、定期的な夕食での米料理の確認かな。」
「コノハ、勝手に使って良いの?」
「ふふふ!タケオに30kgまでは自由にして良いって文書で貰ったもん!」
「・・・なんで30kg?
というよりいつの間に?」
「週に1回で3週に渡って食べればこのくらいになるだろうってね。
アリスがお風呂に行っている間にタケオに書いて貰ったの!」
「ふーん、なら近々の夕食で出る可能性があるのね。」
「そだね。
それにタケオが居ない状態で玄米を出す際は、この地の料理人が何を出すのかを確認しておこうと思ってね。
玄米が出る際はタケオの意向が反映されるでしょう?
でも、タケオが居なかったら料理長達は何を作るのか。
タケオも興味あるみたいね。」
「肉と魚しかないですよね?」
「うん、何を添えて来るのかを見ておけば、この地でどんな料理が好まれているのかわかると思ってね。」
「あまりないと思いますけどね。」
「それならそれで問題ないよ。
だってタケオの料理が根本的に皆に合っているという事だしね。
でも実は本能的に違う味が好みなのかもしれないでしょう?」
「タケオ様の料理は美味しいですよ?
皆も無理している様子はないですし。」
アリスが首を傾げる。
「それでもよ。
まぁ・・・とりあえず料理長に任せるとしましょう。
さて、どんな料理が出て来るのやら。」
「はぁ・・・とりあえず、私達はその時を楽しみに待っていますかね。」
アリスが諦めたように言う。
「ん、伯爵、アリス。」
夕霧がやってくる。
「どうしましたか?夕霧ちゃん。」
「ん、シウンが戻りました。」
「ジーナちゃんから?」
「ん、手紙が来ています。
伯爵、アリス、確認してください。」
「わかりました。
お爺さま。」
「うむ、タケオが出張したからの。
とりあえず、アリスが確認しなくてはの。」
「はい、では、客間に行きましょう。」
アリス達は屋敷内に戻るのだった。
・・
・
エルヴィス伯爵邸の客間。
エルヴィス爺さん、アリス、フレデリック、ヴィクター、夕霧達がのんびりとしながら話をしていた。
「ジーナの手紙からレイラがスミスに指示をしてくれているようじゃの。
スミスはその指示で第1皇子一家と第2皇子一家にお願いする発注書と概要書を用意しようとしておるとの事じゃの。」
「ジーナちゃんはスミスと一緒に問屋や商隊をしている所の聞き込みをしてくれているようですね。
与えられた予算の内でどのくらい持っていないと輸送が出来ないのか確認しているのですね。
その中で幌馬車をそのまま購入した方が良いのか、エルヴィス領内の幌馬車を持って行き王都で積み替えるか。
どちらが良いのかを確認したいと聞いていますね。」
アリスがジーナの報告書を見ながら言う。
「ふむ・・・幌馬車は今出払っているんじゃがの。
フレデリック、40台程度は戻るのだったかの?」
「はい、残りは売り払い新たに作る事にしております。
ちょうど良い機会でしたので新しい物にと思いましたが・・・」
フレデリックが言う。
「幌馬車と言えばローチ工房じゃが・・・何台頼んだかの?」
「とりあえず現状の仕事に支障がないように20台分の内示を出しております。
あとの残りはまた次にと。」
「ふむ・・・60台はスミスの方に回せるの。
それとタケオが言っておったが、ベアリングと言う商品を幌馬車の車軸に取り付けると1.5倍程度荷物が多く運べるそうじゃぞ。
そっちは今タケオのコンテナ搭載馬車に取り付けているそうじゃ。」
「ほぉ・・・1.5倍は魅力的ですね。
保有しておくのも維持費がありますし・・・一度文官達で話し合って20台の内10台以降にそのベアリングを搭載して貰いましょうか。
そして順々に新しい物に変えて行けばよろしいかもしれませんね。」
「そうじゃの。
まぁいきなり多くをというのは故障の危険があるからの・・・難しいかもしれないの。」
「・・・新製品という事ならば故障もあるでしょうから近距離向けの・・・この街と各町間の輸送で使い、様子を見ながら順次領内向けの幌馬車に取り付けていくというのが良さそうです。」
「うむ・・・そうじゃの。
実証実験に付き合うという名目で安く出来るのか確認してみるのも良いかもしれぬの。」
「ならばその方向で話合いをしておきます。」
「うむ、アリス、ジーナにはこちらから幌馬車50台の王都への派遣は可能と回答しておいてくれるかの?」
「50台ですか?
少し足らなそうですね?
そこはスミスに考えさせるのですね?」
「うむ、ジーナには王都で購入するのもどちらかの王家から買うのもありとな。
それに50台でなくとも両家からすべての幌馬車を買っても良いしの。
予算内で好きにすれば良いと言っておいてくれ。
フレデリック、全数の幌馬車を買ったとしたらどうするかの?」
「まぁ・・・領内の組合に言って足りない所に売るか、ゴドウィン伯爵とテンプル伯爵にお聞きしてそちらで足らないようでしたら売ろうかと思います。」
「うむ、まぁ多くて困る物ではないじゃろう。
売り先はいくらでもあるからの。」
「わかりました、ジーナちゃんにはそう伝えます。」
アリスが頷くのだった。
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