第1986話 真打登場です。(ダンボールは素晴らしいのだ。)
「紙で袋を?
リンゴを入れるバックを買えば良いのでは?」
デナムがラングフォードに言う。
「そんな事をしていたら家の中はバックだらけになってしまいますよ。
紙の袋で商品を受け取れたなら、持ち帰ったら捨てられる。
これほど楽な事はないですよ。」
ラングフォードが言う。
「そういうものですかね。」
「そういう物です。
で、キタミザト殿、どう考えておいでなんですか?」
「試作はしたんですけどね・・・こちらです。」
武雄が部屋置きのゴミ箱程度の上の口が開いている紙の袋を取り出し、机に置く。
「まぁ・・・中に品物を入れて、上の口を合わせて数回折りたたむ。
はい、出来上がり。
これは意外と強度があるんです。
確かに水がかかると破けやすくはなりますけどね。」
武雄は袋の中にメモ用紙等を入れて口を絞ってからデナムに渡す。
「ふむ・・・」
デナムが軽く持ち上げ、左右、上下に振っている。
「これの利点はノリとはさみで作れる事です。
布のように縫ったりしなくて良く、原材料も安いと言えます。
要は生産量が賄える簡易的なバッグを作れるという所にあります。
さらに・・・はい、これ。」
武雄がデナムの前にちょっと厚く見える紙を置く。
「これは?」
「紙の可能性の1つですよ。
紙というのは繊維の塊です。
紙を机に置いている状態の面で見た場合、縦と横方向の力には強いですが、上下方向の力には弱いですね。」
武雄が紙を持ち上げてビリっと裂いて見せる。
「まぁ・・・そうですね。」
「じゃあ、上下方向の力にも強度を持たせられたら・・・どうなるでしょう。」
「これが答えと?」
デナム達がジーっと武雄の試作品を見ている。
「まぁ・・・答えに近い物が作れましたね。
どうぞ・・裂いても構いませんよ。」
「では・・・失礼して。」
デナムが持ち上げ、武雄が先程したように裂こうとするがクシャと折れ曲がる。
「なっ・・・」
「へぇ~。」
「ほぉ~。」
3人が驚いている。
「まぁ・・・これも問題点はあるんですけどね、
局長、今手に持っている方から裂いてみてください。」
武雄が促す。
「はぁ・・・では、んっ・あっ。」
デナムが先程と同じように力を入れると少し裂ける。
「力のかける方向によっての強度が違うのです。
まぁ、それでも普通の紙単体よりかはありますけどね。
さて・・・紙の強度を強めました。
私はこの次何をしようとするでしょうか?」
「「「ん~・・・」」」
3人が悩む。
「箱を作ってみました。」
武雄が紙の箱を取り出す。
「「「・・・はぁ・・・」」」
3人が生返事をしてくる。
「なんでしょう・・・とっても乗り気ではない感じですけど・・・
まぁ私は気にしないですけどね。
さて、この箱、箱のサイズに規格を作ろうと思います。
ノートが入るサイズ、ノートが2冊入るサイズ、ノートが6冊入るサイズです。
こうすれば書類を送る際も並べて梱包出来るという物です。
どうです?
これなら木の箱と比べると紙の箱は中に入れる物も傷つかないですし、野菜等の生物を入れても良いかもしれませんよね。」
「「「・・・」」」
3人が若干顔色を悪くさせて顔を見合わせる。
「うん、異議はなさそうですね。
さてと・・・これの利点なんですけど。」
「はい!ちょっと待ってください。」
デナムが手を挙げる。
「局長、なんでしょうか。」
「えーっと・・・キタミザト殿、それは作る気なんですよね?」
「ええ、試作も出来ましたし、概ね私の想像通りの強度が出ていますからね。
まぁ他にも作りたい物もあるので・・・これはこれで完成かなと。
あ、ちなみにこれダンボールと言います。
で、これの利点は。」
「ちょ・・・ちょちょちょ、ちょっとお待ちくださいね。
キタミザト殿が紙の箱を作るというのはわかりました。
つまりは紙の増産をしなくてはいけないという事を私達に言っているのもわかります。
そして・・・今キタミザト殿が言わんとしている事は・・・今後の流通に大きく変わる可能性があるのですが・・・普及した場合、紙が足らなくなるという認識はあるのですよね?」
「・・・だから最初から言っているでしょう?
紙が足らないんですよ。
ですが・・・他の誰かが考えて販売する前に私はやります。
折角発案したんです、みすみす誰かに利益を持って行かれるわけにはいきませんからね!」
「「「ああぁぁぁ・・・」」」
「さて、このダンボールですけど。
利点は軽量である事、そして折りたたんで物置にもしまえるので、収納性も高いです。
木箱のように解体、組み立て等の時間もかかりません。
また、加工のしやすさから中に入れる物の大きさに合わせてサイズを変更させられますので、野菜等の生物を入れるのにも良いでしょう。
野菜等を輸送の際も箱や樽に入れて重なり合って送ってくるなんて勿体ない。
一段一段丁寧に箱に入れれば商品価値も上がるという物です。
・・・なんです、その顔・・・」
武雄が3人の顔を見て言う。
「あのぉ~・・・キタミザト殿、そのダンボールというのは・・・売れると思うのですが。」
ラングフォードが恐々と言ってくる。
「ええ、売れ筋商品になるでしょうね。
だって、箱を軽く出来るという事は荷馬車への搭載量が増やせるという事です。
結果、輸送量が上がる可能性がありますからね。
商隊の方々は取り扱いを多くして頂けると考えています。」
「はい、その通りです。
その・・・それが流行ったとしたら紙の生産面で逼迫される恐れがあるというのはわかっていると仰られていましたが・・・対応方法もご用意して頂いていると考えてもよろしいのでしょうか。」
ラングフォードが聞いてくる。
「・・・いきなり生産量を多くしろと言うのは難しいというのはわかりますよ。
製造の方は1日3交代制で1日中生産すれば良いでしょうけど、原材料の入手だとかで大変だろうとは思いますよ。
原材料をすぐに調達する方法が次の話題ですね。」
武雄が議論を続けるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




