第1988話 王都の収入を増やす為に。(ダンボールの製造はお任せします。)
「はぁ・・・専売局長、ダンボールの製造方法と構造買います?」
武雄が諦めながら言う。
「売ってくれるのですか!?」
デナムが顔を上げる。
「まぁ、キタミザト家との協力関係にある工房でも少量なら製作しても良いとしてくれる事と再生紙の販売に関してある程度優遇してくれる事が条件ですけどね。
注文時の数量を細かくしたりとかですけど。」
「します!します!」
デナムが凄い勢いで頷く。
「キタミザト殿!よろしいのですか!?
相当な利益を専売局に売る事に繋がりますよ!?」
ラングフォードが言う。
「良いも悪いも・・・そもそもの再生紙事業は始まってもいないのですよ?
増産、増産と簡単に言っても現状の紙の生産を維持してとなるとある意味、工場の新規建設をするという事を意味していると思っています。
資源確保と紙の再利用をするという名目だけで財政局が新規工場の建設に費用を出してくれるとは普通考えないでしょう?
それに専売局は独自に物を生産し、販売する各局とは趣が違う部署ではあっても、その収入を全て自由に使って良いわけでもなく、あくまで国家として収入に換算され、年度予算が配分されています。
専売局長に新規工場だの人員確保の予算が自由にあるわけもありません。
新規工場を作るには予算を計上して財政局が許可を出さないといけない。
『紙の需要が多くなると予想されますので、新規工場を作って職員の増員をしたいので予算ください』なんて言ったって、予算が下りる訳もなく。
予算を頂く為には財政局向けのバラ色の計画提示が必要です。
その為の一端としてダンボールの製造と販売、その利便性と将来の販売高を説明、将来の収入増加の予想が不可欠です。
尚且つ各局が協力すれば原材料の為の新たな費用は低く抑えられ、販売価格が下げられ結果、販売量が上がる可能性があると説明されれば・・・許可される可能性がグンっと高くなると見込んでいます。」
「・・・確かに、予算を取る為には今の事とは別に将来性も重要です・・・
それも相当な利益が見込まれるのであるのなら財政局としても許可は出しやすいですが・・・」
ラングフォードが考えながら言う。
「なので、元々ダンボールの技術は教えようとは思っていました。
まぁ、私が直接する事の利益も加味して、ある程度、色は付けさせて貰いますけどね。」
「大丈夫ですって~、任せてください♪
キタミザト殿との今後の事もあります、しっかりとしたお金を払いますって。」
デナムは上機嫌で返事をする。
「あの~・・・ちなみにキタミザト殿、紙の箱でというのは利便性は大変わかりました。
なのですが、紙は水に弱いというのはわかっています。
現在の幌馬車ですとどうしても雨が降った際に荷台が少々濡れてしまう事があります。
これの対策はどうされますか?」
ハガードが聞いてくる。
「・・・板で覆えば良いじゃないですか。
事実、私は卸売市場への品物の運搬用に特殊な幌馬車を試作中で、今の市販されている幌馬車と同量の荷物を運べるが、鉄板と同程度の強度を持つ板で囲んだ箱を搭載できる荷馬車の開発をしています・・・
王家やオルコット宰相達には報告していますよ。
オルコット宰相からは出来次第、王都に1台納入し、強度試験をすると言われていますしね。」
「・・・そちらのは・・・」
「すみませんが、こちらは納入はしても技術は売りません。
この領地の工房との共同企画ですし、板の素材が希少価値の高い物を使いますのでね。
なので、お売りはしますが、王都で委託生産はまだする気がありません。」
「そうですか・・・」
ハガードが落ち込む。
「ですが、私共の協力工房から防水性の高い布を開発中という話を聞いていますよ。
従来の布よりも防水性に優れるのでそれを幌馬車に使うとか、ダンボールの上にかけて雨水から守るという方法はありますね。」
武雄がラルフの製品を売り込む。
「ほぉ、そんな商品が・・・高いのでしょう?」
デナムが聞いてくる。
「まだ開発途中ですからね。
具体的な価格はわかりません。
それにその特殊性からどれだけ量産が出来るかはわかりませんが、ある一定数生産量は確保してくれるとは思いますよ。」
「それは・・・販売されたら教えて欲しい物ですね。」
「まぁ、私が定期的に王都に行きますからね。
その際に報告はしてもいいですけど・・・まぁ売れたら売れたで・・・」
「出来たらすぐにお知らせくださいね。
まずは取り寄せていろいろと試験をしないといけないですから。」
デナムが言う。
武雄は「ん~・・・製品化はある意味出来ているんだよなぁ、販売量についてはラルフさんと一回相談しないといけないのかも。
それに・・再生紙事業は私の言った通りの方法だとたぶん難しいんだけど・・・まぁ完全再生紙でなく新規材料との混合物を使えばダンボール素材にはなると思うんだけどなぁ。
それに今回は再生紙事業が成功する事よりも身近に新たな紙の原材料が捨てられていて、それを確保をする意義はわかって貰えるでしょうかね。
もしかしたら混合の方が主流になる可能性もあるのだし・・・将来性は高いはずなんだけど。
その説明は後日にすれば良いか。」と思っている。
「まぁ、防水性の高い布は後日として。
とりあえず再生紙事業の提案と植林事業の企画の説明は終了ですね。
王都にでも戻ってから局内の話をまとめて、専売局としてやる気なら連絡ください。」
武雄が3人に言う。
「んー・・・私としてはすぐに乗りたいですが・・・」
「局長、持ち帰りましょう。
他の幹部方の意見も聞かないといけません。」
「そうだな、それに財政局だけでなく、総監局にも根回しは必要だな。」
デナムが頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




