第1972話 ヴァレーリ王城に帰還。(簡易報告を済ませます。)
魔王国王城の門の前。
「なぁ・・・カールラ、この門の向こう側がなんとなく雰囲気悪そうじゃないか?」
ヴァレーリが門を見上げながら言う。
ちなみにヴァレーリ達が接近したので城門に居た兵士が開門しようとしたのをヴァレーリが直ぐに駆け寄り止めさせていた。
「ダニエラの気のせいでしょ?」
ブリアーニも門を見上げて言う。
「そうか・・・なぁ。」
「うん?」
「なんでカールラは我から離れているんだ?」
ヴァレーリがちょっと離れた場所にいるブリアーニ達に聞く。
「気のせいよ。
たまたまよ、たまたま。」
「そうか・・・
で、なぜ大隊長達も距離を取っている?」
ヴァレーリが護衛で付き従っていた部下を見る。
「陛下の御前を塞ぎはしません。
さ、帰城しましょう。」
「・・・」
ヴァレーリが何も言わずにジト目で抗議しているが誰一人として近寄ってこない。
と、城門が開き始める。
「開けるな!閉めとけ!」
ヴァレーリが大声を上げるが無情にも城門が開いていく。
「ヴァレーリ陛下、ブリアーニ女王陛下に対し敬礼!」
城門から城の玄関に続く道の両側に兵士達が並び最敬礼をして出迎えていた。
そして玄関には。
「陛下、無事のご帰還安堵しました。」
フレッディがにこやかに出迎えていた。
だが、皆の目には擬音的には「ゴゴゴゴゴゴッ」という負のオーラが見えていたりもする。
「・・・」
ヴァレーリが眉間に皺を寄せて腕を組んで睨んでおり、一歩も踏み出さないので全員がその光景を黙って見ている。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・はぁ・・・陛下、おかえりなさいませ。」
根負けしたフレッディが諦めたように言い頭を下げる。
「大隊長、警護任務ご苦労だった。
任を解く、原隊に復帰しろ。」
「はっ!護衛任務終了いたします!」
大隊長が敬礼をする。
「それと中隊長、ウィリプ連合国からここまでの報告書は期待しているぞ。」
「はっ!早急に概要書を作成し、回覧実施します。
詳細はその後に。」
「あぁ、それで良い。
さて・・・執務室に行くか。
カールラ達はのんびりと旅の疲れを癒してくれ。」
「わかったわ。
ダニエラも頑張ってね。」
「あぁ、夕食時にまた会おう。」
ヴァレーリが歩き始めると大隊長達も歩き始める。
ブリアーニ達はヴァレーリ達が入城してから入ろうかと考え、その場で時間を潰すようだ。
・・
・
フレッディが玄関を過ぎた所からヴァレーリの横に付く。
「留守番ご苦労だったな。
カールラ達の部屋は用意してあるな?」
「はい、準備は出来ております。」
「そうか。
思わぬ収穫もあったが、こちらの要求は言ってきた。」
「はぁ・・・まさか本当に言いに行くとは・・・
キタミザト殿は頷かれなかったでしょう?」
「・・・5000名で手を打ってきたぞ。
お前らも努力しろ。」
「はぁ・・・キタミザト殿にご面倒をおかけしますね。
わかりました。
各軍から精鋭を集めます。」
「たかが慣例の戦争でそこまで必要とは思わんがな。
1000名ぐらいでも多いくらいだ」
「必要な事です!」
「あ~、それと2週間程度で小麦と干物が輸送されるぞ。」
「予定より早いですね。
わかりました。」
「あとキタミザト殿が来る。」
「え?」
「遊びに来るからな。
一応、名目としては小麦の大規模輸送の初回だから納入される所まで見守りたいそうだ。
王城に用はないから護衛は不要だと言ってはいたが・・・陰ながら付けておいてくれ。
来たら我が王城内を案内するからな。」
「はっ!
第4軍の精鋭を偽装させて向かわせます。
陛下、どこまで見せますか?」
「食堂に連れて行って不味さを味わってもらうか。
そうすれば同情からウスターソースの輸出量を増加しようと考えてくれるかもしれん。
それと兵士の日頃の訓練を視察して貰おうと思う。
我が国の精強な兵士を見て本国に正確に報告して貰おう。」
「宣伝をして貰うのですね。」
「ああ、キタミザト殿なら正確に報告してくれるだろう。
多少の誇張もしてくれるとありがたいがな。
ついでに・・・デムーロ国侵攻の作戦概要を見てもらうか。
全くの部外者で戦力の概要がわからない者が見たらどう判断するか。
・・・そうそう、向こうの酒場で聞いたのだが、どうも数か月前に向こうの街がゴブリンとオーガに襲われたようだぞ。」
「・・・そんな報告ありましたか?」
「我にはされてないと記憶しているがな。
突如、ゴブリン350体、オーガ50体が襲撃して、何やら新しい魔法具を使って倒したそうなんだがな・・・詳細はわからなかった。
まぁアリス殿も一緒になってやったというから、2人でオーガを始末したんだろうが・・・オーガを32体とゴブリンを30体はキタミザト殿が単独でしたというのは確定らしい。
店員が嬉しそうに語ってくれたよ。」
「一人間がですか?」
「あぁ・・・どう思う?」
「にわかには信じがたいです。」
「そうだな。
一気に攻めてくるオーガを単独で32体屠れる者は我が軍に何名居る?」
「・・・20名居るかどうか。
オーガと連続で戦うというだけなら1000名は。」
「どんな魔法具を使ったんだかな。
それとこの戦闘で死傷者はいなかったらしい。
キタミザト殿が指揮をしたと言っていたぞ。」
「・・・キタミザト殿は何をしたのでしょうかね?」
「さぁわからん。
詳細は機密かもしれないから聞かなかったが・・・何かをしたのだろう。
そんな者がデムーロ国侵攻の作戦概要を見て、何を考えるか・・・気になるんだよな。」
「確かに。
では、机上演習を装って見て貰う事にしましょう。」
「あぁ、段取りは任せる。」
ヴァレーリとフレッディが話しながら執務室に向かうのだった。
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