第1976話 食後の報告会。(裏稼業から報告書貰いました。)
エルヴィス家の客間にて。
武雄達は夕食後のティータイムをしていた。
「エルヴィスさん、こちらを昼間頂きました。」
武雄がエルヴィス爺さんの前に封筒を置く。
「うむ。
・・・ふむ・・・意外と早かったの・・・」
エルヴィス爺さんが封筒の中を出し、報告書を軽く読んでいく。
「私も先ほど軽く見ましたが・・・兵士長に巡回をお願いするまでの事が必要あるのかが微妙です。」
「そうじゃの。
2件か・・・その倍、いや3倍程度は入ってきているのじゃろう・・・こっちとしては申請をされれば問題が無ければ許可を出すのみじゃからの。
現時点ではどうとも出来んの。」
「そこは心得ているでしょう。
が、勝手に犯罪組織を作られるのを見ているのも・・・ですね。」
「その通りなのじゃが・・・どうしたものか。
折角、南と北が大人しく不動産業と宿泊業をしておると言うのに・・・まったく余計な事をし始めようとする者が出て来るものじゃ。
兵士長には伝えておこう。
まぁ兵士長達もこういう事は勘が働くからの。
情報は持っているとは思うが・・・注意を向けてはくれるだろうの。」
「まぁ、今の所、何か犯罪をしている訳でもないようですしね。」
「そうじゃの。
じゃから目立った動きがない内は兵士長も定期報告の時まで報告をするつもりはないじゃろう。
まぁ、来て早々に問題を犯すほど、この領地が田舎ではなかったと思いたいの。」
「まぁ行政の監視が行き届いていない地域なら好き勝手されていたかもしれませんけどね。
夕霧に頼んでスライムを入れますか?
その2件は場所がわかっていますし。」
武雄が聞いてくる。
「ふむ・・・いや、まだいらんじゃろう。
早期からの監視はこちらとしては有益ではあるが、些か過剰な情報収集じゃ。
悪事はしていないに越したことはないが、この手の輩は少々はしているものじゃ。
悪事の全てを裁くというのは無理があろう。
それに基本的には他領からの流入は歓迎する事ではあるからの。
長い期間、同じような考えで皆が生活するのは楽ではあるが街としての発展はない。
多少リスクはあっても他地域の者を入れ、新しい考えに触れる機会がなければいけないとは思う。
まぁタケオが来てから街が急激に変わっているのは気がかりではあるがの。」
エルヴィス爺さんが武雄にジト目を向ける。
「私の場合は私が切っ掛けではありますが、勝手に動いている人達が多いだけです。
私の意図した事ではありませんよ。」
武雄がヤレヤレと両手を挙げて首を振りながら答える。
「まぁわしもそれを望んだのだから文句は言うまいよ。
じゃが・・・些か、他領からの裏稼業者が来るのが早かったの。
わしとしては裏稼業よりも商店の方が先だと思っておったのじゃが。」
「・・・輸送量の拡大を見込んだ宿泊業と歓楽業が先にきてしまいましたね。
南のバーナード家と北のカーティス家。
どう動くのかはわかりませんが、監視と牽制はしてくれるみたいですね。
まぁ私達は見守っている事しか出来なさそうですけど。」
「そうじゃの。
問題が起これば介入して潰せば良いだけじゃよ。
問題の内容にもよるが、基本的に他領からの者よりもバーナードとカーティスの方を残した方がわしはやりやすいからの。
まぁ領民に間違いはないしの。」
「他領の方は貴重なのでは?」
「裏稼業の・・・いや、そこは関係ないの。
問題を起こすような者は要らぬよ。
真っ当に仕事をしてくれる者は歓迎じゃがの。」
「確かに。」
「・・・タケオ、もし新参者の口から王都の裏稼業の者の名前が出るのなら・・・すまぬが。」
「わかっております。
領主であるエルヴィスさんがやるよりかは私の方がマシでしょう。」
「すまぬの。」
「いえいえ。
前に王都で似たような事していますし、協力者は多少は心当たりがありますから。
それなりに潰し・・・文句を言ってきます。」
「そう言えばそうじゃったの。
報告書にあったの・・・マイヤー殿の息子じゃったか?」
「はい、ルーク君でしたね。
そう言えばあの時の裏稼業の一家はその後、どうなったか聞いていませんでした。
今度行った際に聞いてきますかね。」
「えーっと・・・確か警備局に渡したのじゃったな?」
「はい、手先で使うも良し、潰すも良しと。
貴族との繋がる裏帳簿も見つけましたからそれなりに成果は上がったはずですよ。」
「ふむ、裏帳簿か・・・」
「エルヴィスさんはありますか?」
「残念ながらないの。
あったらもっと裕福になっておったじゃろうの。
バーナードとカーティスも文官相手ならある程度はしているかもしれぬが、わしの所にはとんと来ぬよ。
他の組合長達もわしには何もしないのぉ。
文官達の方も抜き打ち監査はしておるが、特定の業者との金銭等のやり取りは発見出来ぬ。
まぁ、それを掻い潜っているから裏帳簿になるのかもしれぬが。
少なくとも現時点では賄賂を貰っている者はいないようじゃ。」
「エルヴィス家の文官はしっかりしていますもんね。」
「今はじゃよ。
今後もそうだとは言えぬから抜き打ち監査をするわけじゃよ。」
「する方もされる方も大変そうですね。」
「やましい事をしてなければすんなりと終わるじゃろう。」
「まぁ・・・その通りです。」
「文官達が賄賂を拒絶するだけの待遇が与えられるようにはしないといけないのはわかっておるのじゃがの。
現実はなかなかに厳しい物じゃ。
タケオの所はどうじゃ?」
「うちですか?
ヴィクターとアスセナは大丈夫だと思いますけどね。
それよりも私の方にそういう話がきそうですよ。」
「タケオ、気を付けるのじゃぞ?」
「はい、気を付けます。」
武雄が頷くのだった。
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