第1998話 研究所にて 再度の確認。(不浄な物を作るという意義。)
研究所の3階 所長室。
「あぁ・・・疲れた~。」
「キタミザト様、お疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。」
武雄が執務机で体を軽くストレッチさせているのをソファに座っているドナートとエンマが労う。
「ありがとうございます。
2人も慣れない会議で疲れたでしょう。
アスセナさんが議事録作るまでのんびりしていてくださいね。」
「「はい。」」
ドナートとエンマが頷く。
「パナ、ウカ。」
「「はい。」」
武雄の呼びかけにチビパナとチビウカが実体化してくる。
「どうでしたか?」
「ん~・・・現状確認だったんでしょう?
色々とやっていて皆頑張っていたね。
特にナプキンはこれからだけど、防刃布と不織布で初期段階としては上手く行きそうな予感ね。
作らなければ改善はないのだからまずは作るという姿勢は高評価だよ。
ただ、販売層を限定し過ぎだと思ったわ。」
ウカが言ってくる。
「そうですね。
ここの生理用品は難がありますから、出来るだけ早急な普及をして欲しいと思うのですが・・・厳しい世の中なのですね。」
パナが言う。
「風評被害はこの事業をすると決めた時から覚悟はしたんでしょうが、やはり和らげたいんでしょうね。
出だしで躓くのが事業が一番頓挫する要因でしょう。
まずは口コミのみでお得意様を増やしていく。
広告は打たないが欲しい人のみが買いに来る。
事業としては売り上げは望めませんが、必要な人には行き渡る方法の1つではありますよね。」
「まぁ、トイレや生理はどの時代でも変な目で見る者達が現れるけどさ。
温水洗浄便座も大変だったみたいだね。」
ウカが武雄に聞く。
「それってウォシュレ」
「「タケオ!それ以上はダメ!」」
パナとウカが警告してくる。
「・・・温水洗浄便座ですね。
私もTVの特集の概要しか知りませんけど。
開発の切っ掛けは確か開発者さんの親御さんが痔に悩んでいて、トイレで泣きながら用を足す姿が開発の切っ掛けだったと言いますし、穴位置を職員達の協力の元探り当てたと聞きますね。
それに初CMをゴールデンタイムに流すという暴挙にも出たようですし。」
「逸話満載ね。」
「相当のクレームが入ったというのは、『汚い物は家の隅に、基本デリケートな話は公にはしない』という当時の価値観を表しているでしょうね。
まぁそこでクレームをクレームとは受け取らずに『温水洗浄便座を世間に意識付けられた』と開き直れた辺りは企業として相当の忍耐力があったという事でしょう。
まぁクレームを言われて気分を害さない人なんていません、社員皆が歯を食いしばって耐え、温水洗浄便座が必要な人に届けたいという確固たる意志の表れなのでしょう。」
「まぁ・・・確かに風呂釜やトイレって『どこも同じ』と言われていてメーカーの指定はなかったみたいね。」
「・・・世間一般が気にしていなかっただけですよ。
それに知りようが無かったのも1つの要因でしょう。
その当時のCMで流れる家物はTV、冷蔵庫、クーラー、キッチン回り・・・ぐらいでは?」
「少ないね。」
「それだけ世の中の人が欲しい物が重なっていたという事ですし、CMを流せばそれだけ買われたという事です。
需要があるからこそCMを打つ意味があるのですからね。」
「まぁ・・・そうか。
あ、アンケートを取ると言っていたけど、さっきの温水洗浄便座の一説を流用したの?」
「まぁ・・・知っている事は使うべきだと思っていますよ。
それにああいった肌身に付ける物というのは特に大量のサンプリングデータが必要だと思うのですよね。
薄利多売商品というのはデータの中央値からのプラスマイナス値を加味した値、つまり7割か8割の人達の要望に応える商品を大量に作るという事にあります。
もちろんコストをカットする為に、種類は1つが理想ですね。
同じ物を大量に作り、作業を徹底的に効率化させる事で販売価格を下げる事を意味しますからね。」
「それが機械化製造に繋がるのよね。」
「ええ、大量に同じ物を作る事に関しては機械化をする最大のメリットですからね。
まぁ・・・機械化はまだまだ先でしょうからね。
今は作業工程数をどれだけ少なく出来るかの検討の方が先ですよ。
まぁ、足踏みミシンは作りましたし、鈴音にエンジンの研究をさせていますからね・・・
まだまだ先と言っても遠い未来という訳でもなさそうですけどね。」
「そうだね・・・あまり急速に変えてもどこぞの産業革命をした某国みたいに格差が如実に出ちゃうだろうしね。」
「あれは元々格差があった所をさらに拡大しただけだと思いますけどね。
まぁ急速に物事を進めるとどこかに歪みが出るというのはいつの時代も場所も関係なく起こっている事ですよ。
私は出来るだけ普及には時間を使って行きたいと思っているだけなんですけど。
あとは需要がどのくらいあるかで広がる速さが違ってくるのでしょうね。」
「世間に広まる速さかぁ・・・
これこそやってみて、アンケートを取って分析して、売れる所に売り込んだらという所だね。
・・・先の事は先で考えれば良いか。
じゃあ、とりあえずタケオの協力工房は問題ないんだね。」
「ええ、うちの知り合いの方々は頑張ってくれています。」
ウカの問いかけに武雄が頷くのだった。
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