第1975話 さて、夕食だよ。(陛下が調理しますよ。)
エルヴィス家の食堂。
「「「あああぁぁ♪」」」
「あ~♪」
「きゅ♪」
エルヴィス爺さんとアリス、ミアがクリームコロッケを食べて感嘆を漏らす。
ビエラとクゥも満足そうに食べている。
「にゃ♪」
タマはホワイトソースが染み込んだパンを食べている。
「皆さん、好評なようで。」
武雄は頷きながら食べている。
「タケオ、これは凄いの!
食べると口の中に甘さが広がる感じがするのじゃ!」
「タケオ様、これもまた美味しいですね!
はぁ・・・面白いです♪」
エルヴィス爺さんとアリスが満面の笑顔を向ける。
「あとはこれを基本として中に入れる具材の選定ですね。」
「「え?まだ?」」
武雄の言葉にエルヴィス爺さんとアリスが驚く。
「ええ、これが基本ですよ。
コロッケだってそうですけど、基本は基本。
これに具材を足す事でオリジナル商品が出来上がるのです。
一緒に混ぜる肉の量を変えたり、ジャガイモを完璧に潰さずある程度形が残る程度にしておいたり、チーズを入れたりと色々あります。
ちなみにジャガイモをほとんど潰さずに原型を留めている物を形にまとめ、素揚げする物をハッシュドポテトと言います。
これは衣がほぼ無いのでから揚げに近いでしょうかね。」
「ふむ・・・食材は同じでも揚げ方・・・調理法で変わるという事じゃの。」
「はい、逆に調理法が同じでも食材を変えれば違う料理になるという事です。
こうやって料理の種類が増えて行きます。」
「なるほどの。
タケオ達はそうやって料理に幅を生ませてきたのじゃな。
それにしても・・・ふむ・・・変わった感じのコロッケとかあるのかの?」
「そうですね・・・ゆで卵を入れたコロッケやハンバーグなんかは子供の時は楽しみでしたよ。」
「ほぉ、それは面白そうじゃの。」
「タケオ様、ゆで卵を入れて揚げると爆発しませんか?」
「?・・・するんですか?」
武雄が首を傾げてアリスに聞き返す。
「いえ、見た事ないですけど・・・なんとなくですが、ゆで卵を油で揚げると破裂しそうな気がするんです。」
「・・・コノハ、しますかね?」
武雄が考えながら楽しそうに夕食を取っているコノハに聞く。
「しないんじゃない?
でも、ほら、卵って白身と黄身があるから加熱すると黄身が爆発するイメージがあるんじゃないの?」
「あ~・・・そう・・・なんですかね?」
「わからないけどね。
アリスとしては爆発する気がするんでしょう?」
「はい、なんとなくですけど。
たぶん、コノハが言った事に近いイメージだと思います。」
アリスが言ってくる。
「卵が破裂する経験はありませんが、卵の周りに付けるコロッケのタネとかハンバーグのタネに空気が入っていると割れますよね。」
「あぁ、あるある。
だから空気を抜く事が重要なのよね~。
ならタケオ、今度爆弾ハンバーグ作ろうよ。」
「そうですね。
食べて貰った方が良いですね。
あ~・・コノハ、半熟卵は受け入れられますかね?」
「やめた方が良いわよ。
あれ、日本独特の食べ方だから。
やるなら和食の会でね。」
「了解です。
ならしっかりとしたゆで卵を使って今度卵入りハンバーグを作りましょうかね。」
武雄とコノハが話し合っている横で。
「お爺さま、何やらハンバーグで新しい物が出るようですね。」
「うむ、ゆで卵入りとな。
普通にハンバーグにゆで卵が入るのじゃろうが、どんな感じになるのか楽しみじゃの。」
「あ~?」
「きゅ。」
「そうですね。
私とクゥは卵を小さくして貰わないといけないですね。
小さな卵はあるんですかね?」
「あ~・・・」
「きゅ・・・きゅ?」
「私だって知りませんよ。
でもあると信じましょう。」
「きゅ。」
エルヴィス爺さん達が次回作を楽しみにするのだった。
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魔王国の厨房。
「陛下!ご無理は!」
料理長がアワアワしている。
「してない!
まぁ、見ておれ!アズパール王国へ行った際に習った料理を食べさせてやるからな!」
エプロン姿のヴァレーリがボールに入った液体を混ぜている。
「えーっと、この後は容器に移してフライパンを使って蒸すんだったな。」
ヴァレーリが武雄から買ったレシピを見ながら次の段取りを確認する。
「陛下!ご要望の容器をご用意しました!
軽く洗い、拭き終わっております!」
料理人がヴァレーリに声をかける。
「よし!これを・・・って何だこの容器は?」
「ご要望の小さめの取っ手がない陶器のコップです。」
ヴァレーリの目の前に豪華な意匠が施された小さめのコップが並んでいた。
「いやいやいや、違うって。
我が要望したのはもっとその辺の雑貨屋に売っているような意匠も何もない陶器の器で良かったんだが。」
「陛下が料理をされているのにそんな物を使わせるわけにはいきません!」
「いや・・・誰に見せる訳でもないだろうに。
カールラ達やここの料理人とフレッディとその指揮官補佐だけだぞ?
改まってどうこうする面子ではないのだが。」
「なりません!
陛下が御自らお作りになる料理をそのような素っ気ない器になんて入れられません!
それにご一緒に旅をされたといってもブリアーニ王国の方々はお客様です。
失礼をする訳には参りません!
よって、どちらにしても素っ気ない器なんて使ってはなりません!」
「えー?・・・まぁ・・・良いか。
ちゃんとした陶器だろうし、蒸しても変形はしないだろう。
えーっと、数は・・・足りそうだな。」
ヴァレーリが諦めながら置かれているコップの数を数える。
「はい!」
「よしよし、なら続きをやるかな。
ふふふ、これは凄いんだぞぉ。」
ヴァレーリがニヤリと笑うのだった。
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