第1996話 仲間内で共有しましょう。6(不織布と馬車と融資。)
「それと不織布ですが。」
「「「ふしょくふ?」」」
ラルフが言うと皆が聞きなれないのか復唱してくる。
「不織布は織らない布です。」
武雄が簡単に言う。
「「「???」」」
皆が首を傾げる。
「まぁ・・・そういう物を私が作って遊んでいたらラルフさんに持って行かれました。」
「あれは遊びというよりも実験です。
不織布の製造方法は当面は私共の所で秘匿させて貰います。
必要ならお声がけを。
製造を請け負います。」
「ええ、この製造方法は製紙・・・紙の製造方法に直結して、王都の専売局が目を光らせています。
皆さんは気軽に手を出さないように。
ラルフさん、重ね重ね取り扱いに注意を。」
「はい、しっかりとした職人達が作りますので大丈夫です。」
「・・・作ります?」
武雄が聞き返す。
「はい、もう具体的にどう作るかを検討していますが?」
「まだ1週間程度しか経っていませんが?」
「ええ、防刃布の製造と不織布を製造する工房を1つずつ専門でお願いする事になりました。
もちろん守秘義務契約はバッチリしていますし、隣の建物に入って貰って、何かあれば私達が直ぐに対応出来る用意をしています。」
「・・・2件の布それぞれで製作工房を買ったんですか・・・そして隣に住まわせるんですか・・・
なんだか物事が大きくなっている気がしますけど・・・」
武雄が腕を組んで考える。
「ちなみにキタミザト様が要望しているSL-05液を塗布した防刃布の作成ですが。」
「ポンチョですよね。」
「はい、あれは既存のポンチョにSL-05液を塗布しただけです。
まぁ・・・実は染み込ませただけでは柔軟性に少し難が出ます。
テントやポンチョであればそこまで柔軟性は必要ないので大丈夫です。
それを生地の製造から防刃布の完成品まで一気に作る工房を立ち上げています。」
「1週間で?」
「はい、1週間で契約まで終わらせました。
あとは引っ越しと試作品を作りながらの製造方法の確立をしていくだけです。
テントへの転用は生地が出来次第、雑貨屋を通じて製造元と打ち合わせを実施します。」
「そうですか・・・出来たら言ってください。
エルヴィス家に報告します。」
「はい、お願いします。
それと不織布ですが、工房は決まったのですが、まだどのような仕様の物を作るのかは決まっていません。
厚さを2種類くらいに絞って、どの原材料(糸)で出来るのか研究をして、ご報告しようと思います。」
「・・・うん、期待しますが・・・まぁ、1つは最薄でしょうね。
生理用品に使うんですから。」
「その辺も皆で打ち合わせしながら検討します。」
「ええ、お願いします。
ちなみにウェットティッシュ作って欲しいんですけど。」
「うえっとてぃっしゅ?・・・ですか?」
「ええ、鈴音には伝えておきますから、最薄の物が出来たら言ってください。
不織布は使い道は広いです。
それこそハワース商会の耐火板を2枚用意し、その間に挟む事によって、防音、遮熱性能が高い内壁にもなるでしょうしね。」
「私達ですか?」
モニカが武雄に聞く。
「ええ、要はダウンジャケットの構造を建物に当てはめた考え方です。
概要はラルフさんに伝えてありますから。
その内ラルフさんが説明に行くでしょう。」
「そうですね。
ですが、その前に一度キタミザト様に確認をお願いする事になるかと思います。」
「ん~・・・わかりました。
出来たら持って来てください。」
「わかりました。」
ラルフが頷くのだった。
「ラルフさんの方は問題なさそうですね。
ローチさんの方はどうですか?」
「はい、キタミザト様に納入する為のコンテナ搭載馬車をサテラ製作所と一緒に組み上げています。
お戻りになるまでには出来上がっているように進めます。」
「はい、お願いしますね。
そういえばエルヴィス家から幌馬車の依頼が来ていませんか?
今回の件で大量に新品にする予定らしいのですけど。」
「はい、内示は頂いております。
今、ハワース商会に依頼して幌馬車の材木を手配しています。」
「ローチさん、近隣領からも集めて納期には間に合わせますから安心してください!」
ローチが言うとモニカも言ってくる。
「そうですか・・・ベアリングを搭載した幌馬車の販売は?」
「流石にまだ・・・それに納期が厳しい物でして・・・追加の費用もかかりますし。」
「・・・わかりました。」
「はい。」
武雄の質問にローチが汗をかきながら答える。
隣に座るキャロルは机の一点を見ながらドバっと汗を流している。
「幌馬車の幌をラルフさんの所の防刃布で出来ますかね?」
「まだ、始めたばかりですよ?
価格も決まっておりませんよ。
搭載にはまだまだ時間がかかるでしょう。」
ラルフがにこやかに言ってくる。
が、ラルフの服の背中部分はいつの間にか汗でビッショリです。
「・・・わかりました。
ダンさんは模型の製作は終わっていましたよね。」
「私の方は模型の細部が図面通りに出来ているかの確認と浮かせるための段取りをしています。
お戻りまでには完成させます。」
「なら、その時点で水を張って浮かせてみましょう。」
「はい。」
ダンが頷く。
「クローイさんは模型はありましたからエルヴィス家向けの提案資料と費用概算書の作成中ですか?」
「あ・・・実はローチ社長がエルヴィス家と話し合って頂いて・・・
コンテナ搭載馬車の組み立てを行う為のクレーン建造費用の融資を受けられるようにして頂いたんです。
その融資用の資料を作成しています。」
「うん・・・ローチさん、私知らないんですけど?」
武雄がローチに聞く。
「はい、まだ融資を受けられるかの審査に応募するとしか決まっていませんので。
あくまで相談して応募してみようとなっているだけです。」
「うん・・・まぁ・・・その件については私は口添えはしませんからね?
あくまでエルヴィス家の融資事業ですので。」
「はい、それで結構です。
何とか納得頂いて融資をして貰えるようにしていきます。」
ローチが頷くのだった。
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