第1987話 再生紙事業を説明しよう。(手回しシュレッダーも製作しますかね。)
「原材料の木材の入手が大変というのはわかっていますよ。
一番最初に言いましたけど、木々は有限なのですからね。
そこでじゃあ、代替資源を探しましょう。
まぁ・・・それが古紙の回収と再利用を考える事です。」
「「「それが再生紙事業。」」」
「はい、そうです。
王都内や各領主邸がある街では文官達が仕事をしていて大量に紙を消費しています。
そして公文書で残す紙以外のメモ帳や下書き等で使用している紙は破棄をしています。
これをただ単に捨てているというのは勿体ないです。
いらない紙を回収し、水に溶かし、再び紙にする。
木材の伐採量は増やさずに紙の原料を増やす方法はこれしかありません。」
「ですが、再利用する為に回収するにも外に出せない事が書かれている可能性があります。
各部局でまとめて焼く事が秘密保全に繋がると思うのですが。」
ラングフォードが言ってくる。
「はい、シュレッダーが必要ですね。」
武雄が頷く。
「「「シュレッダー?」」」
「対象物を切断破砕する機械で・・・まぁ、紙を細く切る機械ですね。
構造は簡単です。
円柱に薄い円形の鉄板を数枚取り付け、それを2個用意します。
取り付ける位置は順不同で結構です。
その鉄板が少し重なるように配置し、手回しで回転するようにします。
回転方向は正転と逆転です、そうする事で紙を巻き込んでいけます。」
「その装置はすぐに作れるのですか?」
ハガードが聞いてくる。
「やる気さえあれば数日で試験機は作れますが・・・出来なければ、ハサミで切れば良いだけです。
個人で処理する際に切って貰いましょう。
それに・・・そもそもまとめて焼いている事自体が漏洩の元だと思いますよ。
部局の誰彼に任せる事自体が危うい行為です。
漏洩させたくないなら紙を捨てるその人がまず細断するべきです。」
武雄が言う。
「「「・・・」」」
「秘密漏洩を防止する手立てとして、まずは書類等を破棄する場合は全員がハサミで細断して貰うように呼びかけをするしかないでしょう。
それも各局が各々にではなく、王都の全局一斉に始めれば不公平感はないでしょうし、そもそも最初から出来るとは思っていません。
上司達が目を光らせ、不備があった際は注意をしっかりと行い、情報漏洩を徹底的に抑え込むように仕向ける。
その際に、紙が細断されているのを確認する為に紙専用のゴミ箱を用意する必要がありますね。
そしてその誰彼が焼くのではなく、専売局に持って行き、溶かしてしまう方が良いでしょう。
情報漏洩と資源回収の一挙両得の案です。
それに毎月出る紙の量が変動するというのはあまりないのでしょうから、専売局が各局からの紙の持ち込み量を確認し、各局に連絡、月々の変動数を教えれば、数が極端に減った際は何かがあったとわかる事が出来ます。
・・・あ、財政局は税の関係上、季節変動はありますか。」
武雄がラングフォードに聞く。
「え・・・ええ、確かにあの時期は国内から一気に送られてきます。
処理するだけでも相当な数が出ますが・・・個別に細断するというのは些か現実離れしている気が・・・
財政局は破棄する紙の量が相当多いです。
それを個人で細断など・・・到底無理だと言わせていただきます。」
「・・・なら、大型シュレッダーが必要ですね。
10枚程度を重ねても細断出来る装置が必要でしょうか。
まぁ回転する鉄板の強度と手回す部分の改良で何とかなりそうですけどね。」
「・・・出来そうですか?」
「まぁ試作機ならね。
その後は製造をどこかに頼むか・・・ま、それは追々考えるとして今は概要ですね。
そうやって各局から紙を集め、再生紙を生み出して欲しいのです。
まぁ再生紙を作るにしてもインク等の影響で白紙を作る事は難しいでしょう。
なので・・・茶色の紙を作ってくれますか?」
「「茶色ですか?」」
デナムとハガードが聞いてくる。
「別に何色でも良いんですけどね。
インク等の影響で黒くはなるでしょうけど、そのまま黒くされてしまうと箱を梱包した際に何が入っているのかを箱にかけないので黒はダメです。
かと言って鮮やかな色も・・・何か違う気がします。
なので・・・土気色というのでしょうか、薄い茶色であれば多少の汚れは目立ちませんし、何か書いても書いてある内容はわかるでしょう。
それにその辺の土を混ぜればそんな色になりそうですし、資金をかける必要はありませんしね。」
武雄が言う。
「キタミザト殿、最後、大雑把ですね。」
ラングフォードが呆れたように言う。
「色は何でも良いですからね。
鮮やかだと逆に目立つので茶色系が落ち着いていると思うのですが、そこは製作側が考えれば良い話ですし。
さて・・・では、ここまで聞いて、再生紙事業の提案と植林事業の企画は王都で通ると思いますか?」
「少なくとも・・・やる価値はあるというのはわかります。」
ラングフォードが言う。
「ただ、これは専売局のみでなく各局との調整が必要な事業となります。
果たして他の局が協力するか・・・」
ハガードが言う。
「ん~・・・費用が・・・」
デナムが腕を組んで唸るのだった。
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