第1970話 さて、皆で労おう。(ウスターソースと中濃ソースを食べ比べ。)
いつもの酒場にて。
「はい!今日はもうお仕事終了という事で!
皆さん、王都から遠路はるばる良く来たね!これから頑張ろうね!
じゃ乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
ブルックの音頭で試験小隊の面々と研究室長のトレーシー、マイヤー、王都からの面々で歓迎会が始まった。
「ラック、お前なんで来ているんだ?」
「いやいやいや、適材適所で私が選ばれたからですよ。」
「第二情報分隊からバートとフォレットまで連れて来て・・・
第1騎士団が来ると思ってましたよ。」
マイヤーとラック、アンダーセン横並びで飲んでいる。
「ん~・・・ま、二研は知ってるか。
第1騎士団はクリフ殿下領に行っていますよ。」
「・・・所長からの報告書は見たが、隣国の挙式か。」
マイヤーが聞く。
「ええ、関を越えた所の町までは第1騎士団と一緒に移動、その後は我々だけですね。
まぁ第1騎士団からの少数がもうすぐ向こうの町に先行して待機するみたいですが。」
「ニール殿下も行くんだろう?」
「あと第一研究所の所長も。
あそこの研究室長がどうも精霊魔法師との事ですよ。
戦力として連れて行くだろうというのが我々の考えです。」
「あぁ、そうだな。」
マイヤーが頷く。
「ん?マイヤー殿は知っていましたか?
一研の研究室長の事を。」
「王立研究所の合同会議の前、挨拶の際にな。
所長とパナ殿が相手しているし、うちの所長は向こうの精霊と仲良くなっている。」
「ふむ・・・流石、キタミザト殿だな。
そういう訳で、護衛も出来、部下を数名連れて行けるそれなりの立場。
他国の兵力等をそれなりに感じられて、キタミザト殿に面識がある者。
私が選ばれました。
と、あそこに居るのがうちの妻です。」
「ええ、知っています。
私も一目見た事ぐらいはありますよ。」
「そうだったのか?」
アンダーセンの言葉にラックが首を傾げる。
「ラック財政官こと財政局 予算管理部 ラングフォード次長殿は有名だからな。
局長達の会議にも局長の後ろで控えていた事もあるな。」
マイヤーが言う。
「マイヤー殿は陛下の警護ですからその会議の時にですか。
まぁ妻の方は魔王国の商店等の品揃えを確認し、向こうの国力の概要調査に来ています。
選ばれたのは私が行くからですね、誰も知らないよりかは夫婦で行った方が良いだろうとね。
それに元第1騎士団ですしね。」
「「そうだった。」」
「戦闘は出来ないまでも回復要員としては十分な腕はありますよ。
出立の前に一生懸命思い出していましたし、出来るのは確認済みです。
戦力として見れないのは専売局長とその部下。
ここを中心に隊列を組んで移動してきました。」
「まぁそうだろうな。」
マイヤーが頷く。
「キタミザト殿の移動は馬車で?」
「そんなわけない。」
「所長が馬車に乗りたいなんて言いませんよ。
どちらかと言えばさっさと移動して向こうで出立までのんびりするでしょうね。」
ラックの問いにマイヤーとアンダーセンが即答する。
「・・・了解です。」
ラックが「あぁ、キタミザト殿なら言いそうだ」と肯定するのだった。
バートが試験小隊の面々に酒を飲まされている横で。
「ラック財政官殿、お注ぎします。」
「何を注文されますか?」
ブルックとフォレットがラングフォードを接待していた。
「あらあら?良いのよぉ?
お酒は無理して飲む物ではなく、嗜む物なんだから。
ブルックさん、どう?仕事とかこっちの住み心地とかは。」
「訓練内容は自分達で考えながらしていますし。
王都守備隊とは違って戦術という新しい分野の思考をしないといけなくて新しい事を毎日している感じです。
この街は所長や伯爵様のおかげでかなり食は進んでいます。
ウスターソースの効果もありますが、ピザや鶏肉料理なんかは基本のレシピが公表されて新しいメニューが日々増えています。
街中も活気がありますね。
所長の協力工房の方々はもちろん、その他の商店も客を呼び込む努力はしています。」
「ふむ・・・そういえば、宿に行ってからちょっと街中を見たんですが、こんなのを貰いました。」
ラングフォードがブルックとフォレットの前にチラシを置く。
「これは・・・所長が今日配っていた奴ですか?
私達が見ている時に後ろに積まれていましたよ。」
ブルックが言う。
「ええ、私も並んで貰いました。
なのですけど・・・これ有効期限が1週間なのですよね。
中濃ソースというのがどんなのか買ってみようと思ったのですけど。
これは諦めないといけないですかね。」
「ん~・・・所長に言えば何とかしてくれそうではありますけど、領民に対して配っているのであまり融通は利かないかもしれないですね。
王都に帰る際に通常料金で購入して行くしかないと思います。」
「そうですか。
なら王都への帰り際に買わせて貰いましょうかね。」
「あ、試食はここで出来ますよ。
ウスターソースなら野菜炒め、中濃ソースなら・・・あ、もうメニューが新しくなっています。
中濃ソースが味わいたかったのならトリカツを頼んでは如何でしょうか。」
ブルックが勧める。
「なら、トリカツを頼みましょうかね。」
「はい、わかりました。
店員さーん、注文~。」
フォレットが店員を呼ぶ。
「私は野菜炒めにしようかな。
フォレットは何にするの?」
「ん~・・・謎野菜の野菜炒めにします。」
フォレットが注文を決める。
「野菜炒めがこの地では流行っているのね。」
ラングフォードがブルックに聞く。
「ウスターソースの野菜炒めが美味しいですからね。
中濃ソースも野菜にかけて食べても美味しいですけど、これは所長が揚げ物用に作ったのでそちらで試されると良いと思います。
意外な美味しさです。」
「なるほどね。
なら野菜炒めも頼んだ方が良いかもしれないわね。
それにしてもキタミザト殿の話は結構聞いていますけど、食へのこだわりが凄そうね。」
「ええ、所長はいろいろとレシピを考え付くので私達も楽しみに待っています。」
ブルックが笑顔で答えるのだった。
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