第1989話 工程の確認をしよう。(警護は誰がするんでしょうか。)
研究所の1階 試験小隊詰め所。
「ん~・・・1台900kgかぁ・・・無理をすれば1000kgは行けるな。」
「無理なんてさせられませんよ。
なので、小麦は50000kg、干物は25000kgですから最低でも84台の幌馬車ですか。」
「・・・あと各御者や護衛の食糧と万が一の幌馬車の交換部品用で2台か3台か。
長い商隊だな。」
「向こうの関まではエルヴィス家が護衛を務めてくれるんですよね?」
「そうなっている。
受け渡しの方も幌馬車ごとらしいな。
代わりに半数の幌馬車を用意して貰い、もう半数は金銭で賄うみたいな事になっているらしい。」
「その情報は誰から?」
「スズネ殿が飲み屋でハワース商会とローチ工房から聞いたそうだ。
『エルヴィス家から幌馬車40台の大量発注が来た』と涙を流して喜んだらしい。」
「・・・ご愁傷様。
でも、今回は所長は関係ないもんね。」
「いや・・・まぁ、そうなのか?
一応、今回の魔王国からの依頼はキタミザト家が受注したんだったはずだが・・・」
「・・・所長が原因かぁ・・・なら文句は言っても問題なくしてくれるよね。」
「そもそも領主家からの依頼を断る事はしないだろうよ。」
皆が明日からの行程を見ながら話し合っている。
「話が逸れているぞ。
ミア殿の情報(ミア団と夕霧達が情報収集済み)では、街道沿いのこことここにオークが居るようだと言ってきている。
3体程度の小規模との事だ。
ここ数日の監視でも街道に近付いていないとの事なので、護衛も付いているから商隊には問題はないとは思うのだが、注意を払うべきだ。」
アンダーセンが皆に言う。
「東町と関との間ですよね。
商隊から離れて我々で迎撃しますか?」
ベイノンが言う。
「キタミザト家が受注したと言っても護衛はエルヴィス家が請け負ってくれている。
・・・のだが・・・マイヤー殿が兵士長に確認しに行っている。」
「「確認?」」
アーキンとブルックが首を傾げる。
「ああ、明日は俺達が東町に行くが、東町からは魔王国側の関まで幌馬車の速度で移動する。」
「「ですね。」」
「幌馬車で2日で着くだろう。」
「「なるほど、で?」」
「今回は初の大規模な輸送でエルヴィス家が陣頭指揮を執るので・・・警護は兵士が担ってくれる。
正確に言うと演習を兼ねて警護と戦時の移動訓練が実施される。
まぁ普通なら冒険者に依頼する所を身内の演習としてしまったという事だな。」
「まぁ90台近い幌馬車の隊列ですしね。
警護もそれなりの数になりそうですし・・・冒険者組合に頼めば相応な費用がかかるでしょうね。」
「そこを身内の兵士達にお願いして同じ費用をかけるなら演習をしてしまおうという事になったらしい。」
「「へぇ~。」」
アンダーセンの言葉に皆が感心している風を装っているが試験小隊の面々は「数か月後の実践に向けての移動訓練か」と思っている。
「アンダーセン、それでマイヤー殿が聞きに行っているというのは?」
「参加小隊の確認です。」
ラックの質問にアンダーセンが答える。
「戻ったぞ~。」
マイヤーが試験小隊詰め所に入ってくる。
「お、噂をすれば。」
ラック達がマイヤーを見る。
「ん?どうした?
アンダーセン、行程の話はしたか?」
「ええ、関までの話はしました。」
「まぁ、関より向こうはほとんど人間が行かない土地だからな。
そこの行程はシモーナ殿に任せるしかないだろう。」
「はい、それで警護訓練の参加小隊は?」
「第5、第6、第10、第16と第17小隊の計120名が警護に付く。
その間は丁度巡回で戻って来ている者達が代わりに入るそうだ。」
「「「第16と17。」」」
ラック達以外の試験小隊の面々が呟く。
「ん?アンダーセン、その2個小隊が問題なのか?」
「いえ、問題はありませんが・・・兵士長は良い演習を得たと喜んでいたのだろうなという事ですね。」
「うん?」
ラックが首を傾げる。
「ラック、第16と第17小隊は新人部隊なんだよ。」
「ほぉ・・・新人に警護訓練と遠征訓練ですか。
まぁ往復4日程度、準備や撤収を含めれば1週間程度ですからね。
緊張を保つのにもちょうど良いですかね。」
ラックが頷く。
「あの子達頑張っているかなぁ。」
「頑張っているんじゃないか?
ほら、地方の新人兵士と同じだと魔法師専門学院で学んでいる2人の方が出来てしまうしな。」
「慢心してたら戻って来た時に訓練キツくしないとな。」
「ケードとコーエンは大丈夫だろう。
むしろアニータとミルコの方が心配だな。」
「兵士経験ないからなぁ・・・」
「異種族で尚且つ素質も他の子達よりずば抜けているし・・・イジメられてなければ良いんだが・・・」
「アニータとミルコは素直だからなぁ・・・変な事を吹き込まれないか・・・心配だぁ。」
試験小隊の面々が新人達を心配する。
「はぁ・・・平気だろう、所長の庇護下にあるんだぞ?
この街に住んでいてそんな恐ろしい事をする者が居るわけない。」
「そうだぞ、今の新人達はこの間の大演習を見ているんだ。
あれを見てキタミザト家の兵士を害する者が出ると思うのか?」
「「「あー・・・」」」
マイヤーとアンダーセンの言葉に試験小隊の面々が頷くのだった。
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