第1995話 仲間内で共有しましょう。5(生理用品事業。)
「つ・・・次は、スズネ様も言っておりましたが、生理用品の件です。
スズネ様からナプキンという名称で販売する事になっております。
その性能やデザインについては現在検討をしていますが、出来るだけ早い段階で試験が出来るように持って行こうと考えています。
また生理用品事業は大々的な告知等はする事を考えてはおりません。
使用者からの口コミのみで様子を見させて貰います。」
「まぁ・・・仕立て屋としての世間体というのもあるでしょうが、一番は店に来る女性陣が忌諱の目で見られる事への対応でしょうか。
生理への理解は低いという事を表していますかね・・・」
武雄が難しい顔をさせて言う。
「はい、女性従業員が割と多い我が工房ではありますが、まずは福利厚生の一環として自分達用の検討と製作研究とさせて頂きます。
そこに懇意にされている方達にのみ販売を実施していくという形が理想です。
文句を言う輩はどこにでもおりますので、あくまでご贔屓して頂いている方々のみを当面は目指そうと思います。」
「まぁ・・・致し方ないでしょう。
事業継続最低人数は?」
「試算上・・・年間通して300個、銀貨2枚分をご購入頂くとして・・・928名。
これが試算上の事業継続人数となります。」
「・・・」
武雄が無言で考えている。
「ラルフさん、その生理用品・・・ナプキンは使えそうなんですか?」
モニカが聞いてくる。
「女性従業員からの説明ではタオルと同じ性能を有するが出来るだけ薄くし、下着を穿いても違和感が少ない物をと言っていました。
薄く作るのでナプキンが下着からズレない程度の粘着力を持たせると言っていましたが・・・
私としては意味はわかるのですけど、実質的にはわからないので女性従業員に任せっきりになっています。
今回のは女性従業員達が全部を統括して計画から製作まで考えています。
かなりのやる気を見せていますし、スズネ様とアリス様も検討に来て頂いているのは皆にとって気持ちを強く持てる要因ですね。」
「・・・ラルフさん、そのナプキンの試作が終わってから販売になった際に私にも声をかけてください。
うちの女性社員にも勧めてみますよ。」
モニカが言う。
「いいのですか?」
「贔屓にしている人達のみで928名は厳しい数字だし、キタミザト様関連の仲間内だから協力できる所はしますよ。
それに生理用品の不満は高いからね。
良い商品が出るのなら買わせたいですし、そもそも私が使いたい。
聞いた限りだと不快感が少なそうだし。」
「あ、私も参加させてください。」
クローイが手を挙げる。
エンマは何も言わないが武雄の方を見て「私も買いたいなぁ」とウズウズしている。
「・・・928は結構厳しいですね。」
武雄がラルフに言う。
「はい、売り方的に中々に厳しい数字になったと思っておりますが・・・
ちなみに・・・その・・・キタミザト様のコネを使わせていただきたいのですが・・・」
ラルフが恐々と聞いてくる。
「ええ、私も今考えていましたけど、キタミザト家と研究所の人員は少なくとも1年はほぼ全員にお願いする運びになるでしょうね。
エルヴィス伯爵家のメイドさん達、文官、武官問わず女性方にも使用をお願いするとして・・・
それでも928という数字は難しいでしょうね。」
「はい。」
「なので、王城に協力を要請しようと思います。
王家にも新製品の試供品の提供と研究事業の協力という事でお渡ししておきますが、王城内のメイドさん達は私が生理用品の開発をする旨は耳に入っているでしょうからね、協力はしてくれるでしょう。
基本的には試供品以外は割引無しの価格提示をお願いします。」
「・・・買って頂けるのでしょうか。」
「最初は採算は取れないかもしれませんが・・・これに関しては良い製品、特に肌触りが今より良くなり下着をあまり汚さないという最低限の性能があればまずは試してくれるでしょう。
あとは使用者の気分次第ですよ。
それに王城の女性陣はお金を稼いでいますからね。
一般に売るよりもその辺への投資はしてくれる確率が高いでしょう。
あとアンケートを同時に取る必要があるでしょうね。」
「アンケートですか?」
「使い心地、気になる点、不満な点。
ナプキンのサイズと・・・女性器の位置の確認は必須でしょう。」
「ふむ・・・統計を取るというのですね?」
ラルフが武雄に聞く。
「ええ、顔だって大別すれば目、鼻、口の位置は同じではありますが、大きさ、色等々細部は違っているでしょう?
同じように女性器も大別すれば場所は同じではありますが、個々によって違いがあって当たり前です。
折角、買ってくれるのですから、ついでに今後の商品開発に生かすために位置の統計を取るべきです。
まぁ・・・どうやってかはわかりませんけど・・・例えば下着に装着するナプキンの位置を同じにして、ナプキンに位置を示す番号を振っておく、そして経血がどこに一番吸収されたかの確認をお願いし、番号を書いて貰い返信する。
もちろんアンケートには氏名等々の個人がわかる事を記載しなくて結構ですからね。
その集計した結果からナプキンの形状を変更出来るでしょう。
どうやれば薄くて漏れない物が作れるのかのヒントになりますよ。」
武雄が真面目な顔で言う。
「わかりました。
女性従業員達にアンケートを実施するように言っておきます。」
「ええ、お願いします。
まぁ、アンケートも1割が戻ってくれば良い方だと思いますけどね。
あ、それとナプキンを普通のゴミ箱に捨てるのは恥ずかしいでしょうからSL-05の防水性がある小袋を作ってください。
密封性が高ければバックの中に入れられるでしょうしね。
家に持ち帰って焼却処分も出来るでしょうし。」
「なるほど、持ち運びを考えるのですね。
わかりました、検討いたします。」
ラルフが頷く。
2人が真面目に普通に話しているので、他の皆も恥ずかしがらずに聞いているのだった。
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