第1991話 仲間内で共有しましょう。1(盾と駆動部。)
武雄がサテラ製作所に入っていく。
「失礼します。」
「あ、キタミザト様、いらっしゃいませ。
他の方々も来ていらっしゃいます。
奥の会議室です。」
と武雄が来る事がわかっていた人達が集まっているようだった。
会議室と書かれたプレートが掲げられている部屋の前にて
「・・・」
武雄が一瞬考えてから。
「やっは~♪来たよー♪」
笑顔で入室する。
中に入るとガックリとしている者、苦笑している者、呆れている者等々・・・武雄が望んだ空気と何かが違っていた。
「あれ?・・・ん~・・・皆から『いらっしゃーい』と笑顔で迎え入れられると思ったんですけど・・・鈴音、ダメだったようです。」
武雄が部屋の一番奥にある長机のお誕生日席に向かい、座りながら直ぐ横の席に座る鈴音に言う。
「武雄さんが斜め上に行き過ぎた結果ですよ。
ですが、緊張は解けたんじゃないですかね。
・・・とりあえず、協力工房の代表の方々を集めました。」
鈴音が武雄に言う。
今回の参加者はキタミザト家から武雄と補助でヴィクターとアスセナ、トレーシーと鈴音の研究室組と農業部門のドナートとエンマ。
ステノ技研よりブラッドリー、サテラ製作所のキャロル、ローチ工房のローチとダンとクローイ、ハワース商会のモニカ、青果屋のベッドフォード、酒屋のロー、仕立て屋のラルフ、魔法具商店のテイラー。
会議室内の奥には黒板も用意されており
「ん~・・・こうやって見ると・・・なんか共通点がない一団ですね。
なんでこんなに協力工房が居るんでしょう?」
武雄が呆れながら言う。
「「それをキタミザト様が言いますか!?」」
モニカとベッドフォードが言ってくる。
「まぁまぁ、2人とも抑えなさい。
キタミザト様、それだけキタミザト様の発想が目新しく、商売に繋がったという証拠です。」
ラルフが言ってくる。
「商売というよりもやりたい事をやりたいようにしようとしたらこうなっただけなんですけどね。」
「はい、キタミザト様はそれでよろしいかと。
ここに集まっているのはキタミザト様のしたい事を商売として実施している仲間達です。」
「ま・・・商売っ気がないのも怪しまれますし、小遣いは私も欲しいのでね。」
「そこも十分にわかっている者達が集まっていますよ。」
ラルフが言う。
「今後も頼りにさせて貰います。」
「ええ、お頼りください。
・・・何か考え付いたら見知らぬ誰かに言う前にこの人員の誰かに声をかけて貰えるとやりやすいですけどね。」
ラルフが目は笑っていないがにこやかに武雄に言う。
「善処しましょう。
さてと・・・今日の集まって貰ったのは・・・鈴音、言ってありますか?」
「はい、招集の目的は言っています。
現状の確認と所長が魔王国に行くので要望があれば伝えて貰う事です。」
鈴音が言う。
「よろしいでしょう。
では、ヴィクターは書記をアスセナさんは黒板に箇条書きをお願いします。
鈴音はアスセナさんの黒板の内容を記録しておくように。」
「「「はい。」」」
3人が頷く。
そしてアスセナが立って黒板の所に行く。
「ふむ・・・私ですが、明日から魔王国への穀物の輸出の関係で魔王国に行ってきます。
魔王国の現地視察ですね。
なので、少し留守にします。
そこで現状での各工房、各部門での仕事の進捗と問題があるのならこの場で言ってください。
まずは研究室長。」
武雄がトレーシーに言う。
「はい、現在、私は所長とスズネ殿と相談した(トラス構造の鉄板を仕込んだ)盾の試作用に図面の作成をしています。
予定としては明後日にはステノ技研に初段階の図面を持ち込み、工房においての図面チェックと試作の見積もりを頂く予定になっています。
見積もりと図面に問題が無ければ製作を行って貰う予定になっています。
所長のお戻りまでには第1弾が出来ている運びになっています。
今の所、問題はありません。」
「うん、良いでしょう。
予算と製作についてはヴィクターとマイヤーさんの許可を得てから実施してください。」
武雄がトレーシーの言葉に頷く。
「鈴音はどうですか?」
「まずは輸送船に積む駆動部分の基礎研究の方ですが。
所長とは立ち話でちょくちょくしていましたが、2ストロークの内燃機関をモチーフにもっと簡素化した試験機を構想しています。
触媒としてはSL-01液(赤スライム体液)を使用しようと考えています。
着火については炎系の宝石を使えば簡単かと思いましたが、研究費用の軽減に向けて極力宝石は小さくする為に、ステノ技研の協力を得て魔力を貯める素材の提供と魔法刻印を使い試験機の検討を実施しています。
また試験機と言っていますが、本当に動くかどうかの理論検証用なので正式には駆動部と呼べるものではありません。
まずは小型のSL-01の力の確認をしようかと思います。」
「まぁ・・・まずはピストンを下に動かせるだけの力があるかとSL-01液の噴出が上手く出来るかの確認でしょう。
とはいえ極小さいとはいえ爆発をさせます。
実施の際は皆に声かけとトレーシーさんの監修の下、実施するように。
検証機はステノ技研でですか?」
「いえ、サテラ製作所に依頼の予定ですが・・・
多分、所長が戻るまでは作図と理論検討書の作成で終わってしまうと思っています。」
「ふむ・・・それならそれで良いでしょうけどね。
上手く気分が乗って、私が戻る前に図面が出来上がったらサテラ製作所で図面のチェックと見積もりは貰っておいてください。」
「はい、わかりました。」
鈴音が頷くのだった。
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